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374.ファイナルカイザースラッシャーの威力

 しかし、ここに居る全員がそのファイナルカイザースラッシャーと言う必殺技を見るのもやるのも初めてである。

 なので特訓をするに当たって使う武器は、まずは自分のロングソードではなく以前レウス達をリーフォセリアから誘拐した、ウォレス率いる犯罪組織から奪い取って来たロングソード二本で始める。

 それでコツを掴んでから実際に自分のロングソードで特訓をする事に決めたセバクターは、実際に自分の魔力をそのロングソードに溜め込んでみる。


「ここから……こうか」

「そうだな。そしてそのままあの岩にロングソードを叩き付けて溜め込んだ魔力を使って爆砕するんだ」


 持ち手の部分から刃の部分に向かって魔力を纏わせれば、ロングソードの周りを段々と紫色のオーラが包み込んで行く。

 魔力が溜まっているのが分かるそのオーラがどんどん大きくなっているのを見て、レウスもセバクターもそろそろか……とこの辺りで止めておく。あのドラゴンに対抗するにはもっと多くの魔力を入れなければならないだろうが、今回はこの必殺技の特訓なのでこれでどれだけの威力があるのかを試すだけだ。


「良し、それじゃあの大岩に向かって縦斬りだ」

「ああ」


 レウスの指示に従って、スタスタとその大岩の手前まで歩いて行くセバクター。

 大岩と言ってもピンキリだが、今回セバクターがテストで使用するのはセバクターの身長に頭一つ分を足した位の高さがある岩だ。

 その岩の前に立ち、ロングソードを構えて振り上げて力を込める。

 果たして、ペーテルの先祖から代々伝わっていると言うその必殺技の威力はどれ程のものなのかと胸を高鳴らせながら、セバクターのテストの様子を見守る一行。

 しかし、それは全員が予期しないレベルの結果になった。


「ふうううううううう……はあああっ!!」


 気合いの掛け声とともにロングソードが振り下ろされる。

 しっかりとした軌道で振り下ろされたそのロングソードの刃が岩にぶつかった次の瞬間、ズガァァァアアアアアン!! とまるで土砂崩れが起こった山の頂上から大きな岩の塊が一直線に落ちて地面に直撃したかの様な、大きくて鈍い衝撃音が響いたのだ。


「うわっ!?」

「ぎゃっ!!」

「きゃあああっ!?」


 レウスもサイカもティーナも、それから他のメンバーも一様に驚きに身体を震わせながら衝撃に耐える。

 しかもその衝撃音のすぐ後に、バラバラと岩の破片が自分達のすぐそばまで飛んで来たので慌てて腕で顔を覆う。

 だが、その一同が受けた衝撃はセバクターが受けた衝撃に比べればまだ生易しいものだった。


「び……びっ……くりした……」

「おう……まさか俺もここまでの威力だとは思ってもみなかったぜ……」

「そ、そうだセバクターは!?」


 放心状態で目を丸くしているドリスとサィードの横で、セバクターの安否がどうなったかが気になってハッとするアレット。

 そのアレットの視線の先では、今の爆発によって沸き立つ粉塵がようやく薄くなってセバクターの姿が少しずつ現われたのだが、彼は仁王立ちのままで何事も無かった。


「……あれ?」


 ……様に見えたのは気のせいだったらしい。

 セバクターは仁王立ち等では無く、尻もちをついた状態で固まってしまっていたのだ。

 彼の横には刃の部分がボロボロになってしまったロングソードが転がっており、それだけでも今のファイナルカイザースラッシャーの衝撃がどれ程凄まじいものだったのかが伺える。

 しかし、問題なのはその尻もちをついたまま微動だにしないセバクターの状態であったので、三人は慌てて彼の元に駆け寄った。


「ちょちょちょ、ねえちょっと貴方……大丈夫なの!?」

「だ、駄目だ固まっちまってるぞこれ!!」

「とりあえずその木陰へ運びましょう!!」


 その三人掛かりで近くの木の陰へと運ばれたセバクターは、尻もちをついた姿勢のまま気絶していた。

 前代未聞とも言えそうな体勢での気絶に対し、とりあえず気絶から目を覚まさせなければならないと言うことでアレットが小さいウォーターボールを手のひらに生み出し、それを彼の顔にぶつけてみる。


「えいっ!」

「……はっ!?」

「あ、良かった……気が付いたみたいね」

「…………何だ、何がどうなったんだ?」


 セバクター曰く、自分のロングソードが岩に叩き付けられた瞬間に大爆発が起きて思わず目をつぶってしまったのだと言う。

 その直後にドン、とまるで殴り付ける様な衝撃を全身に受け、そのショックで気絶してしまったらしくそこから記憶が無いんだとドリスとサィードとアレットに語る一方で、大岩が()()()場所で残りのメンバーによる現場検証がされていた。


「もう跡形も無くなっちゃったわね……」

「ああ。さっきのを見ていたけど凄い威力だな……まだ一杯まで魔力を注ぎ込んでいないんだろう?」

「まだ半分位だった筈だ。もしギリギリまで魔力を注ぎ込んだら……命の危険もあるだろうな」


 サイカ、エルザ、ソランジュがそれぞれ唖然とする横で、レウスとティーナはこれなら行けそうだと確信していた。


「どうだ? お前もこの技を習得してみるか?」

「いいえ、魅力的ではありますが私は遠慮しておきますわ。到底耐えられそうにありませんもの……」

「それが無難かもな」


 これにて特訓と実験は終了となり、一行は身体を休めて明日の朝に再びドラゴンを退治する事に決めた。

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