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413.グッドタイミングの増援

 メイベルは増援が来ない今の内に逃げなければ……と思い、ワイバーンに向かって歩き出した。

 だが、そんな彼女の後ろで力を振り絞ってドリスが起き上がる。

 その彼女の手には愛用の武器であるハルバードが握られている事も、彼女が立ち上がった事もメイベルは気が付いていない。


「……らああっ!!」

「っ!?」


 ようやく気が付いたメイベルが振り返った時には、防御態勢に入れない位まで彼女に距離を詰められてしまっていた。


(駄目だっ、やられる!)


 そう思ったその時、メイベルの目の前でドリスが横に吹っ飛んで行った。

 それと同時に視界に飛び込んで来たのは、赤が混じっている小さめの黒い影だった。


「……え?」

「全く、往生際が悪いのよ!」

「よ、ヨハンナ?」


 メイベルがその黒い影の正体を確認すると同時、ドリスが飛んで行った方から聞き覚えのある声がもう一つ聞こえて来た。


「俺も居るぞ」


 その声の方に顔を向けたメイベルが視界に捉えたのは、ヨハンナのドロップキックでぶっ飛んだドリスを後ろ手にロープで拘束していた、彼女の師匠のヴェラルだった。

 それと同時に、倒れて悶絶していたティーナの方もヨハンナが手慣れた手つきでロープを使って縛り上げた。


「あれっ……向こうの連中は?」

「向こうはかなりの劣勢で撤退を始めている。じきにこちらにもあのアークトゥルスの生まれ変わり達がやって来るだろうから、撤退した仲間は今は諦めて急いだ方が良い」

「さぁ、依頼主の所に向かいましょ!」

「あ、ああ……でも何にせよ助かった。油断しちゃっていたから感謝するわ」


 そう、ここの奴等は倒したがまだ自分の盗賊団に課せられた任務は終わっていない。

 最後に美味しい所を持って行ったヴェラルとヨハンナに促され、メイベルはカシュラーゼに向かう為に二人と一緒に空へ飛び立って行った。

 残されたヒルトン姉妹は、未だにジンジンと痛む背中の痛みに耐えながら縛られたロープを解こうと悪戦苦闘している。しかもドリスの方はヨハンナにドロップキックを受けた影響で別の個所も痛みを訴えているので、姉のティーナよりもロープを解くのに時間が掛かりそうだった。


「まっ、待ちなさ……あたたたたっ!!」

「だ、大丈夫なのドリス!?」

「うー……ちょっと駄目みたいね……あちこち痛いし!!」


 結局、定員オーバー気味でワイバーンで飛び去って行った三人を追う事も出来ず、ヒルトン姉妹はレウス達が来るまでそのまま芋虫の様に地を張ってもがくしか無かったのだった。


「……で?」

「逃がしちゃったのか?」

「そうなのよ……本当に腹が立つ女だったわ。自分が強いって言うから戦ってみたら、本当に強かったのよあの女!!」

「言っている事は当たっているんじゃないか」


 レウスに冷静に突っ込まれつつ、ようやくロープを解かれて自由の身になれたヒルトン姉妹は彼に回復魔術を掛けて貰って身体の軽さを取り戻した。

 しかし、アークトゥルスの墓の下に保管されていた手紙以外の……エヴィル・ワンの身体の欠片が全てあの赤毛の二人に奪われてしまったので、早急にあの二人を追い掛けて取り戻さなければならない。


「結局、あのメイベルって言うのは何者だったんだ?」

「傭兵団か盗賊団の女リーダーって身分だろうな。私や貴様が戦っていた人間や獣人達はそれなりの身なりをしていたから大体イメージ出来る。だけど問題はそこじゃなくて、あの赤毛の二人と一緒に何処に向かって飛んで行ったかだろう?」

「そうだな。何処に向かって飛んで行ったか分かるか?」


 その一行が向かった場所が分かれば、行き先を絞って探す事も出来る。なのでヒルトン姉妹以外の一行はその答えが聞ける事を願いつつ、サィードがそう質問してみる。

 だが、姉妹の答えは首を横に振るものだった。


「いいえ……それが聞き取れたのは、依頼主の所に向かうと言うセリフだけだったんです」

「え、それだけ?」

「そうよ。後は結局分からずじまいなのよ」

「ふうむ、となるとお主達が対峙したあの茶髪の女の正体も、奴等の行き先も分からないと言う事か」


 姉妹の返答に対して、顎に手を当てて考え込むソランジュ。

 そんな様子の彼女の横で、エルザが冷静な口調で答えを一足先に導き出していた。


「……でも、ある程度の予想は出来るぞ。あの赤毛の二人が居るからな」

「えっ、そうなの?」

「ああ。赤毛の二人が居るって事はカシュラーゼ絡みの話に間違い無いだろう。その依頼主って言うのも多分あの黒髪の魔術師だろうから、私も急いでカシュラーゼに向かって盗られた物を取り戻しに向かえば良いだろうからな」

「そうか、ヴェラルとヨハンナが居るんだったら確かにカシュラーゼが絡むわね!!」

「良し、行き先はこれで決まったな。だったら転送陣でユディソスに向かって、そしてジェラルドに報告してから出発だ!!」


 アレットも納得した表情を見せ、だったらさっさと一度ユディソスに戻ってこの顛末を全て皇帝のジェラルドに報告して、それからカシュラーゼに向かうべきだとのレウスのセリフで話が纏まり掛けた。

 しかしそんな一行の元にその時突然、何処からか謎の声が聞こえて来た!!

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