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407.墓の下で見つけたもの

 階段の先で発見した、アークトゥルスの墓の下の隠し通路はちょっと先も見えない程に薄暗く、レウスが手の中に光のエネルギーボールを生み出して明かり代わりにしなければ進めない状態だった。

 それでも、この墓の事を聞いてからかなり長い時間を掛けてここまで来た様な気がする一行。思えばハンドガン絡みの事件に巻き込まれ、武術大会に参加して今のこのパーティーメンバー同士で戦い、それからドラゴンを討伐しに行ってセバクターが必殺技を身に着けた。

 こんなに濃い内容の旅路は初めてである。


「しかしまぁ……あのユフリーって言うのが揚げ物の詰め合わせの中に仕込んだ薬のせいで魔術が使えなくなってしまったのが、本当に昔に思えるわ」

「ああ。時間は全然経っていない筈なのに、本当に色々な事があったからな」


 しかし、サイカとソランジュがそんな会話を交わしているだけのわずかな時間でもう奥まで辿り着いてしまったらしく、地下通路はそこで行き止まりになってしまっていた。

 その行き止まりの壁の前には朽ち果ててボロボロになっている石造りの細長い箱が、何とか形を保った状態で置かれていたのだ。


「あれ? もう終わりか?」

「どうもそうらしいな。そこに何か大きな箱があるから多分これが……俺の遺体なんじゃないのかな……?」

「石棺か……」

「うえっ、何だかこの棺の中……臭くねえかぁ?」

「それはそうだろうな。何しろ五百年以上経過しているんだから内部は腐食が進んでいて当然だろうからな」

「良く冷静に言えるわね」


 サィードが思わず鼻をつまんでしまうのを横目で見たセバクターが、この石棺の中から漂って来る臭いの原因を分析する。

 それを、サィードと同じく鼻をつまんでしかめっ面をしながら臭いに耐えるドリスが突っ込んでみるものの、セバクターの反応は無言だった。

 そもそも、あのガラハッドが自分の手記に残していた事が全て本当かどうかも疑わしい以上、この石棺を開けてみて何が入っているのかを確認するべきだろう。

 普通に考えれば、この中に入っているのは五百年以上前に死んでしまった自分の遺体の残骸だけだと考えているレウスだが、いざ蓋を開けてみるとその中身は想像以上の物だった。


「……ん?」

「布で密閉されている大きな物体が三つに……小さい物体が一つ。それから手紙が挟まっているわ。ボロボロだけど……」


 流石にこれだけの年代物の物品となると、少し乱雑に扱っただけでも紙がバラバラになって破けてしまうかも知れないので、ゆっくり慎重に取り出して広げてみる。

 だが、中に書いてある文字はそれなりに読める状態だった。


「何て書いてあるの?」

「ええと……えっ……あ、これって……俺に向けての手紙だ!!」

「ええっ!?」


 アレットだけでなく、他のメンバー全員が驚くのも無理は無い。そしてレウス……いや、この墓の主でもあるアークトゥルス自身も驚きを隠せない。

 何しろ、その手紙の主はガラハッドがアークトゥルスと一緒にここに埋めたと言われている、あのエレインだったからである。


「ガラハッドがエレインを殺して、そしてここにアークトゥルスと一緒に埋めたって言っている……らしいが、じゃあここにエレインからの手紙があるのはおかしくないか?」

「確かにお前の言う事はもっともだが、とりあえずまずはこの手紙の内容を読んでみれば何か分かるだろう」


 セバクターの疑問も確かにそうなのだが、エレインが何をどうやってこの手紙を書き記したのかを知る事が出来るかも知れないその内容に目を通し始めてみるアークトゥルス。

 だが、その中身は本当に驚くべきものだった。


『アークトゥルス、それからガラハッド以外の他のメンバーにこの手紙を残します。私がここに居たと言う証拠として』

「ここに居た証拠……って事は、ここから何処かに出て行ったってのか?」

「そうなるな。もっと続きを読んでみよう」


 首を傾げるソランジュにアークトゥルスが頷き、更に先を読み進める。


『トリストラムがイーディクトと言う国を建国したと聞いた時、新たな時代の幕開けだと感じました。しかし、私はその頃には既にもう、ガラハッドに手籠めにされていました。アークトゥルスの事は不快に思う時もあったけど、それでも頼れるリーダーでもありました。それをあの男は……ガラハッドは憎んで、それで無理やり私との結婚をすることにしたんです。最初は何度も逃げ出そうと思ったんですが、それをあの男は暴力で押さえつけて何度も連れ戻されました』

「まあ、最低な方ですこと……」

「色々とあいつは粗暴だったしな」


 ティーナが驚く前に、アークトゥルスはかつてガラハッドの子孫であるジェラルドとともに彼の悪行を振り返った時の事を思い返してムカムカしていた。


『それで私も腹に据えかねて、逆に私があの男を殺してやろうと思い立ちました。寝込みを襲って殺してしまえばこの苦しみから解放される。そう思っていたのですが……そんな時に限って暗い部屋の中でテーブルにつまずいて失敗して、返り討ちに遭ってしまいました。しかし、私は転んでもただでは起きません』

「何この状況で上手い事を言ってんだよ。ってかこの女……実はこの手紙を書くの楽しんでたんじゃねえのか?」

「俺もそう思う」


 サィードと同じく、アークトゥルスは色々とエレインへの不信感が強まって来た。

 だが、手紙の内容はまだまだ続くらしい。

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