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397.獣人の情報

「そう言えば、坊っちゃんは今どちらに?」

「ああ、セバクターだったら別の場所で聞き込みをしているよ。それよりもあんた、その場所に居たんだったらそいつ等の顔を見ていないか?」

「顔ですか? それなら確かに見ましたが」

「ならそいつ等の顔とか、それから格好とかを覚えている範囲で、出来るだけ詳しくどんなだったか教えてくれないか?」


 サィードがペーテルにそう聞いてみると、彼はその時の事を懸命に思い出しながら話し始めた。


「は、はい……まず白いライオンの方ですが、灰色っぽい上着に白っぽいズボン、それから黒いロングブーツと言う非常にシンプルな格好でしたね。それから手には槍を持っていました。それも両手に一本ずつの槍の二刀流。ええと……ああそうそう、顔に大きな傷がありましたよ」

「傷?」

「はい。こう……貴方達の方から見て顔の右の方に。目を横断する縦の切り傷でしたね。なかなか大きかったのでかなり特徴的でしたよ。また、体格は相当の筋肉質で背も高かったです。獣人の中でも大柄な部類に入るかと思います」

「なるほどなあ、獣人の中でも元々の動物によって体格の違いってあるからなあ」


 サィードが納得する通り、例えばライオンやトラ等の肉食猛獣系の動物から進化した獣人であれば筋肉質で大柄なのが一般的であり、リーフォセリアの王国騎士団長を務めているギルベルトも例外では無い。

 逆に狼や猫等の元々が小さい動物であれば、獣人として進化すると細身で華奢な者が多くなる。それはこの次にペーテルから説明された、その白いライオンの相棒的存在らしき黒い狼の話からも分かった。


「それでもう一人の方ですが、黒い狼の獣人でした。この型は全身が黒っぽい服を着込んでいたのですが、まるでこれからパーティーにでも向かうかの様なかっちりとした服装でしたよ」

「えっ……それって襲撃をするにしては不自然だな。お主が見た狼の獣人がそんな服装だったって事は、何かしらの意図があってそんな恰好をしていたのか?」

「私に聞かれてもその獣人ではありませんのでハッキリとは答えられないのですが……逃げて行く時にかなり身軽な動きをしていましたからね。だから普段から着こなしているからこその動きと考えれば、一応納得は出来ますがね……」


 ペーテルの話だと、そのかっちりとした服装の狼獣人は白いライオンとは対照的に小柄の部類に入る。

 足は割と長いのだが、それでも白いライオンと比べると明らかに小柄な上に自分よりも背が低かったので、人間同士の力比べであれば負けないだろうと考えていた。

 しかし相手は獣人。小柄に見えても人間よりも瞬発力と運動能力に優れている上に、力も人間より強いのが当たり前。

 その二人であれば地下牢獄から脱出する時にも、エスヴァリーク帝国騎士団の追撃をかわしつつフィランダー城の中を爆破しながら逃げおおせる事は出来なくは無いだろう、と言うのがペーテルの見解であった。


「とりあえず、その逃げた獣人達の身なりや特徴はこれで分かりました。なので早速この事を帝国騎士団の人達やジェラルド陛下に伝えます」

「そうですね、それがよろしいかと思います。後はセバクター坊っちゃんの事をよろしくお願いしますよ」


 丁寧な物腰でそう言うペーテルだが、そのお願いに関してはサィードは余り乗り気では無かった。


「まあ……今はあいつも俺達パーティーメンバーの一員だけどよぉ、成り行きでそうなっちまっただけだから気が進まねえよ」

「何言ってんのよ。貴方だってイーディクト帝国から成り行きでパーティーメンバーになったくせに」

「そうそう、サイカの言う通り人の事を言える立場では無いと思うがな。それにドラゴンを倒してベッドの上でセバクターが意識不明になった後、お主は彼が目覚めた時にしっかり喜んでいたじゃないか」

「うるっせえなあ! 大体、あいつはカシュラーゼと付き合いがあった人間だしこの町の地理にも詳しいから、その獣人達と手を組んでいてもおかしくは……」

「いや、それは時間的に不可能だろう。私達と一緒にドラゴンを倒しに行っていたあの男が、どうやって獣人達と連絡を取るんだ?」

「う……」


 カシュラーゼと付き合いがあった人間だからこそ、疑いたくなる気持ちは分からないでも無いのはソランジュもサイカも分かっている。

 だが、今はそれよりも獣人達を捜すのが先なのだと話題を戻すサイカ。


「とにかく陛下の所に行きましょう。話はまたそれからすれば良いじゃない」

「いや……もう良いや。俺どうかしてたから。それじゃ執事さん、世話になったな」


 そう言いながら話を切り上げてフィランダー城に向かおうとした三人だったが、ペーテルからその背中に声が掛かった。


「お待ち下さい」

「え?」

「セバクター坊っちゃんはカシュラーゼと繋がりがあったとおっしゃっていましたが、もしかしてレアナ女王陛下とも繋がりがありましたか?」

「レアナ……ああ、あの金髪の。いや、私達は詳しくは聞いていないが……あったんじゃないのか? と言うよりも、お主にそれが何か関係があるのか?」

「いいえ、気になさらないで下さい」

「そう……まあ良いや。行こう」


 変な事を聞くんだな……と思いつつ屋敷を出て行く三人の背中を、エンヴィルークの目つきに戻ったペーテルがじっと見つめていた。

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