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345.エキシビションマッチ

「そいつも恐らくカシュラーゼの奴だろう。ハンドガンなんて武器はこの世の中に出回っていないからな。あるいはカシュラーゼからその仕事を依頼された傭兵だろうか?」

「その線もあるな。捜査は引き続きフォンとニーヴァスが率いる特殊部隊に任せるから、お前達は気にしなくても大丈夫だぜ」

「……特殊部隊?」

「あっ」


 しまった、と思った時にはもう遅かった。

 レウスはジェラルドの発した「特殊部隊」と言う単語をしっかりと聞いてしまったので、そこに反応しない訳が無かった。

 しかし、今はこの三人しかここに居ない訳だし……と聞かれてしまった以上は話しておく必要があるだろうとジェラルドは考える。


「あー……ええと、エスヴァリークの騎士団には特殊部隊ってのがあるんだ。隠密行動や潜入捜査等を主な任務としている部隊でな。このフォンが隊長で、一緒に荷物検査と身体検査を担当した白い髪のニーヴァスが副隊長。この二人を中心に動く部隊の事さ」

「なら、密偵とかも動かせる部隊だってのか?」

「正確には密偵の任務が中心だな。それこそセバクターがやっていた様に他国への潜入をしたり、暗躍する裏の世界の組織に潜入したり、他国の重要人物がエスヴァリークに来た時は正規の騎士団員のバックアップに回ったりとかする」

「なるほどな」


 だったら特殊部隊と言われるのも納得だ、と頷いたレウスに対してジェラルドは釘を刺しておく。


「言っておくが、誰にも言うんじゃねえぞ?」

「言わないよ別に。言っても何のメリットも無いし」

「なら良い。じゃあエキシビションマッチと行こうか」

「まだやるつもりなのか?」

「当たり前だ。過去の話をするのと合わせてその為にここに残って貰ったんだからな」


 どうやら拒否権は無い様なので、レウスはこうなったら一度だけやってやるか……と渋々フィランダー城の中にある鍛錬場へ向かった。

 そこは多少狭いものの、コロシアムと同じ石舞台もあってエキシビションマッチには最適だ。


「審判は俺がやります。勝負は一回。相手の武器を飛ばすか、相手に参ったと言わせる。またはこの舞台から相手を落とせれば勝ち。相手を気絶させても良いけど、殺すのまでは無し。そこまでやらないと思いますけど、一応ルールとして伝えておきます」

「わーってるよ。御前も良いな?」


 ジェラルドの確認にレウスは無言で頷き、それを見たフォンが合図を出した。


「じゃあ行きますよ。始め!」


 フォンの声で、かつての勇者の一人とエスヴァリーク帝国皇帝とのエキシビションマッチがスタート。

 槍を使って、バトルアックスのジェラルド相手に奮戦するレウス。しかし相手もなかなかの実力者なので気は抜けない。

 相手が振り被って来るバトルアックスを避けて、そのまま槍を薙ぎ払うがこれはガードされる。

 そこでレウスは一旦距離を取って、槍のリーチを活かしてじわじわと攻める戦法で行こうとする。


(こしゃくな……!!)


 その戦法に気が付いたジェラルドは奥歯をかみ締めるが、これは武器の特性上仕方の無い事である。


(それにしても、俺と互角にやり合える程の奴が居るとはな! 流石は五百年前の勇者って訳か……)


 見た目的にどちらかと言えば地味な風貌のジェラルドだが、武闘派揃いの帝国を治めているだけあって腕は本物である。

 しかし、目の前のレウスはそんな自分と互角に戦っているのだと彼は痛感させられていた。

 そしてレウスもまた、目の前の皇帝はかなりの腕だと少し打ち合っただけでも分かった。


(流石、武術大会を年に四回も開催する国のトップなだけの事はあるな)


 それでも、どちらもこの勝負で負ける訳には行かない。

 槍を突き出してじわじわ攻めるレウスであるが、それでもジェラルドは怯む事無くバトルアックスで対抗する。


「はっ!」


 バトルアックスを突き出し、槍の振り払われた瞬間を狙うジェラルド。それを肩を掠める様にギリギリで避けるレウス。

 勝負としては全くの互角であるが、いずれ決着が着く時は必ず来る。


(余り体力を消耗させるのもまずいな)


 だったらとにかくこの戦いは終わらせなければいけない。

 相手もなかなかの使い手であるのは十分レウスも承知の上であるが、それでも人間であるが故に何処かで隙が出て来る筈である。


(こっちから動いてみるか!)


 隙を狙って待ち続けるのでは無く、ジェラルドの隙を生み出せる様に仕掛けに行く。


「ふん、ふん、ふん!」


 槍のリーチを活かした息もつかせぬ連続突きを仕掛け、そのまま石舞台の端へと押しやって行く。


「ぐっ!?」


 後ろが無い事を痛感したジェラルドは、槍の突き出して来る軌道をその動体視力で見極めるのでは無く、しゃがみ込んでレウスへとタックルを繰り出した。


「うあっ!?」


 馬乗りになられてマウントポジションを取られてしまうレウスだが、槍から一旦手を離してジェラルドの頭を掴んで思いっ切り頭突き。


「ぐがっ!?」


 怯んだ所で両足で蹴り上げ、何とか窮地を脱出し槍を再度手に取る。そのまま距離を取ってジェラルドを見据え、見据えられたジェラルドも同じくレウスを見据え返した。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」


 レウスとジェラルドはお互いに荒い息を吐きながら、相手を見据えて武器を構える。恐らく次の攻撃で最後になるだろう。

 お互いにそう考えた二人は、一拍置いて同時に駆け出した。


「やあああっ!」

「おらあああっ!」


 レウスが槍を振るうが、ジェラルドはその槍の下を潜って回避。そのまま起き上がって振り向き様にバトルアックスを薙ぎ払うが、それをレウスは力を込めて槍の柄でしっかりガード。

 そのまま力を込めてバトルアックスを弾き、隙が出来た所でジェラルドの首目掛けて槍の先端を突き出した。


「っ……!!」

「そこまでっ! 勝者はレウスだ」


 実戦であれば首を刺されて終わっていた……とこの三人が同時に察した事で、エキシビションマッチもレウスが制したのである。

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