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396.崩壊したユディソス

 しかし、情報収集と言っても闇雲に探し回った所でいたずらに時間を消費するだけである。

 特にここは、大小二十の国家を束ねている超大国エスヴァリークの帝都ユディソス。人の出入りが激しい上に今回の爆破事件の影響で混乱が続いているのもあり、民間人や騎士団員を問わずに人々がピリピリしているのが嫌でも伝わって来る。

 それを考えると、ある程度の情報収集先を絞り込まなければならないだろう。こうしている間にもその二人組はどんどん遠くへ逃げてしまうだろうから。

 そうなるとまず何処から情報収集をするべきか……と悩む一行の中で、一番最初に提案をしたのがドリスだった。


「そう言えばさっき騎士団員のフォンさんが言っていたじゃない。ほら……お前達と一緒に居た屋敷の使用人のペーテルに見つかって逃げおおせてしまったって。だからもしかしたらペーテルさんが何か知っているかもしれないわよ」

「そうか、ペーテルさんがその二人と接触していたなら何か分かるかも知れないな……だったらさっそく屋敷に向かおう」


 エルザもそれに同調し、急いでペーテルの元に向かおうとする一行。

 だがセバクターだけは行き先が違うらしい。


「ちょっと待ってくれ。俺にも心当たりがあるんだ」

「えっ?」

「心当たりって……今回のこの事件に関して何か知っていそうな人物が居るって事?」

「ああ。それも大勢だ」


 その言い分を聞き、ドリスとサィード以外のメンバーにはピンと来るものがあった。


「もしかして……レウスとギルベルト騎士団長があのイーディクトの新しい方のウェイスの町で戦ったって言う、大勢の貴方の部下達の事?」

「そうだ。そいつ等ならこのユディソス中に散らばっている筈だからな。色々と何かを目撃しているだろう」


 それを願ってさっさと情報収集を進めようと言う事で、グループを二手に分けて行動を開始する。

 まずペーテルの方に向かったのはサィード、ソランジュ、サイカの三人で、当の本人はセバクターの屋敷に辿り着いた時には屋敷の中の整理をしていた。


「おや、皆さんお揃いで……ドラゴンの討伐は終了したのですか?」

「ああ、何とかやってやったぜ。セバクターの奴が最後に決めてくれたよ」

「そうですか、セバクター坊っちゃんが……それは嬉しい事です。ですが坊っちゃんと他の方々はご一緒では無いのですか?」

「あー、その話なんだがな……」


 三人はドラゴン討伐の後にセバクターを治療したレウスとアレットがアイクトースの町に残った事を始め、今までの経緯をかいつまんで話した。


「そうですか、ジェラルド陛下の命で私に聞き込みをしに来たと言う事ですね」

「そうなんです。何か知っている事はありませんか?」

「お主はその地下牢獄襲撃事件の時に現場に居たんだろう? 何でも良いから知っている事を教えて貰えないだろうか?」

「知っている事…ですか。でしたらその前からのお話でもよろしいでしょうか。少々長くなりますが……」

「ああ、お願いするぜ」


 今はどんな小さな手掛かりでも良い。

 それを手に入れられる事を期待して、この屋敷にやって来た三人はペーテルからの話を聞き始めた。


「私は前回のこの屋敷への襲撃事件の後、ジェラルド陛下に進言して警戒態勢を取って頂いたんです」

「警戒態勢?」

「はい。ソルイールの二人が襲撃して来たとなれば、絶対にその裏で誰かが糸を引いているだろうとジェラルド陛下が考えたので。ソルイールもこの国の皇帝や国民と同じく好戦的な連中が多いですが、こちらのエスヴァリークの方が国力としては上ですから迂闊に攻撃はして来ないでしょう。それもたった二人で」

「確かにそれを考えると、お主の言う通り妙だな」

「やはりそう思われますか。それで前回の襲撃事件の取り調べの中で、ハンドガンと言うカシュラーゼの新開発兵器が使われていた事と、そのカシュラーゼの情報をセバクター坊っちゃんが持っていた事で、カシュラーゼとしては坊っちゃんの口をふさいでハンドガンを取り戻し、ソルイールの二人も取り戻さなければ都合が悪い筈です。ですからカシュラーゼの連中はなりふり構わずにやって来ると踏みました。そして、それは正しかった……」


 このエスヴァリークの隣国であり、サィードの故郷でもあったヴァーンイレス王国を他の国と一緒に手を組んで、一気に叩き潰しに来るレベルでえげつないやり方をする国。

 今回だって被害はユディソスだけに留まったものの、まずは警備の目を逸らす為にその城下町の至る場所で爆発を起こし、その騒ぎに乗じて中に入る。

 ペーテルはカシュラーゼが何かしらの策を使ってソルイールの二人を取り戻しに来るだろうと考えていたのだが、まさかここまで派手にやられるとまでは思っていなかったらしい。


「それで、城下町で爆発が起こっているのを知った私はすぐに地下牢獄へと向かいました。あの二人を取り戻す為にカシュラーゼの連中がやって来たのだと考えて、その二人が囚われている場所をフォンさんやニーヴァスさんに聞いて該当の牢屋に向かったら、案の定……」

「でも、結局は取り逃がしてしまった……?」

「さようでございます。そしてその後、私はユディソスが崩壊したのだと話を聞きました。申し訳ございません、坊っちゃんが不在の時にこんな……」

「仕方が無いわ。全てはカシュラーゼがこんな事をするから悪いのよ!」


 サイカに慰められたペーテルだったが、ふとその時この人間達に聞きたい事があったのを思い出した。

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