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376.フレンドリーに情報収集

 レウス達がファイナルカイザースラッシャーの特訓を終えて、翌日のドラゴン討伐に向けてアイクトースの町の宿屋で休んでいる頃。

 エスヴァリークの帝都ユディソスでは、いよいよライオンの獣人クロヴィスと狼の獣人エドワルドの二人による、ソルイール帝国の二人の奪還作戦が幕を開けていた。


「今回は私達二人しか居ないからな。手早く物事を済ませるぞ」

「ああ……だけどここのセキュリティはかなり強力だぞ。正面突破なんて出来ねえだろ?」

「だから作戦を立てたんだろう。良いか、まず騒ぎを起こす。それからその騒ぎに乗じて中に入るんだ」

「わーってらぁ。でも何処の国にも口の軽い奴って居るもんだなー」


 まさかここまで奪還作戦の準備が上手く行くとは思わなかった。

 奪還作戦にはまずユディソス城の何処にソルイールの二人が捕らわれているのかを知らなければならなかったのだが、それ以前に必要なのがユディソス城の中に入る為の手段だった。

 しかし、まともに騎士団員に「ユディソス城の内部情報に関する話を教えてくれ」と言った所で教えて貰えないのは当然である。

 なのでここは別の方法でアプローチして、内部情報を手に入れる事にしたのだった。

 それは昼間、この二人がユディソスの町中にある一軒の酒場の前に立っている場面までさかのぼる。


「お前は社交的じゃないから、俺が行ってやるよ」

「ああ、そうしてくれ」


 このエスヴァリーク帝国は好戦的な者が多い。それは一般人に限った事では無く、ユディソスの騎士団員達も同じである。

 しかも武術大会が終了したばかりでその余韻がまだ人々の中に残っているのもあって、非番で酒場にやって来ている騎士団員や傭兵達も多数居る。

 なのでその中にまずはクロヴィスが混じり込み、軽く世間話から始める。


「いやー、この前の武術大会凄かったなー! 俺興奮しちまったぜ!」

「お、分かるか?」

「分かるさ。俺だって見て分かる通り戦士のはしくれだからよ。今回は用事があって出場出来なかったんだが、次回は参加してみてえんだよな」

「おお、それはぜひ参加してくれ」

「確か上位入賞者には騎士団への入団資格も与えられるんだろ? でも騎士団員ってかなり忙しそうだよなー。あんた達は今日は非番かい?」


 クロヴィスは武術大会の話から上手く入り込み、徐々に騎士団の情報を手に入れようとする。

 彼のフレンドリーな態度に騎士団員達や傭兵達も警戒心が段々無くなって来たのか、酒の勢いもあって口が軽くなって行く。


「そうさ。最近はドラゴンが北の方で暴れ回っているって言うから、このユディソスにまで来ちまったらどうなるかって凄く心配でさー。非番っつっても明日また仕事なんだよな」

「ドラゴンの被害は結構噂になってっから俺も知ってるよ。じゃあ犯罪が起こっちまったらこうした非番の日でも駆り出されるんだろ?」

「そうそう。代休とかもなかなか取れなくて全員ピリピリしてやがるぜ。犯罪起こした奴等を捕まえるのもみんな殺気立っちまってさ」

「へー。でもまぁ、そりゃそうだろうなー。そう言う犯罪起こした奴って城に連行されて牢屋に問答無用でぶっ込まれちまうんだろ?」


 段々とソルイールの二人の居場所に近づいて来たが、まだ焦ってはいけない。

 冷静な性格のエドワルドからは「お前は突っ走り過ぎだ」とたしなめられる事が良くあるので、焦り過ぎない様にじわりじわりと知りたい情報に近づける様に心掛けるクロヴィス。


「ああ。取り調べもドラゴンの影響なのか雑になって来てるって聞いてるよ。それでも取り調べた奴はちゃんと牢屋に入れるんだ」

「そりゃそうだろ。俺は傭兵で色々な所を回ってんだけどさー、この前に行った国では厳戒態勢の牢屋があってそこに罪人を入れて完璧な監視体制を敷いてるって言ってたぜ。このユディソス……って言うよりもエスヴァリーク全体は好戦的な奴等が多いから、それでも足りなかったりするのか?」

「足りない……?」

「ほら、好戦的な奴って暴れたりするだろ。俺も他の国で犯罪者を捕らえる為に協力した事があるんだけどよぉ、そう言う奴って隙あらば逃げたりしちまうから抑え込むのも厄介でさ。だから一緒に牢屋まで運んだりしてたんだよ。だからそう言う面で、城の牢屋の監視が足りなかったりするのかって話」


 全くの部外者であればセキュリティ面での話をする事に抵抗はあるかも知れないが、自分もそうした経験があると分かれば喋ってくれるだろうと言うクロヴィスの狙いは的中した。


(まあ、この犯罪者云々ってなぁ全くの嘘なんだけどよ)

「あーあーあー、そう言う事か。別にそこは心配無いよ。フィランダー城の中にはちゃんと地下牢があるからそこまで運んじまえば逃げられねーって」

「はー、何処でも考える事は一緒なんだなー。俺がその犯罪者を運んだ国も一緒だったよ。地下に牢屋があってすげえ入り組んでるんだ。やっぱりセキュリティの関係だろ?」

「そうそうそう。そうじゃないと逃げられちまうからさ。あ、もう一杯どうだ?」

「……いや、遠慮しておくわ。最近飲み過ぎちまって医者から酒止められてっからよ。じゃあ俺はもう行くぜ」


 こうしてなるべく自然な話の流れを装い、クロヴィスはフィランダー城の地下に牢屋があるのかを突き止めた。

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