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34.あいつ等の情報

「この前はどうも。今日はお休みですか?」

「ああ。アンリも?」

「そうですよ。私達騎士団員はローテーションで休みを頂いていますから。騎士学院はいかがです?」

「まあ、ぼちぼち……ですかね」


 まるで腹の探り合いの様な会話をする二人だが、アンリが唐突に気になる事を言い出した。


「そう言えば、学院に入り込んだと言われているあの赤髪の二人組の素性が分かりましたよ」

「本当か!?」

「ええ。私は前に騎士団の情報部におりましたので、そのツテでね」

「それは良いから教えてくれ。どんな連中だったんだ!?」


 自分を倒して逃げ去ってしまったあの二人組の素性が分かるかも知れないとなれば、ぜひその話を聞きたいんだと身を乗り出してアンリを急かすレウス。

 その彼の様子に苦笑いを浮かべつつも、手に持っている木製のカップに入ったコーヒーを優雅にすすってから答え始めるアンリ。


「あの二人は傭兵として活動している事が分かりましてね。ほら……あのセバクターさんと同じですよ。世界各地を巡って各国の騎士団に協力している、腕利きの傭兵です」

「傭兵だったのか。でもその言い方だと騎士団限定で雇い先を選んでいるみたいだが?」

「そうですね、得られている情報としては今の所それだけですので。情報部で世界各国の騎士団に連絡を取り、それぞれ得られた情報をこうして貴方にお伝えしています。もしかすると騎士団以外にも雇い主が居たのかも知れませんが、私達が掴んだのはそれだけです」

「そうなんだ。何か傭兵って言うより騎士団から騎士団に渡り歩いているフリーの騎士みたいだな」


 実際そんな職種があるのかどうかは別にして、各国の騎士団を渡り歩いていた者が何故今回の様な騎士学院への侵入事件を起こしたのかが気になるレウス。

 だがその前に、男女それぞれの詳しいプロフィールも知っているのであれば聞いておきたかった。


「あの男と女の素性が分かったならそれぞれもっと詳しく教えて欲しい。それから何故あんな事件を起こしたのかって言うのも分かるか?」

「事件を起こした理由については憶測の域を出ませんが、情報部によれば恐らく騎士学院に保管されているドラゴンの肉体の一部を持ち出す為に動いていたのではないかと言われています」


 やはり、あの二人の目的はドラゴンの肉体の欠片を狙った線が濃厚らしい。


「それから男女それぞれの詳細情報について分かっているのは、まず男の方がヴェラル・オルコット、二十八歳。先程申し上げました通り、世界中を巡って騎士団を渡り歩いていた傭兵です。ただし、過去の素性についてはどうやら偽装していた様ですね」

「偽装?」


 何をそんなに偽装する様な事があるのだろう、と疑問に思うレウスはパンを最後まで口の中に入れつつアンリに話の続きを促す。


「はい。各国の騎士団に傭兵として参加する際は、やはり騎士団と共に行動するのでそれなりの身分証明が必要になりますからね。ですがどうやらそのヴェラルと言う男は、騎士団ごとに自分の経歴を巧妙に偽装していたそうでして、それぞれの国から取り寄せた彼の経歴に食い違いが幾つも見られるんです」

「それって……そうしなきゃいけない理由があるって事だよな?」

「そう言う事になるでしょうね」


 今回の騎士学院への侵入事件を起こしたのと、各国で経歴をわざわざ偽装して活動していたのは絶対無関係では無いと思うレウスだが、そこまでしてそのヴェラルと言う男はドラゴンの身体を狙う理由があるのだろうか?


「騎士団に混じって活動出来る程の腕がある男が、一体何の為にそんな事をしてるんだ……?」

「それは現在こちらでも調査中です。……さて、それではもう一人の女の方に関してですが、こちらはヨハンナ・リンドブラード。二十三歳の傭兵ですが、彼女の方は元々辻斬りだった過去が既に判明しています」

「辻斬り?」


 そりゃまた物騒な存在だったんだなぁと思いつつ、アンリからもたらされる情報の続きが気になるのでレウスは耳を傾ける。

 思えば、最初にあの二人と騎士学院で戦った時にヨハンナに奇襲を掛けられて負けてしまったリザルトからしても、その辻斬りをやっていた故の奇襲戦法が得意だったのだろう……と思いながら。


「そうです。このエンヴィルーク・アンフェレイア中を股にかけた、世間では有名な辻斬りの過去を持っていました。その辻斬りだったヨハンナとヴェラルがどうやって出会ったのかまでは分かりませんが、どうやら今はコンビを組んで動いている様ですね」

「コンビ……あ…そう言えば騎士学院に忍び込もうとしていた時に、そのヨハンナって女の方が確か師匠ってヴェラルの事を呼んでいたな……」

「それは本当ですか?」

「ああ。俺のこの耳でしっかり聞いたから間違い無い」


 辻斬りとして活動していた女のヨハンナと、ヨハンナの師匠であり世界各国の騎士団で活動していた傭兵のヴェラルの師弟コンビが一体何をしようとしているのか?

 漠然とした不安が、レウスの身体をブルリと震わせた。

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