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358.デレデレした結果

 翌日、レウス達四人はセバクターの屋敷で襲撃されたパーティーメンバー達とペーテルが集まっている広い医務室に出向き、何が原因であの惨劇が起こったのかを並んだベッドに寝て療養している七人から事情聴取していた。

 そして、事の発端はユフリーに対してサィードがデレデレした結果らしい。


「……正確には、ユフリーの服を始めとして風呂を覗きに行こうとしてたからですって?」

「いやーっ、変態!! 人間のクズ!!」

「え、あ、あのちょっと……あの……」


 あたふたしているものの、言い訳のしようも無いのでヒルトン姉妹のそのリアクションに何て答えたら良いのか困るサィード。

 その一方で、レウスはペーテルからも話を聞いていた。


「あんたもあの揚げ物を食ったのか?」

「はい……私はお風呂を入れた後にセバクター坊っちゃんと一緒にあの揚げ物の詰め合わせを食べたんです。恐らくそのせいで魔術が使えなくなってしまいました。面目ありません……」

「ふう……まぁ、もう済んでしまった事は仕方が無い。問題はそこじゃなくてその後だよな。何でサィードがハンドガンを見つけて持って来たのに、そのまま取り上げて手元に置いておかなかったのか理解に苦しむ。そこが俺はどうしても理由が知りたいんだが、何でだよ?」


 もし、ハンドガンを戻さずにそのまま手元に置いておいたら、こんな惨劇も起こらなかったのでは無いのかと言うレウスの疑問に対して、ペーテルとセバクターはあの時の理由を回想して話し始めた。


『しかし、まさかあのユフリーと言う女がハンドガンを持っていたなんて……』

『そうだな。ってなると恐らく、アレットとエルザが食事をしていたステーキ屋のすぐ近くの路地裏で起こったあの事件の犯人が、ユフリーちゃんだって可能性もあるって事か?』

『時間帯と出会った場所からしても確定でしょうな。それに私と鉢合わせたあの青い髪の男もハンドガンを持っていましたから、その男と彼女が繋がっている可能性も否定出来ません』

『だよなー……』


 この回想をペーテルから聞き、レウスはこの三人の先読みの出来なさに首を傾げた。


「傭兵や冒険者として世界中を回っているのに、先読みが出来ないのはどうかと思うぞ」

「最初は魔力を吸い取ってしまえば良いんじゃないかと考えました。ですが、どれ位の時間が掛かるのか分からない上に、魔力を吸い取る前に彼女達が風呂から出て来てしまったらサィード様がハンドガンを抜いたのがバレてしまうと思いまして、一旦急いで戻して来る様にお願いしたのです」


 しかし、ペーテルが語ったこの回想にはまだ続きがあった。


『でも、このままハンドガンを持っておいた方が良いんじゃないか? そうすればハンドガンが無くなってるってあいつが気が付いた時に、これは何なんだよって問い詰められるだろ?』

『いえ……それですとあのお風呂に入っている方達が危険です。彼女が他にも何をしでかすか分からない以上、刺激をする様な材料を作ってはなりません。脱衣所では彼女達は全員無防備ですからね』

『それもそうか……』


 問い詰めたら問い詰めたで何か良からぬ行動に出てもおかしくないと悟ったペーテルの意見により、サィードが脱衣所に戻しに行ったのである。

 そのレウスとペーテルの会話を横のベッドで聞いていたセバクターが、冷静な口調で呟いた。


「だが、結局あの女の方が一枚上手だった様だ。普通は自分の持ち物がちょっと動いた事なんて気にも留めないと思うが、彼女はそれに気が付いた。よっぽど注意力のある人間なんだろう。そしてそれを逆手にとって、自分があのハンドガンの持ち主で路地裏の殺人を犯した人間だとバレない様に振る舞い、油断した所で一気に畳み掛ける……か」

「私も完全に油断しておりました。魔術防壁を掛けようと思っていない時に突然撃たれたのですから」


 まるで肩透かしを食らったかの様なタイミングで銃撃を受け、そしてあの銃弾に成す術も無く全員やられてしまった。

 そもそも最初からあの揚げ物の詰め合わせを持って来た時点で、あの時セバクターの屋敷に居た人間達を襲撃すると言う目的があってこその行動だったのだろう、とセバクターは続けた。


「……まぁ、誰も死ななくて良かった。ひとまずはあの連中も捕まった事だし、過ぎた事を悔やむよりこれからの事を考えなくてはな。ジェラルド陛下からの話では出発のスケジュールを一日遅らせる。まず今日は負傷したメンバー全員がここで療養。そして明日……本来出発の日だったんだがその日を出発準備の日にして、明後日の朝に改めて出発だ」

「かしこまりました」


 今頃あの連中は騎士団によって厳しい取り調べを受けているのだろうか。それとも、ジェラルドの言っていた通り黙秘を続けているのだろうか。

 出来れば後者であって欲しいと願うレウスだったが、その一方でこのエスヴァリークから遠く離れた魔術王国カシュラーゼにおいては、あの「闇の魔術師」の異名を持つディルクが再び動き始めていたのである。

 そのターゲットを、このエスヴァリーク帝国に定めて……。

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