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332.第四試合(サイカvsセバクター)

「私よ。今は第三試合までが終わったんだけど、予選を突破した八人の内の四人は例のアークトゥルスの生まれ変わりだって言う男が率いている、パーティーのメンバーの様ね」

『そうか、分かった。こっちはこっちで城下町の外れの空き家に身を隠している。適当な所で切り上げてこっちに来てくれないか?』

「えっ……何でそんな所に居るのよ?」


 昨日の内に、あのセバクターと言う男の屋敷に偽の資料を仕込んでさっさと撤退している筈の男……自分と一時的にコンビを組んで行動しているドゥルシラが妙な事を言い出したので、ユフリーは耳を疑う。

 自分がこのコロシアムでレウス達の戦いを観戦して戦力を分析している間に、ソルイールからの援軍として送り込まれた彼が偽の資料を屋鋪に置いてレウスたちに罪をなすりつける。

 そして、合流場所として指定している筈のユディソスから少し離れた森の中で待機している筈なのに、何が一体どうしてそんな事になってしまっているのか?



 ◇



 ユフリーにはまるで理解が出来ない中で、マウデル騎士学院の先輩後輩同士のバトルはこうして幕を閉じた。

 だが、まだバトルをやっていない組み合わせが一つ。それは決勝トーナメント一回戦、第四組目の戦いである。

 そして戦うその二人は……。


「個人的に恨みは無いが、ここは勝負と割り切って本気で行く」

「良いわね。私は貴方とやりあうのは初めてだけど手加減出来ませんよ」


 最後の戦いも、レウスがリーダーを務めているパーティーのメンバー同士になった。

 そして世界各地を冒険した経験のある冒険者同士の戦いでもある。


「決勝トーナメント一回戦の最後……第四試合は、セバクター・ソディー・ジレイディール対サイカ・エステル・エリクソン!! それでは……始めっ!!」


 騎士団員によって合図が出され、ほぼ同時に二人は動く。

 パワーは男のセバクターが上で、スピードはアクロバティックな動きを得意とするサイカが上。実戦経験の長さは同じ位である。

 だがこの二人の戦い方はその性格と同じく結構違う。

 持ち前のアクロバティックな動きで相手を翻弄する戦い方なのがサイカ。対してセバクターは相手が予想しない嫌らしいタイミングだったり、相手の隙を的確に突く様な剣術が特徴的だ。

 スピードはお互いに見切れない程では無いが、セバクターに対して何だかタイミングが噛み合わないサイカが苦戦気味である。


(む……なかなかやり難いわね……!!)


 肩透かしを食らった様なタイミングで攻撃されるので、顔には出さないものの焦りの色が心の中に生まれるサイカ。

 だったら自分が勝負出来る所と言えば……と考えて、同じくトリッキーではあるものの方向性の違うソランジュの様な戦い方に切り替える事に決めた。

 それを活かせる様な戦法を取りたいが、今までの自分のスタイルの癖がなかなか抜けない上にセバクターの剣術に押され気味だ。


(あれしか『勝ち』には持って行けそうに無いから……。そこまではじっと我慢ね!!)


 まともに刃を合わせるのは危険だと判断し、一つ戦略を思いついていたサイカは我慢する。

 セバクターが知らないトリッキーなスタイルを彼に仕掛けて行くまでは、しっかりとセバクターのロングソードの軌道を読み、そこから反撃に出て行く。

 だが、そんなサイカを嘲笑うかの様に一旦距離を取ったセバクターは、サイカの腕の良さに驚きながらもまだまだ余裕がある様な表情を浮かべる。


「剣筋は良いが、詰めが甘い」


 ロングソードを振り被って来るセバクターの攻撃を横に避けるサイカだったが、そのまま避けた彼にミドルキックを放つセバクター。


「うっ!?」


 咄嗟に自分の手を引っ込め、横っ飛びからの回転受身でそのキックをギリギリでかわしたサイカ。

 その後にまたセバクターがロングソードを振るうので、片膝をついてそれを受け止めてから足払いを繰り出すサイカ。

 セバクターもそれをジャンプで回避して、僅かだがその表情に感心の色が見て取れる。


「面白い戦い方だな」

「……」


 自分がセバクターの隙を突けるのはこれしか無いと考えるサイカは、何を言われようがお構い無しだ。

 答えようとしないサイカに、セバクターは再びロングソードを振り被る。それを今度はサイカが真っ正面から受け止めた。

 だがセバクターはそれをスッと左に流して彼女のバランスを崩し、よろけたサイカの手元を素早く正確に狙う。


「……っ!」


 ガッと鈍い音と共に、狙われたサイカのシャムシールが手から弾け飛ぶ。

 だが、その瞬間サイカはセバクターの予想外の攻撃に出た。


「ふっ……!!」

「――!」


 ほぼ反射的に、シャムシールを飛ばされた勢いで時計回りに身体を回転させて右足で回し蹴りを繰り出すサイカ。

 咄嗟にセバクターは回し蹴りを屈んで避けようとしたものの、サイカの本当の狙いはセバクターでは無かった。セバクターのロングソードを握っている右手を蹴って、同じ様に彼の手からも武器がすっぽ抜けた。

 その二つの武器はクルクルと回転しながら飛んで行き、下の砂地に突き刺さる。そう、彼女の本当の狙いはセバクターのロングソードだったのだ。

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