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377.出まかせと誘導

 こうしてまず第一段階の牢屋の場所は突き止めたが、問題はその何処にソルイールの二人が居るのかである。

 それを調べるのは現時点では不可能なので、実際に地下牢に行って捜してみなければならないのだが、正面突破はまず無理である。

 そこで、ダウランド盗賊団が得意としている仕掛けを使った作戦で城に忍び込む事にしたのだ。


「どうだ、調子は?」

「何とかやって来たぜ。人通りが多いからそれなりに見られそうな場面もあったけど、全部で百個ばらまいて来たからよ」

「ご苦労。私の方も百個設置して来た。そしてそれが段階的に作動すれば、必ず我々がユディソス城の中に入り込むチャンスが来る」


 その仕掛けが作動するまで時間があるので、二人はフィランダー城の近くにある物陰に隠れて城の様子を窺っていた。

 獣人は人間よりも身体能力が高いと言うのが一般的であり、このクロヴィスとエドワルドも例外では無い。

 しかしその獣人の種族によって例外があるのが特徴で、例えばライオン獣人のクロヴィスであれば大食漢で走るスピードも速く、また力も強いのが特徴なのでその肉体と身体能力を活かして力仕事に就いたりする者が多い。

 先祖がライオンだったので視力も良いし、その気になれば遠吠えを使って野生のライオンを使役する事も出来る。嗅覚もそれなりに優れているが、犬の獣人にはやっぱり敵わない。


 一方で、クロヴィスとコンビを組んでいるエドワルドは狼獣人。

 犬の仲間として分類される事は多いが、それを指摘されると「俺は犬じゃねえ!!」と切れる事も多く、自分が狼である事を誇りに思っている者が殆んどである。

 嗅覚はかなり鋭く、ライオン獣人のクロヴィスの何倍も鼻が利くのが特徴の一つだが、反面視力は弱めなのでそこはクロヴィスにカバーして貰う事が多いエドワルド。

 また、ライオンのクロヴィスと同じく肉食で素早い動きを得意としているのだが、クロヴィスが短距離で獲物を仕留めるライオンなのに対し、エドワルドを始めとする狼獣人は長時間の持久走を得意とするので移動距離の長さを気にしない者が多い。

 ただし彼等の様に獣人となって二足歩行に慣れてしまった今では、四足歩行をすると物凄い違和感を覚えるのだと言う。


「さぁ、そろそろ仕掛けが発動するぞ」

「え? それって後どれ位だ?」

「後……そうだな、五秒だ。四……三……二……一……ドカン」


 エドワルドが小さく呟いた瞬間、遠くの方から鈍い音が聞こえて来た。

 その鈍い音は徐々にユディソスの街の中に広まって行くと同時に、至る所で黒い煙や白い煙が上がって行く。


「なっ、何だ何だっ!?」

「うおわっ!?」


 二人が隠れている物陰の近くでも同じくその仕掛け……魔晶石をベースに使った結晶石の爆弾が爆発して、ゴミの入っている樽を吹っ飛ばした。

 手分けして合計で百個仕掛けたのはその爆弾であり、ユディソスの至る所で段階的に爆発する様に仕向けていたのである。

 当然そうなれば見回りに出ていた騎士団員達も、昼間にクロヴィスが酒場で話し込んでいた様な非番の騎士団員達も、勿論フィランダー城の周辺を警備している騎士団員達もその爆発が起こった場所に注目してしまう。


「おっ、おい爆発だ爆発!!」

「至る所で火の手が上がっているわ! 早く消火よ消火!!」

「水属性に強い魔術師達を呼んで来い!! 急げ!!」


 ユディソスの城下町全域に爆弾を仕掛けたので、これでしばらくは騎士団の連中も大人しくなるだろうと考えたエドワルドはクロヴィスと共に混乱状態にある街中を駆け抜け、消火活動の為に大勢でバタバタと城の中から出て来た騎士団員達に交じって城の門番をやり過ごしてフィランダー城の敷地内に入り込む事に成功した。

 しかしまだまだ油断は出来ない。

 ここから先は迅速な行動が必要になるので、まずは何処に地下牢があるのかを探さなければいけない。


「地下ってこったあ、何処かに絶対階段がある筈なんだがなあ?」

「ああ。でも見取り図が無いな……」

「よーし、だったら大胆に行ってみようぜ!!」

「はっ?」


 クロヴィスが意気込んでそう言ったのを見て、エドワルドはかなり呆気に取られた表情を浮かべる。

 このライオン男は何をするつもりなのだろうかと内心でハラハラしながら見守っていると、何といきなり近くで警備をしていた騎士団員の一人に話し掛けたのだ。


「おっ、おい大変だ! 城下町で爆発が何件も起こっているんだ!!」

「ああ、だからそれを今から私達も一緒に対処をしに行くんだ。でも君達は見かけない獣人だな?」

「俺達は最近騎士団に配属されたんだ。今日は非番だったんだけどこの緊急事態だから制服に着替える暇も無いまま伝達係としてこうやって伝えに来たんだよ!!」


 口から出まかせばかりを言うクロヴィスに話を合わせ、横からエドワルドが上手く誘導する。


「それはそうと、今回の爆発は城下町全体に及んでいる。地下牢に居る団員の手助けも必要になるかも知れないから私達が伝達しに行くんだが、あいにく配属されたばかりで地下牢の場所が分からない。何処にある?」

「地下牢だったらそこをまっすぐ行って、突き当たりを右に曲がれば地下牢への階段に繋がる扉があるぞ」

「分かった、それなら私達は伝達を続けるから城下町は頼むぞ!!」


 自分達が引き起こした騒ぎの後始末を騎士団員に任せ、クロヴィスとエドワルドは地下牢へと向けて走り出した。

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