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33.カルヴィスの城下町にて

 リーフォセリア国王の住んでいる、インハルト城を中心としたリーフォセリアの王都カルヴィスの城下町。

 王国のトレードカラーである紫を基調とした建物が至る所に立ち並び、メインストリートを始めとして至る所で人々が闊歩している。

 そんな賑やかなカルヴィスを筆頭に、世界最大級と言われている広大な国土を持っているのがリーフォセリア王国である。

 大きな山が国の中央にあるのが特徴で、カルヴィスはその山の西の麓に位置している。

 エンヴィルーク・アンフェレイアの世界地図では左上に存在し、東のソルイール帝国とは砂漠で区切られているのが特徴。主に軍事力でその国力を拡大しており、レウスやアレット、エルザが授業を受けている騎士学院やギルベルトが団長を務めているリーフォセリア王国騎士団の本部がここに置かれている事からも分かる通り、質の高い騎士団員達を育成して今でも世界で一、二を争う軍事力を有しているのだ。


(……の、割にはあっさりあの赤毛の男女に騎士学院のセキュリティを突破されて侵入されたりしているんだよな)


 学院に設置されている図書室で歴史書をペラペラとめくり、この国の成り立ちについて改めて勉強していたレウスは心の中で呆れていた。

 アレットから聞いた話によれば、情報収集の面でもこのカルヴィスで行えば手に入らない情報は無いと言われる位らしい。

 その広大な領土ゆえ、観光目的でこの国に入国して来る旅行者や仕事目的で入国して来る傭兵達からもたらされる情報を、リーフォセリア王国では有益なものになるに従って多くの料金を支払う「情報の買い取り制」と言う形の情報網を持っている。

 また、自国の領土では海沿いも全て掌握しているので、レウスの住んでいる田舎町からもっともっと西側に行った所にある村や海沿いの町の様に、農業や漁業も盛んな一面を持っているまさにオールラウンドタイプの王国であると言える。


 しかし、レウスがまだアークトゥルス時代だった五百年以上前には、ドラゴン討伐が第一の目的であった為に色々な国を回っており、この王国が出来ていたかどうかも記憶が曖昧である。

 なので今、彼はこの国の事をもっと良く知っておくべきだろうと思い立って図書室までやって来た訳だが、本で知る事の出来る情報には限度がある。


(うーん……良しっ!)


 だったら実際にカルヴィスの城下町に出てみて、もっと色々と知っておくのも良いだろう。

 そう考えたレウスはさっそく行動を開始する。

 今日の授業は午前中だけだったので、図書室で本を読んでいた午後からはフリーになっているのもあって、外出するにはうってつけ。

 それに学院の中ばかりに居ても行動範囲がマンネリになりがちになりそうなので、気分転換も兼ねて外出許可書を届け出てからカルヴィスの街中へと繰り出すレウス。

 ただし、武器や魔術の使用は国民の模範となる騎士の卵である以上は厳しく制限されているので、レウスは愛用の槍を護身用にしか持つ事が出来ない。


(別に俺から喧嘩を吹っ掛けようとか、そんな事は思っちゃいないけど……何か腑に落ちないよな)


 仮にも前世では勇者と呼ばれた身であるので勿論その辺りの自覚は持っているレウスだが、そんな彼も最初はただの人間だったので、こうした気分転換の散策は大事である。

 このカルヴィスに来てからすぐにセバクターと戦ったり、学院に編入させられたり、騎士団長のギルベルトの所に呼び出されてまた戦ったりと慌ただしかったレウスにとっては尚更で、来て日が浅い筈なのに随分中身の濃い経験ばかりしている気がする。

 それだけに、ゆっくりと街中を見て回れるのはありがたかった。


(これから先の事はどうなるか分からないが、ゆっくり出来る時にゆっくりしておかなかったら自分が潰れてしまうかも知れないからな)


 メインストリート、歓楽街、スラム街、下町、商店街と街の至る所を見て回り、腹が減ったので商店街のパン屋で美味しそうなパンを購入。

 しかし、商店街の外れにある広場のベンチに座って買ったパンをかじるレウスのそばに、ゆったりとした足取りで近づいて来る人間が一人。


「お久し振りです、レウスさん」

「……え?」


 ふと声のする方を見てみると、そこには薄緑の襟付きの上着に、黒の縦ストライプ柄の白いワイシャツを着込んで、頭には紳士が愛用している様な濃いグレーの帽子を被っている男が一人。

 キザっぽく、自分の隣に足を組んで座ってそう話しかけて来たのだが、相手は自分の事を知っている様子なのにレウスは彼に見覚えが無かった。


「ん……えーと、すまないけど誰だっけ? 何処かで会ったっけ?」

「分かりませんか? 中央でお会いしたでしょう?」

「中央?」

「ほら、王国騎士団の中央本部ですよ」


 その情報を聞き、レウスは必死に自分の記憶を辿る。

 そして唐突に、目の前に居るこの男と一致する人物を思い出して叫び声を上げた。


「……あー!? アンリ!?」


 えー!? とレウスが驚くのも無理は無い程に服装も雰囲気も変わっている、ギルベルトの居場所まで二回も案内してくれた、あの若い騎士団員のアンリだったのである。

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