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357.スケジュール変更

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 既に日は沈み、真夜中になったフィランダー城の皇帝執務室。そこにはこの部屋の主であるジェラルドを始め、レウス、ティーナ、ドリスの三人が集まっていた。


「全く……ドラゴン討伐前にこんな事になっちまうなんてな」

「……すまない」


 これじゃあ前途多難だぜ、と腕組みをして眉間にしわを寄せるジェラルドは、執務室の椅子にギシリと音を立ててもたれ掛かった。

 その皇帝の目の前で、レウスとヒルトン姉妹は悔しさと気まずさが入り混じった表情をしていた。

 特にレウスは、自分がヒルトン姉妹と食事をせずにまっすぐ帰っていればみんなを助けられたかも知れない……と後悔までしている。

 こんな自分に、騎士団に対して来るのが遅いと責める資格があるのだろうか……いや、無いだろう。

 レウスのそんな様子を見て、椅子から少しだけ身を起こして姿勢を正したエスヴァリークの皇帝は、他のメンバー達の状態についてレウスに伝える。


「お前が回復魔術を掛けてくれたおかげで致命傷までは至っていなかったが、それでも出血が酷いメンバーも居るから明後日の出発は見送りだ。それから傷が浅いサィードに事情を聴いた所、どうやら魔術を使えない薬がお前達の体内に回っているらしいな?」

「え? 私も姉様も使えましたけど……」


 キョトンとした顔でそう呟くドリスに対し、そうじゃなくて……とジェラルドは眉間を揉む。


「違う違う。お前達が駆け付けた時に既に倒れていたって言うメンバーの話だよ」

「あ、そっちの話ですか?」

「そーだよ。で、ニーヴァスが現場に残っていた揚げ物に入っていた薬を魔術師達に渡して、成分を分析して貰っているからもう少し待っていろ。後はフォンがお前達の捕まえた二人に対しての事情聴取を進めている最中だ」


 それを聞いたティーナが、一歩前に踏み出して二人の事情聴取の結果を尋ねる。


「何か話しましたか?」

「いいや、さっぱりだ。犯人には黙秘権があるし、騎士団もその撃った時の様子を実際に見た訳じゃねえから否定されるのも視野に入れてある」

「ちょ、ちょっと待って下さいよ! 私や姉様はあんな男女なんて知りませんよ!」

「それは勿論分かってるよ。けどなあ、犯人が喋らねえ事にはどうしようも無えんだ。幾ら状況証拠が揃っていたってどうにもならないケースもある。今回の事件は正直、あいつ等を家に入れちまったお前等にも責任があるんじゃねえかと思っててよ」

「はっ?」

「ちょっと待ってくれ。俺はまだしもこの姉妹には何の関係も無い」


 レウスがそう言うと、ジェラルドは椅子から立ち上がって続ける。


「そうだな。だが俺の言う「お前等」は、お前とその仲間達の話だ」

「……」

「どうせドラゴンに防壁魔術は効かないし、このまま北へ向かってくれ……とは言えねえ。体調だって万全にして行かなきゃならねえんだ。それなのにあのハンドガンとやらを使って屋敷を襲撃されたとなったら、余りにも危機管理が無さ過ぎると思わねえか?」

「……ああ、それは分かってる……」

「まあ、お前を責めるんじゃなくて本来はこの事件を引き起こした奴が悪いんだから、本来はもっとそっちを責めるべきなんだって俺も分かってるよ。けど、お前達の仲間は武術大会の勝利の余韻か何かで浮かれていたかも知れねえが、あの揚げ物を貰った事を始めとして油断が過ぎたんじゃねえのか?」


 それを自分に言われても困る。

 レウスはそう言いたかったが、自分もヒルトン姉妹と一緒に夕飯を食べに行っていて屋敷に戻るのが遅くなった結果、ギリギリになって食い止めただけに留まった。

 なので自分にも責任があると感じてしまっている以上、何も言い返せないのが現状だった。

 しかし、無言で唇をかんで俯いたままのレウスの斜め後ろに控えていたティーナからジェラルドに対して異議を申し立てる声が飛んだ。


「陛下、お言葉ですが」

「何だ?」

「確かに今回の件は油断が過ぎたのかも知れません。ですが今はレウスばかりでは無く、他のメンバーの話も聞いてからの指導にしませんか?」

「それは分かってるよ。だったら今からお前達の為に用意した部屋に向かうぞ。回復魔術を掛け続けているからかなり回復しているとは思うが、さっきも言った通り明後日の出発は無理だ。明後日の翌日にするぞ。明日は事情聴取に変更するから、今はとにかくこのフィランダー城の中で休め。外に出るのは許さねえからな」


 今日は武術大会を始め、エキシビションマッチ等でとにかく色々バタバタしていて忙しなかったのもあって、与えられた個室のベッドの中でレウスは早々に眠りにつく事にする。


(この城の医務室に運ばれて来る時にサィードが話していた内容では、ユフリーの服の中からそのハンドガンを見つけたって言っていたからな。だったらあの女がハンドガンを持っていたって事は、それを取り上げるチャンスは幾らでもあった筈なんだ)


 なのにどうしてその時点でハンドガンを取り上げずに、まんまと撃たれてしまう羽目になってしまったのか?

 そこがどうしても分からないレウスだが、この疲れている頭で考えてもどうしようも無いと判断して明日また、サィードを始めとするパーティーメンバーに色々聞いてみようと考えながら意識を飛ばした。

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