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401.南の人影

 逮捕された翌日の昼頃に牢屋から出され、ジェラルドの執務室に連れて来られたレウスとセバクターの二人は改めてそのジェラルドからアークトゥルスの墓について話を聞かされる。


「それでだ……既に応接室で待って貰っている他の奴等には話をしているし、お前達もフォンとニーヴァスから断片的な話を聞いていると思うんだが、アークトゥルスの墓の周りに現われると言う人影の調査をして欲しいんだ」

「それは良いんだけど、まずはその脱獄した連中を探すのが先なんじゃないのか?」

「俺もレウスの言う通りだと思います、陛下」

(こいつ……いけ好かない奴だよ)


 さっきは牢屋の中で段々質問にも答えなくなったのに、こう言う時はしっかりと受け答えするセバクターの態度が何だか気に食わないレウス。

 しかしジェラルドの皇帝と言う立場を考えれば、彼に対してしっかりと受け答えしなければならないのはそれもそうだろうなと考えつつ、再び皇帝からの話に耳を傾ける。

 その若き皇帝は、レウスとセバクターの指摘に対して苦笑いを浮かべた。


「俺もそれは分かってるよ。カシュラーゼが絡んでいるんだったらそっち方面にアプローチを掛ける様に動きたい」

「いや、今動こうよ」

「動ける訳無えだろ、こんな状況でよ。ただでさえこのフィランダー城の中を爆破されて甚大な被害が出てるんだぜ。それからセバクター……お前も見たと思うけど、ユディソスにこんな被害を受けていて俺も各方面への対応で手一杯なんだ。税金を使った復興作業とか、各方面への援助要請とかさ」

「それは分かります。けど……なら今の状況で何をおいてもやるべき事は、このユディソスとフィランダー城の復興作業ではないのでしょうか? 何で今、墓を調べる必要があるのですか?」

「それは……サィードから気になる話を聞いたからだ」

「サィード?」


 何でそこでサィードの名前が出て来るのか、レウスにもセバクターにも理解が出来ない。

 困惑するその二人に対してジェラルドがかなり言いだし難そうな顔をするのを見て、ニーヴァスが代わりに説明を始める。


「私が陛下の代わりに説明しよう。サィードが話した情報によれば、その昔この陛下の先祖であるガラハッド様がエレイン様を殺して、南のアークトゥルスの墓に埋めたって話を前に聞いた事があるらしい」

「え……それって前に何か似た様な話を聞いた事があるんだけど、俺……」


 それはドラゴン討伐に向かう前、彼がパーティーメンバー達に話していた「部下」と言う気になる単語を含む会話だったのを思い出すレウス。


『あー、その話なら俺が聞いた事あるぜ』

『サィードが?』

『ああ。南にドラゴンが寄り付かないのは、どうやら南にあるアークトゥルスの墓から漏れ出している強大な魔力が、そのドラゴンを遠ざけているらしいからって話だ』

『魔力が遠ざける?』

『そうそう。その魔力がかなり強いからドラゴンも怖がっちまって、それでこのユディソスから南側には近づかねーんじゃねーかって俺の部下が話してたからよ』

『……部下?』

『や……ほら、俺は傭兵だからよ。傭兵としてパーティーを組むに当たって上司と部下みたいな関係って出来ちまうんだよ』

『その様な話、私もドリスも聞いた事も無いですけど』

『まだお前等は若いから知らない事も沢山あるかも知れねえが、傭兵の世界って色々面倒なんだぜ?』

『それは知ってるわよ。そんなに面倒臭い傭兵の上下関係なんてあるんだ?』

『あー、勿論あるさ。ほら……ランクの関係があるだろ? Aランクの奴にBランクの奴が逆らっちゃいけねえとかさ』

『そんなの聞いた事無いけど』

『だーっ、しつけえよ!! とにかく俺はそう言う上下関係を聞いた事あるし、実際にそう言うパーティーでやってた事もあんだよ!! 良いからさっさと出発しようぜ。ここでウダウダ言ってたら日が暮れちまう!!』


 北の地ベリシャンへ向かう前……正確にはフィランダー城の前に集合した時にその話を聞いたレウスの回想を聞き、ジェラルドは首を傾げる。


「そうか、サィードがな……」

「あんなにムキになるなんて何だか変だなって思ったんだけど、その時はドラゴン討伐の事で頭が一杯だったから気にする余裕が無かったんだ。だけど今こうして改めて考えてみると、ただの一端の傭兵であるあいつが何で、今さっきジェラルドが話していたそんな事を知っているのか……かなり不思議じゃないか?」

「そうだな……不思議と言うよりも、不自然だな」


 ドラゴンがアークトゥルスの魔力に怯えて近づかない、と言うのは傭兵連中が知っていても不思議では無い。

 だが彼がその時うろたえた様子を見せた事や、ジェラルドが話していた「先祖のガラハッドがエレインを殺して、南のアークトゥルスの墓に埋めたって話」はかつてのパーティーメンバーだったレウスでさえも初めて聞いた。


「それってジェラルドは誰から聞いたんだ?」

「俺は……誰からって訳じゃねえ。今回の爆発は城の地下の書物庫までやられたんだが、そこの後始末をしている時に隠し書庫みたいなのが壁が崩れて出て来て、その中で新しく見つけた歴史書の中に書いてあったんだよ。死ぬ間際にガラハッドが残した告白本ってタイトルで出て来たんだが、国民に発表するには余りにもショッキング過ぎてどうするか迷ってんだよ。でも、その内容を何であいつが知っているのか俺だって知りてえ」


 だから、アークトゥルスの墓にパーティーメンバー全員で行けばサィードが何か不自然な動きを見せるかも知れない。

 そう考えてレウスとセバクターの二人にも今回一緒に行って貰いたいのだ、とジェラルドは言った。

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