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405.自分の墓参り

 テレパシー云々の話を終えた一行がまばゆい光に包まれて移動した先は、一行がこの国にやって来て最初に訪れたトルバスの町だった。

 思い返してみれば、この町でペーテルと出会ったんだっけ……と何だか懐かしい気持ちになった。


「ここは……トルバスの町か」

「そうだな。ペーテルが言うにはトルバスの町の更に南にアークトゥルスの墓があるって話だ。南西の方に「アークトゥルスの森」と名付けられている森があって、その中にアークトゥルスの墓があるらしい」

「セバクターは行った事無かったんだっけ?」

「俺は無い。特に興味も無かったしな」

「そこまでキッパリ言われると、その墓の主としては凄い複雑な気分になるのはどうしてだろうな」

「知らん。良いからさっさと向かうぞ」


 相変わらず話しづらい男だ……と実感するレウスを筆頭とする他のメンバー達を引き連れ、セバクターはトルパスの町の住民にアークトゥルスの墓の場所を聞いてみる。

 すると、ここから大体三十分程南西に向かって歩いた場所にその森があると言う情報を手に入れた。


「俺達が最初に転送された森が東の方だったから、この南東の端に当たる町から南西に進めば別の森……そのアークトゥルスの森がある。俺も入った事は無いから用心しよう」

「ああ。その人影って言うのも気になるしな」


 かつてセバクターの屋敷で見せて貰った国内の地図によれば、もっともっと南西に向かって陸地は続いている。

 しかし、その一部は三つの小さな属国があるので領土内の全てがエスヴァリークの管轄では無い。大小二十の国家を纏めている巨大国家だからこそ、色々とややこしいのだとセバクターは語った。

 そのややこしい事情を含めてエスヴァリークと言う国が成り立っているのだと理解しつつ、一行はそこからおよそ三十分歩き続けて目的の森へと辿り着いた。


「ここか……」

「ん……あ、確かに俺の魔力の感触がする」

「え? 分かるの?」


 不可解な事を言い出したレウスに向かってアレットが不思議そうに聞けば、彼は神妙な顔つきで頷いた。


「直感みたいなものだけどな。この先にもう一人の俺が居る様な……そんな感じがするんだ」

「何それ。まぁ……とりあえず先に進んでみれば分かるんじゃないの?」

「そうだな」


 レウス自身にもその感覚は良く分からないらしいので、とにかく先に進んでみれば自分が感じたその感触の正体が分かるだろうと言う希望を持ちながら、森の中に作られた道を進む。

 ここが観光スポットになっていると言う情報は本当らしく、地面には不特定多数の足跡が沢山つけられているので、人の出入りがそれなりに激しいと言うのが分かった。ただし、ジェラルド曰くここ最近はその不審な人影の話もあるので観光客が激減し、滅多に人の出入りも無いらしい。

 だからこそ、ここは慎重に進むべきだと判断したレウスは探査魔術で森の中の様子を探ってみる。ただでさえ不審な人影が墓の周辺で目撃されていると言うので、念には念を入れての判断だ。


「どう? 何か不審な気配は感じ取れるかしら?」

「今の所は特に問題無さそうだ。ただ、野生の魔物は結構多いな。やっぱり森の中だから生息地としてはうってつけなんだろう」

「なるほどなぁ。だったら武器の準備だけはしておかなきゃなあ」


 サイカの質問にそう答えたレウスを見て、サィードが愛用のハルバードを構える。

 その彼の行動を皮切りに、他のメンバーも自分の武器を次々と構え始めた。敵は、その不審な人影だけでは無いのだから。

 アークトゥルスだった時代にも色々な墓参りをした事はあるものの、転生する前も含めてこんなに緊張感のある墓参りは本当に初めてだと思うレウスが森の奥へと向かって進む一方で、森の出入り口から離れた場所に一匹のワイバーンが着陸していた。


「はぁ……何とか追いついたかしらね」


 ユディソスから全速力でワイバーンを飛ばし、ようやく目的地のアークトゥルスの墓へとやって来たメイベル。

 ここまでやって来る前に自分の部下達に連絡を入れ、すぐにこの場所に来られそうな仲間を最優先に集める手配を整えてはいるのだが、一番最初に辿り着いたのはどうやら自分だけらしい。

 上空のワイバーンの背中の上から望遠鏡でこのアークトゥルスの森の様子を伺いつつ、何処にワイバーンを着陸させようか迷っていた時に、森の中に入って行く複数の人影を発見したのだ。


(あれは間違い無く、私があのドラゴンの討伐場所で出会った一行ね。でもまさかこんなにグッドタイミングで出会えるなんて、私にも運が回って来た様ね)


 メイベルは無意識に舌なめずりしていた。

 依頼として受けたからにはきちんとやり遂げるのが自分のモットーだが、アークトゥルスの墓に関しては自分達の部下に探らせても何も出ずに悔しい思いをさせられている。

 だからこそ、あのレウスと言う男が率いる一行がこの先の墓でどんな事をして何を見つけるのかが非常に楽しみで、やや浮かれ気味になってしまいながらも愛用のロングバトルアックスを構えて森の中へ進んで行く。

 そんな彼女の後ろ姿を、彼女が乗って来たワイバーンが不思議そうに見つめていた。

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