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355.帰宅した救世主

 フォンへの報告を終えたレウスとヒルトン姉妹が、この過激な侵入者が逃亡する前にギリギリで帰宅したのである。

 そしてこの倒れているセバクターやサィードを始めとするパーティーメンバー達の惨状と、この侵入者達の風貌を見て何があったのかをすぐに悟る三人。


「そうか……お前達がステーキ屋の近くの路地裏で起こったって言う殺人事件の犯人だな?」

「それで無くても、こうやってこの屋敷に乗り込んでこんなにしちゃった以上は色々と逮捕理由になりそうよねー」

「そうですね。さぁ、私達と一緒にフィランダー城へと行きますよ。そして洗いざらい全てを話して貰わなければなりませんね」


 だが今しがた青髪の男が言った通り、侵入者の二人はここでこの三人も纏めて倒して逃走するつもりらしい。


「青い髪の毛をセンター分けにした若い男だったって陛下からも聞いたし、俺達に対して何かをしようとしていたんだろ。でも残念だったな。お前達の目的は既にジェラルド陛下も知っているんだぞ」

「うるせえよ! こうなったら三人ともぶっ殺してやるぜ……ユフリーはそっちの女二人をやれ!!」


 青髪の男の声を合図にして、その男はレウスに向かってハンドガンの銃口を向けて発砲を開始する。

 その一方でユフリーはドリスとティーナのヒルトン姉妹に対し、同じくハンドガンの銃口を向けて口を開く。


「貴女達も決勝トーナメントに出ていたわね。確か名字が一緒だから姉妹の冒険者でドリスとティーナ……だったかしら?」

「あら、私達の事を知っているって事は……姉様、どうやらこの女はあのトーナメントを見に来ていた観客らしいわよ」

「そうですね。しかしこの場合は私達の敵。こうなれば実力行使で大人しくして貰うだけです」


 そう言いつつグルリとリビングの状況を見渡し、何があったのかを大まかに把握するティーナ。


「この状況……この料理の残り……大方一緒に食事をして、その流れで襲撃をしたって感じですね」

「でも姉様、向こうの方から石鹸の香りが漂って来ているわよ」

「だったらお風呂にも入っていたんでしょうね。この状況から察するに、貴女はお客としてこの屋敷に入った。そして料理やお風呂をここに倒れている人達と共にして打ち解けて、その流れで油断した所を襲撃したんでしょうね」

「ふうん、なかなか洞察力が良いのね。その通りよ」


 ティーナの推理を聞いてあっさりと自分の犯行だと認めたユフリーに対し、ドリスから何処か呆れた様な疑問の声が。


「でもさ、その鉄の道具で何かをしたんだろうって言うのは分かるけど……いっぺんに殺すなら料理に毒でも入れて殺せば良かったんじゃない?」

「そうですわね。非効率にも程があるかと」


 姉のティーナも妹の意見に同調するが、フッと不敵に笑って答えるユフリー。


「馬鹿ね、毒で殺しちゃったらこのハンドガンの威力がテスト出来ないでしょ?」

「テスト……テストにしては少々やり過ぎですわね」

「そうね。こうなったら絶対に貴女は逃がさないわ。姉様と共に貴女を捕まえる!!」

「出来るものならやってみなさいよっ!!」


 ユフリーが引き金に掛けた指に力を籠め、魔力の弾丸を発射する。

 だが、その弾丸は二人の魔術防壁によってあっさりとブロックされてしまった。


「……っ!?」

「おや、それで終わりですか?」

「だったら姉様、今度はこっちから行くわよ!!」


 そう……このヒルトン姉妹とレウスの三人はこの屋敷で食事をしていない。

 つまりユフリーが持って来たあの揚げ物の詰め合わせを食べていないので、魔術が普通に使える状態なのだ。

 そしてこの屋敷に入る前に、中の様子に違和感を覚えたレウスが玄関の様子を見てペーテルやソランジュが倒れているのを確認。


「おい、お前等二人は裏に回れ。中からまだ何か争っている音がするからな」

「う……うん、分かったわ!!」

「貴女はどうするの?」

「この倒れている人間達に出来うる限りの回復魔術を掛けてから中に向かう。お前達は裏から中の様子を探ってくれ。万が一に備えて防壁魔術を掛けてから向かうんだ」

「分かりました」


 そうして防壁魔術を自分達に掛けてやって来たヒルトン姉妹は、銃撃が通用せずに呆気に取られて隙だらけのユフリーに、お得意の連係プレイで立ち向かう。

 今まで出来過ぎる位に上手く行っていた事で、普通に防壁魔術が掛けられる人間の存在を忘れていたユフリーは向かって来たドリスに対して、苦し紛れの前蹴りを放つ。

 しかしそれはあっさりとかわされて背後に回り込んで背中を蹴られ、蹴られて前によろけた所に居たティーナにも前蹴りを食らい、更にはティーナのロングソードの柄で頭をぶん殴られるユフリー。


「痛ああっ!?」

「ふん!!」


 とどめとばかりにドリスに足払いを掛けられ、空中できりもみ回転をしたユフリーはそのまま料理の残りが乗っているテーブルに派手に落下し、料理ごとテーブルを粉砕してノックアウトした。


「姉様、こいつをさっさと縛ってレウスを手伝いましょう!」

「いえ……それよりもこの倒れている二人の男の方の治療が先ですわ!」

「……そうね!!」


 今回のエスヴァリーク武術大会優勝のレウスだったら、そう簡単に負ける事は無いだろう。

 ヒルトン姉妹はそう信じてユフリーを手近なカーテンで縛り上げた後、それぞれ傷を負ったセバクターとサィードに回復魔術を掛け始めた。

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