386.リベンジマッチ決着
突っ込んで来たドラゴンを全員が回避し、再び全員でドラゴンの周りを囲む。
しかし、今回は前回とフォーメーションを変える。前回と同じフォーメーションで囲んだりしたら、また同じ様に素早い動きと大きな図体に振り回されて負けてしまうからだ。
「良し、こっちから集中攻撃を繰り返すんだ!!」
「ああ!」
前回は八人が半分ずつ、つまり四人でドラゴンの左半身を攻撃して残った四人が右半身から攻撃をする事で、均等に両側からダメージを与えられる様にしていたのである。
だが、それで気が両側それぞれに行ってしまい腹が立ったドラゴンの素早く無差別な動きで両側とも蹴散らされてしまい、むざむざ敗北して逃げ帰る破目になってしまった。
なので今回は、前回と同じく取り囲むまでは一緒なのだがその人数配分を変更し、ドラゴンの左側に六人を配置しておく。
残った二人はあえて攻撃力の高いメンバーにしておく事によって、ドラゴンの注意を逸らす作戦に出たのである。
だが、そのどちら側にもセバクターの姿は無かった。
何故なら彼は、他のメンバー達がドラゴンの注意を引き付けている間にファイナルカイザースラッシャーの為に魔力を溜め込んでいたのだから。
(アレットまで加わって、あのドラゴンの注意を引き付けてくれているんだから俺がここでまず一発、何とか決めなければな)
コォォ……と魔力が溜まる音を自分のロングソードから聞きながら、セバクターはファイナルカイザースラッシャーの覚悟を決める。
前回は間抜けにも半分程度の魔力で気絶してしまった自分だが、その後にレウス達から聞いた話によれば自分が繰り出したその技によってあの大岩が跡形も無く消え去ってしまったと言うので、半分程度の魔力でもそれだけの威力があると言う事になる。
だったらもう少し多めに魔力を入れたとしたら、あのドラゴンの胴体を切断する事も十分に可能だろうなと考えたその瞬間。
「…っ!?」
ゾワリと背筋を寒いものが走って、セバクターは思わず魔力を注入する動きを止めてしまった。
そしてその寒気を感じた方をバッと振り向いてみるが、そこには生い茂った草木が生えているだけである。
気のせいか……と思いつつ再び魔力を注入し終え、セバクターはドラゴンに気が付かれない様に素早くドラゴンの右側、つまりメンバー達が気を逸らして作ってくれたそのドラゴンの死角に回り込んでロングソードを構えた。
「ふうう……はあああっ!!」
叫び声とともに、右の後ろ足を攻撃していたエルザとサィードの横をすり抜けつつガラ空きの右前足に走り寄ったセバクターは、一息で的確にその右前足を斬り裂いた。
爆発とともに右足の方から煙が上がっているので、相当な衝撃であるのは間違い無い。
『グギャアアアアアアッ!!』
「おっと……!」
「危ない、離れろ!!」
前足を斬られた事でバランスを崩し、自分達の方へと傾くドラゴンを認識したサィードとエルザは素早くバックステップでドラゴンから距離を取った。
しかし、セバクターは的確に当てた筈だったのにギリギリでタイミングが合わなかったらしく、ドラゴンは右足を飛ばされる事も無しにバランスを崩すだけに留まったのだ。
「くっ、計画と違うぜ!」
「まずい……このままじゃあ!!」
右足の痛みに耐えながらバランスを立て直され、暴れ出したドラゴンによって再びパーティーが壊滅してしまう。
それだけは何としても阻止するべく、再びファイナルカイザースラッシャーの準備の為にセバクターが距離を取った場所で自分のロングソードに魔力を溜め始めた。
だが、セバクターの身体には確実に負担が掛かっている。
(くそっ、身体中がまるで俺まで斬り裂かれているかの様に熱い!)
それだけの衝撃を受けて、自分が良くあの時に気絶だけで済んだなと実感する。
しかし、あの時は今ファイナルカイザースラッシャーを使った時よりも少ない魔力だったからこそそれだけで済んだのだろう。
だがバランスを崩してそれで終わりと言う訳にはいかない。何としてもこの痛みを堪えつつ、あのドラゴンを仕留めなければ今度こそおしまいだ。
そう思いながら再び魔力を溜め始めたのは良いが、今度はフルパワーであのドラゴンの首を一撃で吹っ飛ばさなければならない上に、自分の身体に負担が掛かり過ぎて死んでしまうかも知れないのだ。
(それでも……俺がやるしか無い……!!)
だが、覚悟を決めながら魔力を溜め続けるセバクターの視線の先で、右の前足に向かって走り寄って行くレウスの姿が。
「ふっ!」
「え……?」
横薙ぎに振るわれたそのレウスの槍の一撃で、今度こそドラゴンが体勢を崩して横倒しになる。
それを見たレウスが、魔力を溜めているセバクターに向かって叫んだ。
「セバクター、今だっ!!」
「……うっ、おおおおおおおおおっ!!」
セバクターがドラゴンの首に駆け寄りつつ一気にジャンプして、振り被ったロングソードを頭上から目標に向かって振り下ろす。
「はあああっ、ファイナルカイザースラッシャあああああっ!!」
ドラゴンの反対側に居る残りのメンバーにも聞こえる程の叫び声を上げながら、振り下ろされたロングソードがドラゴンの首目掛けて叩き付けられる。
その攻撃が首に触れた瞬間、物凄い爆発が巻き起こった!!




