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364.ドラゴン退治に出発

昨日のアクセス数が1日で1万PV超えました。

感謝感謝です。

 赤毛の二人とダウランド盗賊団の二人が合流して、作戦を立て始めた次の日の朝。

 ドラゴン討伐の為に結成された即席のチームが、いよいよ北に向かうべくフィランダー城の前に集結した。


「良し……それじゃあ出発しよう。現地までの転送システムも用意して貰ったから、今回はイーディクトの時みたいに魔物を倒しながら北上するって言う事も無いからな」

「うん、それは良いんだけどちょっと気になっている事があるのよね」

「何がだ?」


 リーダーとしてパーティーを引っ張って行く立場のレウスに向かって、アレットがこんな疑問をぶつけてみる。


「今回のドラゴンがもたらした被害の範囲についてなんだけど、ジェラルド陛下や騎士団の人達から聞いた限りではエスヴァリークの北にばかり集中しているじゃない。南からの情報が一切入って来ないのはどうしてなんだろうってふと考えていたのよ」


 昨日は準備でユディソスの至る所を回っていたのでそこまで気が回らなかったのだが、アレットはそこがかなり気になっていたらしいのだ。

 しかし、その答えは騎士団の団員でも皇帝ジェラルドでも無くパーティー内の意外な人物から出て来た。


「あー、その話なら俺が聞いた事あるぜ」

「サィードが?」

「ああ。南にドラゴンが寄り付かないのは、どうやら南にあるアークトゥルスの墓から漏れ出している強大な魔力が、そのドラゴンを遠ざけているらしいからって話だ」

「魔力が遠ざける?」

「そうそう。その魔力がかなり強いからドラゴンも怖がっちまって、それでこのユディソスから南側には近づかねーんじゃねーかって俺の部下が話してたからよ」

「……部下?」


 部下って一体何の事だろうか?

 ドラゴンが寄り付かない理由は分かったものの、今度はそこに引っ掛かるアレットに対してサィードは若干うろたえながら答える。


「や……ほら、俺は傭兵だからよ。傭兵としてパーティーを組むに当たって上司と部下みたいな関係って出来ちまうんだよ」

「その様な話、私もドリスも聞いた事も無いですけど」


 冷ややかな口調でそう指摘するティーナだが、サィードは彼女の指摘に流し気味で答える。


「まだお前等は若いから知らない事も沢山あるかも知れねえが、傭兵の世界って色々面倒なんだぜ?」

「それは知ってるわよ。そんなに面倒臭い傭兵の上下関係なんてあるんだ?」

「あー、勿論あるさ。ほら……ランクの関係があるだろ? Aランクの奴にBランクの奴が逆らっちゃいけねえとかさ」

「そんなの聞いた事無いけど」

「だーっ、しつけえよ!! とにかく俺はそう言う上下関係を聞いた事あるし、実際にそう言うパーティーでやってた事もあんだよ!! 良いからさっさと出発しようぜ。ここでウダウダ言ってたら日が暮れちまう!!」


 半ばムキになって話を終わらせたサィードを見て、心の中でレウスは違和感を覚えていた。


(あんなにムキになるなんて……何だか変だな)


 しかし今は彼の事を考えるよりも、ドラゴンの討伐を第一に考えて行動しなければいけないので一旦この事は忘れる。

 そう決めたレウスの横から、アレットがレウスにこそっと耳打ちをする。


「ねえレウス、覚えているかしら?」

「何をだ?」

「ほら……騎士学院での魔術の授業の時、貴方の……アークトゥルスの魔力に怯えたケルベロスの反応よ」

「ああ……あれか。と言うか良く覚えてたな、そんな事」

「そりゃーもう覚えているわよ。そもそもこの状況であのケルベロスの事を思い出すものだとばっかり私は思っていたのに、全然リアクションが無いんだもん」

「……リアクションは元々薄い方だからな」


 セバクター程では無いけれど、と最後に一言ボソッと付け加えたレウスはこれ以上サィードがムキになって暴走しない内に、さっさとドラゴン討伐に向かうべくフィランダー城の中へと進んで行った。

 その一行を見送りに来たペーテルが、最後尾から続こうとするセバクターに声を掛ける。


「ご無理は禁物ですよ、セバクター坊っちゃん」

「分かっている」

「ドラゴンの生物兵器は未知の存在です。無理だと思ったら引く事も大事ですよ」

「ああ」

「それから、これをお渡ししておきます」


 ペーテルはズボンのポケットから、かなり年月が経っていそうな……一見すると古文書の様な薄い茶色に変色しているボロボロの折り畳まれている紙を取り出した。


「これは?」

「セバクター坊っちゃんはご存じでは無いかも知れませんが、私の先祖から代々伝わる剣術の必殺技が記されています。時間がある時にこれを見て習得すれば、きっとお役に立てるかと」

「……分かった」


 そんな習得する時間があるのか? と心の中で突っ込みを入れるセバクターに対して、先に進み始めたレウス達の中からソランジュの声が掛かる。


「セバクター! お主は置いて行かれたいのか!?」

「いや、今行く! ……では、行って来るぞ」

「行ってらっしゃいませ、セバクター坊っちゃん」


 左胸に右手を当てて一礼するペーテルに背を向け、セバクターもドラゴン討伐に向けて進み始めた。

 ズボンのポケットの中に、その必殺技が書かれていると言う紙をしまい込んで……。

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