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361.出発準備の日の修羅場(その1)

 奪還作戦が始まった翌日の朝、傷も癒えたレウス達一行はドラゴン討伐に向けて出発の準備をするべくユディソスの城下町へと繰り出していた。

 皇帝ジェラルドからの命により、このユディソスの城下町を知っているペーテルに各地を案内して貰い、一行は薬や武器、防具等の旅立ちに必要な物を用意して回る。

 金に関しては後で全て皇帝が支払ってくれると言うのだが、武器や防具に関してはあのレアナから貰った物があるので用意しなくても良い。その代わりに魔晶石や薬を買い込んでおき、ドラゴンに対しての対策をする。

 特に今回の相手……ドラゴンの生物兵器は魔術の類が一切効かないらしいので、物理攻撃を避けられる様に魔力の効果を高める薬を多めに買い込んでおいた。


(そのドラゴンは魔術が効かない上に、ドラゴンからの攻撃を魔術防壁で防ごうにもその防壁をすり抜けて攻撃されてしまうと言うのであれば、せめて回避と回復の面だけでも何時もより効果が出る様にしておかなくちゃ!)


 攻撃と防御で魔術が使えないのであれば、回復と移動速度のアップでそれをカバーしようと言うアレットの提案によって対策を練る一方で、レウスとセバクターだけは「私用がある」と言って一旦パーティーを離れてアンノウンのレストランへとやって来た。

 以前、セバクターがあのウェイスの町の時の仲間達と一緒に、レウスの両親への囮として使う魔晶石を大量に集めていたのが記憶に新しいあの場所で、再びその仲間達に話をしに来たのである。


「……と言う訳で、俺とレウスはこれからドラゴンの退治に向かう。こっちは任せたぞ」

「でも、こうやって店の中を見る限りでは既に魔晶石を売り払ったらしいが……どうなったんだ?」


 あのゴソゴソと漁っていた樽の中を始めとして、家具が全て撤去されて魔晶石が全て無くなっていた。

 しかし本当に売り払ってしまったとなれば、セバクターとその仲間達が自分の両親とエドガーに協力してしまったと言う事になるので、もしかしたらエヴィル・ワンの復活に利用されるのかも知れない。

 だが、現実はもっと深刻だったのだ。


「そ、それが……セバクター様、申し訳無い!!」

「ど……どうしたんだ?」


 いきなり床に膝をついて謝り始めた自分の仲間達に、普段表情が余り動かない彼も少し顔の表情を変えて問う。

 そして、丁度昨日の夜に起こった事を話し始めた。


「そ、それが……取り引きは順調に行っていた筈だったんです。でもその途中で赤毛の二人組が乱入して来まして、俺達を全員拘束した後に魔晶石を全てブン取って行ったんです!!」

「何だって!?」


 昨日の夜と言えば、自分達の方もあのユフリーと青髪の男に襲撃を受けていた時では無いか。

 それにその赤毛の二人組と言う情報に、レウスとセバクターの二人はすぐにピンと来たのである。


「その赤毛の二人って、まさか……」

「あの二人……ヴェラルとヨハンナだろうな」

「その二人って一人は若い男で、もう一人は若い女のコンビじゃなかったか? 二人とも全身黒を基調とした格好をしていてさ」

「そ、そうです……その通りです」


 レウスがセバクターの仲間達に尋ねると肯定されたので、やはりここにも奴等が現われたのか……と悩む二人。

 その二人に向かって、セバクターの仲間達は話を続ける。


「あっと言う間でしたよ。その男女は私達を襲って来たんですが、対抗しようにも相手の方が何倍も強くて全然歯が立ちませんでした」

「お前達は世界各国で実力があると認められた人間や獣人の筈なのに、これだけの人数が居て駄目だったのか?」

「いえ、その時は全部で十人程しか居なかったんです。取り引きにそれ程の人数は要らないと思いましたし、作業で疲れて帰っちゃった人も居ましたんで。……それよりももっと絶望したのは、俺達が取り引きしていた相手もその赤毛の二人の仲間だったらしいのが分かった事ですね」

「えっ!?」


 となると話がまた動く。

 セバクターの仲間達が言っている事が事実ならば、その赤毛の二人と取り引き相手……つまりアーヴィン商会から送り込まれた遣いの人物も繋がっていたのだろう。


「俺の両親がカシュラーゼと繋がっていたってのは本当だったのか?」

「残酷だが……そうとしか考えられないだろうな。で……アーヴィン商会から取り引き相手として遣わされた奴は何処へ向かった?」

「その二人と一緒に魔晶石を全て奪い取ると、あらかじめ取り引き用に乗って来た馬車で悠々と逃げていきました。まるで俺達に見せつけるかの様に、縛り上げられた俺達の目の前でゆっくりと作業をして……だから逃げた先も分からないんです」

「くそっ、もう八方塞がりだな。でもどうして俺とかセバクターにそれを伝えに来なかったんだよ?」


 レウスの疑問に、部下は勿論すぐにそうしたとあの夜の事を話した。


「勿論、セバクター様の屋敷に話を伝えに行きました。ですがセバクター様の屋敷が何者かに襲撃されたって話が街中を駆け巡っていた上に、現場も騎士団の検証が入った後で立ち入り禁止になっていましたし、セバクター様達もフィランダー城に運ばれたって聞いたので伝える暇が無かったんです!」

「そうか……だったら仕方無いな」


 とにかく、これでまた面倒事が一つ増えたのは確かである。

 しかしその面倒事を引き起こした人物達は、まだこのユディソスの城下町に居るのだ。

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