表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

411/875

408.やってるね

『あの男が食べる料理に毒を盛ろうとしても、用心深い所があるらしく料理を部屋まで運ばせて自分が全て受け取るので隙がありませんでした』

「あー、やってるね」

『睡眠薬入りの水を飲ませようとしても自分で水を用意して肌身離さず持っているそれを飲むので、どうやって殺せば良いか分かりませんでした』

「そうだな、これはやる気満々だな」

『だったらもういっその事、さっきも書いた通りに逃げてしまおうと思ったのです。でもそれも駄目。連れ戻される。ですが私はそれを十回程繰り返した時、ある事に気が付いたのです』


 一体何に気が付いたのかを読み進めてみると、そこからガラハッドが奇妙な行動をしているのに気が付いたらしい。


『あの男は寝る前に、何処か別の場所に行っていたらしいのです。それは寝室の奥にある隠し通路でした。私はあの男が留守中にそこを調べてみる事にしたのですが、その隠し通路の奥には何と……この箱の中に一緒に入れてある物体があったのです』

「物体ってこれの事か?」

「どうもそうらしいな。それでこれについても何か書いてあるんじゃないのか?」

「ああ、えーと何が入っていたんだ……え?」


 手紙の続きを読もうとしたアークトゥルスの表情が固まる。

 それはこの物体の中身に関する、衝撃の事実だった。


『その隠し通路の奥には、何故かあのエヴィル・ワンの身体の一部が入っていたんです。尻尾と前足の一部が……。更に牙と爪も別の小さい袋に包んで置いてあったんです。彼が何故こんなものを手に入れていたのかは分かりませんが、私がそれに気を取られていて、後ろから迫っていた彼の存在に気が付かなかったのです』

「じゃあ……この後に殺されたって事か?」

「いや、違う」


 セバクターは冷静に推理する。


「この手紙をこうやって書いているって事は、この時点ではまだ死んでいなかったって事だろう」

「うん……ああ、うん、確かにそうなるな」


 そのセバクターの推理が正しかい事を証明するエレインの文章が、確かにその後に綴られている。


『あの男が後ろから細いひもで首を絞めてきたんです。私は首を絞め上げられて息が出来なくなり、バタバタと悶え苦しみました。彼はこの場所を私に見られたくなかったのでしょうが、なら最初からこんな場所に隠すなって事ですよね』

「突っ込み入れている場合か、こいつは」


 こいつはこの状況で笑いを生み出したいのか、それとも苦しんでいたのかさっぱり分からない。

 何でこんなほんのり笑いを入れて来るんだ? それも笑えない笑いを……と妙な頭痛を覚えながらアークトゥルスは手紙の続きを読み進める。


『それで咄嗟に私は死んだ振りをしました。彼は私が死んだと思ったのか、証拠を残さない様にするべく色々と作業を進めました。私の棺桶を手配し、私が首を吊って自殺を図った様に見せ掛ける為に。でも、その作業を進めている彼がポロっと漏らした一言で、何故その物体がそこにあったのかが分かったのです。彼は……どうやらエヴィル・ワンの復活を企んでいた様なのです』

「えっ……ガラハッドが!?」

「おいおいちょっと待てよ。そうしたら辻褄が合わねーんじゃねーのか?」


 サィードの言う事ももっともである。

 ならば最初からエヴィル・ワンを討伐しなければ、その野望は達成出来るんじゃないかと考える一行だが、エレインはその後の話もしっかり記していた。


『あの男は私達と一緒にエヴィル・ワンを討伐した後、その討伐した身体の欠片を各々で持ち帰ったのを思い出したらしく、身体の欠片を使って復活させる技術がもし出来たらその時に復活させて手なずけて軍事兵器として利用しようと企んでいたらしいのです。私が死んだ振りをしているとも知らず、焦りからかペラペラと喋っていました』

「頭が良いのか馬鹿なのかどっちだよ、このガラハッドは?」

「あいつは……自分の欲望には頭が回る奴だったから分からないでも無いな」


 欲望のパワーは凄いものだと変な感心をする一行だが、もうそろそろでこの手紙が終わるので一気に読み進めてしまおうと決意した。


『そしてあの男がドアノブに私の首をくくり付けて自殺した様に見せ掛け、棺桶の手配をするべく部屋の外に出て行った瞬間、私は急いで逃げようと決意しました。素早くあの袋を回収し、カーテンとシーツで紐を作って外に脱出し、ワイバーンの飼育庫から一匹拝借して大空へと飛び立ったのです。高所恐怖症な私でしたが、この時ばかりは無我夢中でした。今までずっと城の敷地内で捕まっていましたので、自分を褒めてあげたいです』

「……努力は認めるが、この女……何かムカつくのは何故だ?」

「色々と自慢を挟んで来たりしているからじゃないのか?」


 エルザとソランジュがそう言う一方で、ワイバーンで脱出をしたエレインはとりあえずエスヴァリークから脱出するべく南のアークトゥルスの墓までやって来た。

 そして、この地下にあったアークトゥルスの棺の中にこの袋を隠したらしいのだが、その時には既にアークトゥルスの遺体は無かったのだと言う。

 それもその筈で、その手紙の最後にはこう書いてあったのだ。


『ガラハッドはアークトゥルスを生死不明で美談にするべく、彼の遺体をエヴィル・ワンの討伐現場で一度埋め、そして頃合いを見計らって掘り出して焼却して骨だけにした後、この墓の中に埋めたのです。事実、墓の下の棺の中には彼の骨が乱雑に入れられていて……私はとても悲しかったのです』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ