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367.窃盗と略奪

 そのレウスの暴露を横で聞いていたドリスが、面白いものを見る目つきでエルザを凝視する。


「へー、貴女って高所恐怖症なんだ。ちょっと意外」

「い、意外って何だ!!」

「だってやけに偉そうだから怖いもの知らずってイメージだったけど、やっぱり怖いものの一つや二つあるのねー」

「う……うるさいっ! 誰にでも苦手なものはあるだろうがっ!」


 顔を真っ赤にしつつそう言うエルザだが、ドリスは一歩下がってエルザの後ろを指差して叫んだ。


「あ、そっち谷底!」

「うひゃあっ!?」

「そんな訳無いじゃない。ここは町の中よ?」

「だ、騙したな貴様ぁ~っ!!」


 振り返って盛大に尻もちをつくエルザのリアクションに、クスクスとティーナまで笑い始めた。


「まあ、面白い方ですわね」

「やかましい!! それよりもこんな話をしている場合じゃないだろう!! さっさと本題のワイバーンを使った盗賊の話をしろっ!!」

「まだそうと決まった訳じゃないぞ。しかし、窃盗事件現場の近くにワイバーンの足跡が残っていたのは事実だって話だからな。それにこうした事件はこの北の方だけでは無く、南のアークトゥルスの墓の付近でも盗掘者達が目撃されているって話だから何処でも起こっているんだろうな」


 今の一連のやり取りを見てもニコリともせずノーリアクションだったセバクターが、冷静な口調で話の分析をする。

 だが、それよりも自分達がここに来た本当の目的を探らなければならないのだ。


「でも、何にしてもまずはその平原で寝ているって言うドラゴンを観察にし行きましょうよ。敵を知らないと対策も立てられないわよ」

「そうだな。それじゃここから目的地の平原までどれ位の時間が掛かるのか聞いて来る」


 サイカのセリフにレウスが頷いて、ジェラルドからの依頼を達成する為に動き出す一行。

 ワイバーンを使っているかも知れない盗賊についても気になるのだが、それについてはまだまだ情報が足りない上に他の窃盗、または略奪事件と合わせて捜査すると言っているので、レウス達はとにかくそのドラゴンが寝ていると言う平原に向かった。


「えーと……このアイクトースの町から東に向かって十五分程歩いた場所にセロデス平原と言う場所があって、その奥の方にドラゴンが棲みついていると言っていたぞ」

「じゃあさっさとその平原に行こう。そして倒せるなら倒してしまいましょうよ」


 レウスからの話にドリスがそう決意したものの、アレットは妙な胸騒ぎを思えていた。

 そんな彼女の様子に気が付いたサィードが声を掛ける。


「……どうした、アレット?」

「いや……何でも無いわ。上手く行くかなって不安になっていただけ」

「なーに言ってんだよ、やる前からそんな不安になってちゃ上手く行くもんも行かねえって!! ドラゴンには魔術が通用しないって話だったから魔術師のお前としては不安になるのは分かるけど、こっちには物理攻撃のスペシャリストが何人も居るんだからよ!!」

「う、うん……」


 不安を吹っ飛ばす様にアレットの肩をバンバンとサィードが叩き、出発する一行。

 しかし、それを物陰で見ていた一人の人物が居た。


「ふぅん……あれが噂のアークトゥルスの生まれ変わりかぁ……だったらここで始末しちゃおうかな?」


 茶髪のロングヘアーに、紫色のロングコートを着込んでロングバトルアックスを持っている女が遠目にそのレウス達の様子を目で追いながら呟いた。

 彼女こそが、最近世界の南側で名の知れ渡って来ているダウランド盗賊団のの女リーダーであるメイベル・ダウランドである。

 今回、マウデル騎士学院からはるばるここまでやって来たと言うアークトゥルスの生まれ変わりの仲間に大事な仲間がやられてしまい、エスヴァリーク帝国騎士団に捕まって城の牢屋に投獄されてしまったのでその仲間達を奪還して欲しい、とカシュラーゼから連絡を受けた彼女。

 だが、実際に彼女が現場に向かうのでは無く城からの奪還は自分の盗賊団の副団長二人に任せている。

 何故なら彼女は、それとはまた別に個人的にこのエスヴァリーク帝国に来る目的があったからだ。


(このエスヴァリーク帝国の南にある、アークトゥルスの墓の中に物凄いお宝があるって話だったから一度行ってみたんだけど……結局アークトゥルスの墓を掘り返す事が出来なかったのよねー)


 南のアークトゥルスの墓を掘り起こすべく、彼女は自分の部下を複数人動員して自分も含めて何とか墓を掘り返そうと試みた。

 しかしその墓は強力な魔力の結界で守られているらしく、今まで何人もの盗掘者達がその墓の掘り起こしに挑んだが結界を破る事が出来ずに諦めてしまっている。

 その鉄壁の結界があるからこそ、何か凄いお宝が墓の下に眠っているのでは無いかと盗賊団の間で噂になっているのだ。


(私と一歳しか歳が違わないシンベリ盗賊団のリーダーも、それからブローディ盗賊団のリーダーも諦めたから私も諦めようかと思っていたけど……あ、そうだ! ここであのアークトゥルスの生まれ変わりを始末するんじゃなくて誘拐して、結界を解いて貰おう!)


 その時に役に立たなかったら改めて始末すれば良い。

 そう考えたメイベルは、徒歩で一行の後をひたひたと気付かれない様に追い掛け始めた。

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