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36.アークトゥルス時代の必殺技

 目立たない様にすればこれ以上変なのに絡まれずに済む……と思っていたが、その「変なの」はレウスに対して容赦をしてくれない事が分かるのは、ゴーシュにそう宣言したばっかりのこの日の夕方であった。

 部屋に戻ったレウスが食堂からテイクアウトで部屋に持ち帰った昼食を摂って、それからゴーシュからの荷物を開けて整理整頓し、気が付いてみれば既に時刻は夕方になっていた。


(もうこんな時間か……考えてみれば、今日も何だかバタバタした一日だったな)


 ゆったりと休日を過ごそうと考えていたのに、この疲労感は恐らく城下町でアンリから沢山話を聞いたのが一番の原因だろうと思ってしまう。

 有益な情報だった筈なのに、今のレウスには疲れる原因になっている。

 だったらいっその事、今日は学院も休みだし人気の無い訓練場で身体を少し動かしてみれば、この何とも言えない疲労感も逆に吹っ飛ぶかも知れない。


(逆に身体を動かして気分転換だ!)


 気分転換の方法なんて考えれば幾らだってあるんだ、と自分の槍を持ち、学院の内部の散策がてら余り使われる事が無い訓練場へ向かって足を進めるレウス。

 補習授業で使われる訓練場も所々にあるとアレットから聞いていたので、普段は学生達が行き来している学院へと向かい、出入り口の学院の警備兵から受け取った地図を片手に人気の無い学院内を進む。


(ええと、ここだな)


 やがて彼が辿り着いたのは、学院の外れ辺りに位置している屋外の小さな訓練場だった。

 扉を開けて中に入ってみると、予想通り誰も居なかったのでこれなら存分に訓練が出来ると意気込む。

 自分から戦うのは好きでは無いが、身体を動かすのは嫌いでは無いのだ。


 それに今は誰も居ないのだし、せっかくならアークトゥルス時代に習得した必殺技を幾つか復習しておこうとレウスは思い立った。

 何時も使っている愛用の槍では無く、訓練用の槍なのでその必殺技に槍が耐えきれるかどうかが心配なのだが、とりあえずやってみる事にする。


 一つ目は「クレイジー・アルカディア」。

 この世界に存在している魔力の四属性全ての大小様々なエネルギーボールを、武器から出る衝撃波によって縦横無尽に四方八方目掛けて乱射する、広範囲かつ超強力な範囲魔術攻撃だ。

 かなり魔力の消耗も激しいのだが、常人の十倍の魔力を持っているレウスにとってはなんて事は無い。

 しかし欠点が二つあり、レウスが今使っている槍だったり、騎士団長のギルベルトが使っているハルバードやロングソード、両手で扱うバスタードソードやロングバトルアックスみたいなそれなりに長さのある武器で無ければ、エネルギーボールを撃ち出す為の遠心力が弱くなるのでその威力が半減してしまう。


 気を集中し、レウスは訓練用の槍に魔力を注ぎ込めるだけ注ぎ込む。

 すると一分も掛からない内に、槍全体から白い煙が立ち上り始める。魔力を注ぎ込んでいる事により、鉄製の部分がその魔力によって内側から焼け始めているからだ。

 そしてここで出るもう一つの欠点が、魔力を注ぎ込んでいる途中で敵から攻撃を受けると中断せざるを得なくなってなかなか魔力がたまらないので、どうしても隙が大きくなってしまう。

 槍の熱で自分の手がやけどしない内に、この辺りで止めておこうとレウスは魔力を注ぎ込むのを終わらせて低く身構え、屋外である事を確認してからなるべく水平に槍を薙ぎ払った。


 するとその瞬間、火属性の赤、水属性の青、土属性の黄、風属性の緑のそれぞれの色を纏ったエネルギーボールが、衝撃波となって形を変えつつレウスを中心とする全方向に向かって飛んで行く。

 今回は自分以外に誰も居ないので、訓練場の壁がそのままエネルギーボールのターゲットになった。

 火属性のボールが当たった場所は一瞬だけ一気に燃え上がってすぐに鎮火し、水属性のボールが当たった場所はボールが爆散した力で大きく濡れ、土属性のボールが当たった壁は土の重さで壁が凹み、風属性のボールは壁に当たった瞬間その風の力で壁を少し抉り取った。


(こんなもんか。もっと魔力を注ぎ込めば、それぞれの属性のボールの威力がもっと増す。覚えていて良かったぜ)


 自分の腕が鈍っていない事に喜ぶレウスが、二つ目に繰り出す大技は「ナイト・プロヴィデンス」。

 遥か昔に滅んだと言われている、闇属性と呼ばれる五番目の魔力の属性を駆使する防御魔術。

 これを己の身体の周囲に展開する事で、物理攻撃も魔術攻撃も関係無しに全ての攻撃を吸収して無力化出来る。

 しかもそれだけでは無く、使用者を囲っているその闇のオーラに向かって繰り出された攻撃の二倍のダメージを、その攻撃を繰り出した相手に跳ね返すと言うまさに規格外。

 闇属性の魔術のトップクラスに位置づけられているに相応しい、世間に出回る事を恐れた魔術師達によって封印された禁断の魔術の一つである。


 レウスは目を閉じて再び気を集中し、自分の右手にどす黒いオーラを纏わせる。

 そして目をカッと見開き、それと同時に身体を一回転させつつ右手を大きく薙ぎ払えば、一瞬にしてそのどす黒いオーラがレウスの身体の周囲に円形の壁となって展開した。

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