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366.どうやら別の問題が起こっている様です。

 まばゆい光に包まれたレウス一行が気が付くと、そこは何処かの町の路地裏だった。

 しかもさっきまで雨が降っていたらしく、空気が湿っているし足元の石畳もビチャビチャに濡れているではないか。


「む、ここは……?」

「どうやらその北の地ベリシャンにある、何処かの町らしいな。とりあえず陛下がおっしゃっていた騎士団員や魔術師を捜してみよう」

「えーっ、せめてその詰め所とかに一気に送り届けて欲しかったなぁー」


 辺りを見渡して状況を把握しようとするソランジュに対し、冷静に分析をするエルザ。

 その横でドリスがそう本音を漏らせば、パーティーメンバーの中で唯一の魔術師であるアレットが「そう簡単には行かないのよ」と前置きをしてから魔法陣の特性について説明をする。


「魔法陣の中でも、転送陣って言うのは転送する位置とか距離とかで描かなければいけない文様が変わって来るの。その距離が遠くなればなる程、複雑な文様が必要になるって言うのは前にあなた達にも話した気がするけど、もっと突っ込んだ話を一つさせて貰うとその魔法陣で正確な位置を指定するなら、もっともっと複雑な文様が必要なのよ」

「だったらそうやって欲しいわよ」


 ぶーぶーと口を尖らせるドリスに対し、魔術師の立場からアレットはなかなかそれが出来ないのだと反論する。


「今回はドラゴンが暴れ回っているって聞いたから時間が無かったじゃない。それこそ微妙な調整が必要なのよ、位置調整の文様は。そう簡単には行かないし、まずはこうやって北の地まで一気に送り届けて貰えただけでも感謝しなくちゃ」


 そんなやり取りを繰り広げるアレットとドリスを含めた一行が、路地裏からそれなりに広い通りへと出て最初に見つけた騎士団員に案内して貰って近くの騎士団の詰め所へと向かう。

 しかし、そこでドラゴンの襲撃とはまた別の問題が浮かび上がって来たのだった。


「窃盗や略奪?」

「そうなんだ。この辺りの騎士団員から聞いた話だと、どうもここ最近でかなり酷くなっているらしい」


 キョトンとするエルザに対して、ソランジュが腕を組んで残念そうな口調で呟く。

 その騎士団の詰め所ばかりでは無く、魔術師達の間でも有名になっているのがこのドラゴンの襲撃被害に乗じた窃盗や略奪の問題らしい。

 町や村が破壊されている惨状に目を付け、逃げ出して誰も居なくなった家や店の中から金品や食料を掠め取って行く不埒な輩がこの北のベリシャンに居るらしい。

 当然、ドラゴンの被害の上にそんな被害まで出ているのを見過ごす訳にはいかない騎士団員達は、被害のあった地域やこれから被害が出そうな地域の見回りを強化しているのだが、また何時ドラゴンが現われるか分からない状況の上に不定期に被害が報告されるので手の施し様が無いのだと嘆いている。


「なるほど、事情は大体把握出来た。だが、それがここ最近で酷くなっているってどうして分かるんだ? もしかして被害報告の回数が増えたのか?」

「ああ。盗賊もやり方を変えて来ているみたいだぞ。ドラゴンの魔力を調べに向かった魔術師の話では、人間や獣人の足跡と一緒にワイバーンの足跡も発見されたみたいなんだ」

「ワイバーン?」

「そうだ。それもつい昨日の話だって言うからな。もしかしたらまだ、この近くにそう言うワイバーンの使い手の盗賊が居たりするのかも知れない」


 ワイバーンは、このエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界の中では魔物として知られているのだが、移動用として飼い慣らして飛び回る人間や獣人も居る。

 しかし、そのワイバーンを乗りこなすに当たってはそれなりのトレーニングを積まなければならない上に、元々ワイバーンは気性が荒いので手懐けるにも相当な時間が掛かる。

 エサ代だって馬鹿にならないし、そもそも遠くまで移動する用事が無ければ馬で事足りるので普及率としては全然である。

 なので世界各国を頻繁に飛び回る商人が移動用として所有していたり、セバクターやサィードの様な世界中で名前を売っていて、尚且つ世界各国から依頼が舞い込んで来る様なレベルの傭兵で無ければなかなか個人レベルで所有している人間や獣人は居ない。


「俺もワイバーンを持ちてえなって考えた事はあるけど、ワイバーンって馬と違って身体がでっけえだろ? だからワイバーンの移動で降りられる所が限られるのもネックなんだよなー」


 腕を組んでそう言うサィードに続き、エルザは以前ワイバーンを借りた時の事を思い出した。


「ああ……それはあるだろうな。私達は前にレウスと一緒にレンタルでワイバーンで移動した事があるんだが、レンタルの費用もかなり高めだったしそう何度も借りられないって実感したよ。レウスはワイバーンに乗った経験があるんだよな?」

「昔だがな。でもそれより気になっているのは……」


 中途半端に言葉を止め、レウスはエルザの方に目を向けた。


「……何だ?」

「いや、もし俺達が仮にこの先でワイバーンを手に入れる機会があったとしても、お前のせいで移動が出来ないだろうなって思ってた」

「どう言う意味だ?」

「だってお前、高所恐怖症だろうが。あんなにワイバーンの背中でひぃひぃ言ってたくせにワイバーンに乗れる訳が無いだろう」

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