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344.残して行った証拠

「聞いた事あるか? カシュラーゼで新たな兵器の開発が噂されていると」

「ああ、それなら聞いた事がある。確かハンドガンと言う物だったか?」

「そう、それだ。知っているなら話は早いな。俺とフォンもこの話を聞いている。お前の仲間を送って行ったニーヴァスもな」


 ハンドガンの話はお互い耳に入れているらしく、路地裏で五人の男女が殺された変死事件の事も噂になっていた。そのハンドガンが原因で大量殺人が起きたのだとしたら、既にこの帝国は狙われている事になってしまう。

 しかし、次にジェラルドの口から出て来た話はレウスには初耳だった。


「ならこれは知っているか? セバクターの家にそのハンドガンと思わしき武器を持った侵入者が現われた事を」

「えっ? 何だそれ……どう言う事だよ?」


 レウスのそのリアクションを見たジェラルドは「やっぱりな」と頷き、そばに控えているフォンに説明を求める。


「おい、フォン。説明してやってくれ」

「かしこまりました。セバクターの家に昨日の予選を行なっている時間帯に侵入者が現われた。お前の付き添いで来ていたペーテルが鍵を無くしたと言って騎士団に了承を取って屋敷まで探しに行った所、偶然にもその男と鉢合わせしたらしい」

「その男がセバクターの屋敷に侵入したって言うのか。何でまた?」

「どうやらお前達に何かをなすりつけようとしていたらしいんだがな」

「え、え?」

「だからええと……あ、そうそうこれだ。このセバクターの屋敷から回収したって言う書類が全ての証拠だから、まずは目を通してくれ。俺は証拠物件を持って来ますから」

「ああ、頼むぜ」


 フォンが出て行って二人きりになった皇帝の執務室の中で、手渡された書類をパラパラとめくってみるレウスはその内容に驚愕していた。


「……」

「どうだ、読んでみた感想は?」

「まだ半信半疑だが……少なくともハンドガンとやらの仕組みはセバクターから聞いた内容と一致するぞ」

「何だと? セバクターからだって!?」


 予想もしなかったレウスの答えに今度はジェラルドが驚くものの、レウスはセバクターがリーフォセリアの騎士学院爆破事件の犯人を捜してカシュラーゼの手先になった振りをしていた事を含めて、その経緯でハンドガンに関する話を聞いたあの流れをジェラルドに伝えた。


「そうかそうか。だったらしばらくは色々とそのハンドガンとやらについてあのセバクターに教えて貰わなきゃならねえな。で……その書類を読んでみた感想は?」

「今言った通りだが、セバクターが話していた内容と一致する。だが分からないのは何故この書類がセバクターの家に置かれていたのかと言う事だ。さっきあんたはこう言っていた。俺達に対して何かをなすりつけようとしていたらしいとな」

「その線が一番高い。ペーテルが言うには、こんな書類もパーツの欠片も朝その屋敷を出る時には全く無かったって話だから、その男が置いて行ったって線で間違い無いだろうって」

「パーツの欠片?」

「ああ。さっきフォンが出て行っただろ、証拠物件を持って来るってさ。それがそのパーツの欠片の事なんだぜ」


 そう言えばそんな事を言っていたっけ、とレウスは思い返しながらも出て行ったフォンがまだ戻って来る気配は無いので、先にそのセバクターの屋敷に侵入していた男について聞いてみる。


「そうなのか。それでその男ってのはどんな奴だったんだ?」

「青い髪の毛をセンター分けにした若い男だったって話だ。服装は良く覚えていないんだが、そんなにゴテゴテした派手なもんじゃなかったらしい。それから例のハンドガンらしい武器を使ってペーテルを攻撃したらしいんだ」

「ペーテルは無事だったのか?」

「ああ、全然ピンピンしてたぜ。魔術防壁でそのエネルギーボールを防いで、屋敷に飾ってあった剣で反撃したんだとよ。その男は左手にショートソードも持っていたらしいんだが、ペーテルの相手じゃなかったそうだ」

「……あのおっさん、一体何者なんだろうな」


 セバクターでも彼の経歴については良く知らないらしいので、いずれ知る時が来るのだろうかと思うレウスの耳にコンコンとノックの音が響いた。


「お待たせ致しました陛下、こちらが例の証拠物件になります」

「あーご苦労。アークトゥルス、これがそのパーツの欠片だ」

「これが……」


 ズシリと重い金属製のパーツだが、これに何かしらのパーツを組み合わせてハンドガンとやらが出来上がるのだろうとレウスには予想がつく。


「こいつとその書類を一緒に屋敷に置く事で、お前達がハンドガンを所持していたって事にしたかったんだろう。それから路地裏で起こった変死事件の犯人にも仕立て上げようとしたのかも知れねえぜ」

「何の為にそんな事を?」

「さぁな。だが少なくともお前達の所に騎士団員が向かってその証拠と一緒に居るのを見られたら、お前達が犯人にされるのは間違い無えだろうからな。お前達を罠にはめてえ奴が居るって事なんだろーよ」


 謎の青い髪の男に、自分達に罪をなすりつけようとする為に置かれたと思わしき証拠の数々。

 直感的にだがレウスにはこの時、これがカシュラーゼの仕業だとしか思えなかった。

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