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387.願っても無いチャンス

 あのマウデル騎士学院で起こった爆発や、最初に戦ったドラゴンをレウスが魔術で撃破した時とは比べ物にならない程の衝撃が、首から胴体に向かって起こった。

 爆発が収まると煙も晴れて、やっと煙の中の状況が明らかになる。


「……す、すっごい爆発ねえ……」

「あっ、あれを見ろ!!」


 爆発に呆然とするサイカの横で、ソランジュが首の方に向かって指を差す。

 いや、正確には首が「あった」方に向かって差されたその指の先では、ものの見事にドラゴンの首から先が無くなってしまっていたのだ。

 そう、あのファイナルカイザースラッシャーの直撃を受けたドラゴンはそのまま声も上げずに……絶命した。

 つまり、全員の連係プレイでドラゴンを一刀両断して倒した事になる。


「や……やったわね……」

「いや、まだ終わってないですわ!!」

「あっ……そうかセバクター!!」


 ホッと胸を撫で下ろして一息つくドリスの横から、姉のティーナが重要な事を思い出して声を上げる。

 その声で、更に隣に居るアレットがセバクターの存在を思い出したのだ。

 あれだけの爆発が引き起こされたと言う事は、前日に大岩に向かってファイナルカイザースラッシャーの特訓をした時よりも多くの魔力をロングソードに溜め込んで、それで一思いにドラゴンに向かって振り下ろしたに違いない。

 ドラゴンの左側で戦っていたメンバーはセバクターの安否を確認するべく、疲れた身体に鞭を打って右側へと回り込む。

 しかし、そこには既にレウスとサィードとエルザが倒れているセバクターに駆け寄っていた。


「おい大丈夫か、しっかりしろセバクター!!」

「くそっ、回復魔術をさっきから掛け続けているけどこのままじゃまずいぞ!!」

「ここじゃ埒が明かない! とにかく俺達がやって来たアイクトースの町に運んで、そこで治療を受けさせるんだ!!」


 倒れたままピクリとも動かないセバクター。

 そのセバクターに対してレウスが回復魔術を掛け続け、サィードとエルザでなるべく楽な姿勢になる様に身体を支えているが一向に良くなる気配が無い。

 エルザが首筋に手を当てて確認した所、脈はまだあるので生きてはいる。だが、このまま意識が戻らなければ本当にまずい。

 気絶しているだけかも知れないが、詳しい事は自分達ではさっぱり分からないので回復魔術を掛け続けながらセロデス平原からアイクトースの町に運んだ方が良いだろうとの結論に達した。


「だ、だけどこのセロデス平原からアイクトースの町までは十五分も掛かる!」

「だったらもっと近い町があるのか!?」

「いや……アイクトースの町しか知らない……」

「ならここでまごまごしているよりも、少しでも助かる方に賭けるんだよ!! 早く行くぞ!!」


 ネガティブになるエルザに向かってレウスが声を飛ばし、サィードとセバクターの男二人でそれぞれのコートとマントを使って即席の橋を作ってその上にセバクターを寝かせる。

 そしてセバクターを二人掛かりで運ぼうとしたのだが、ふとその時アレットが何かに気が付いて空を見上げる。


「……ねえ、何か聞こえないかしら?」

「は?」

「ほ、ほらあそこ!!」


 アレットが指差す先。

 そこには、バサバサと翼を広げてこちらに向かって来る鳥の様なシルエットがあったのだ!!

 しかし鳥にしてはやけに大きい様な気がする一行の中で、最初に表情が変わったのは指を差したアレットだった。


「……ま、またドラゴン!?」

「いや……違う、あれはワイバーンよ!!」

「え?」


 アレットの横から、一発でそのシルエットの正体を見抜いたドリスの言う通り一行の元に向かって飛んで来ているのはワイバーンだったのだ。まさかこんな時に限って、ワイバーンが近寄って来るなんて本当についていない……と歯軋りをしながら、一行は武器を構える。

 だがその中で、ティーナがワイバーンの背中の違和感に気が付いた。


「ま、待って下さい皆さん! ワイバーンの背中に誰かが乗っています!」

「乗っている?」

「そうです。あれは……人です!」


 彼女の言う通り、バサッバサッと翼を動かしてスピードを緩めつつそのワイバーンをコントロールしているのは人間の……茶髪の女だったのだ。

 敵か味方か分からないその女に対して、一行は武器を構えつつ警戒する。

 そんな一行の前でワイバーンを着陸させ、ロングバトルアックスを背中に装備している長身の女が降りて来た。


「ねえ、何があったの? 物凄い音が聞こえて来たから飛んで来たんだけど……」

「あ、え……あ、あの!! そのワイバーンって貴女のですか!?」

「え、うん、そうだけど……」


 これはチャンスだ。彼女がワイバーンに乗って来てくれたこの幸運を逃す訳にはいかない。

 となれば敵意剥き出しの姿勢を止めて、協力を仰ぐのが最適だろうとレウス達は判断した。


「すいません、この人が大怪我をしてしまって……お願いします、アイクトースの町までこのワイバーンで連れて行って貰えますか!?」

「怪我?」

「はい、そこに倒れているドラゴンと戦っていて大怪我をしたんです! お願いします!!」

「わ……分かったわ!!」


 小さめのワイバーンなので大人数は乗れない。

 なので魔力を掛け続ける為にレウスが同乗し、全部で三人がワイバーンに乗って先にアイクトースの町へと向かった。

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