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330.第二試合(ソランジュvsティーナ)

 余りにも呆気無く決まってしまった勝負。

 しかし、ここはまだ通過点であるとレウスは思っていた。


(エネルギーを余り使わなくて本当に良かった。まさか初戦の相手が顔見知りだとは思ってもみなかったが、それはそれでこれはこれだ)


 初戦でエネルギーを使い過ぎてしまうと次の対戦にも響いてしまうので、エネルギーの消費が少ない内にあの生意気な妹のドリスを倒せて本当に良かった。

 そして残りのメンバーは無事に予選を突破出来たのだろうか?

 もしかしたら予選落ちの結果に終わってしまい、このコロシアムの中の何処かで戦いを見ていてくれたのでは無いか?

 そう考えるレウスが控え室に戻ったおよそ三十秒後、次の選手達がコロシアムの石舞台に案内されていた。


(私の相手は一体誰になるんだ?)


 短めのロングソードを携えて、イーディクト帝国出身のソランジュは騎士団員に案内されて石舞台の上へと出た。

 その舞台の上には何と、以前ギルドの建物で会った事のある顔の人物が居たのだ!


「あら、貴女は確か……」

「お、お主はええとヒルトン姉妹の姉の方……だったか?」

「覚えて頂いて光栄ですわ。ティーナです」


 ソランジュの相手。

 それは盗賊団を壊滅させたとして一躍有名になったヒルトン姉妹の姉の方である、ティーナだった。

 まさか顔見知りとバトルする事になるなんて思ってもいなかったソランジュだが、その考えはこの戦いの一つ前に戦ったレウスも同じ気持ちだったのだ。



「決勝トーナメント一回戦の第二試合は、ソランジュ・ジョージ・グラン対ティーナ・オリヴィア・ヒルトン!! それでは……始めっ!!」


 審判役の騎士団員の合図でバトルがスタート。

 相手はかなりの実力者だと聞いているが、それでも自分の持てる総力を駆使してティーナに立ち向かうソランジュ。

 しかしティーナもティーナで、伊達に盗賊団を壊滅させて有名になった訳では無い。

 人間や獣人は勿論、魔物との戦いの経験もあるし、冒険者として身体中に幾つもの傷を負って来た。

 ティーナの得意武器は腰に提げているロングソードなのだが、その反面ソランジュやサイカの得意とする格闘戦に対しては、ハッキリ言って「野蛮」と言うイメージしか持っていない。

 実際にロングソードを打ち合う間にキックを繰り出すソランジュだが、ティーナは顔をしかめる。


「野蛮な戦い方をされるのですね」

「野蛮?」

「ええ、私はそう言う戦い方をする方は好きでは無いんです」

「お主……あの妹と性格がまるっきり正反対なのだな」

「それは良く言われますよ」


 格闘戦では下段回し蹴り等を繰り出す時に地面に手を着く事もあるのだが、ティーナの中では地面に手を触れるのも品の無いイメージがあるらしい。

 それでもソランジュはこう言った戦い方しか出来ないのだから、今更何を言われようがどうしようも無い。

 ソランジュは打撃技や蹴り技だけで無く、関節技や投げ技もある程度習得しているので格闘戦にはそれなりにプライドを持っているのだ。

 今回は同じロングソードが相手なので、なるべく同じロングソードで決着をつけようとするものの……。


「はっ、はぁっ!!」


 ソランジュより長いリーチと素早い突き主体の攻撃を活かし、自分の間合いを保ったままティーナは優位にバトルを進める。

 ジリジリと後ろに下がるソランジュだが、このままではいずれ舞台から落とされて負けに持ち込まれてしまうだろう。

 そこで意を決してソランジュはチャンスを窺う。


(勝負は……)


 相変わらず突き主体で迫って来るティーナの攻撃に、僅かだがチャンスが見える時。

 それは……。


(そこだ!)


 ティーナの使うロングソードは突き攻撃のみに特化した武器では無く、薙ぎ払いや片手での振り下ろしも可能である。

 なのでたまに突き攻撃の中に横への薙ぎ払いをティーナは組み込んで来るのだが、その薙ぎ払いが繰り出されて来た瞬間に反射神経を活かしてソランジュは身体を屈め、一気に下段からティーナの懐に飛び込む。


「くっ……」


 今度はソランジュの間合いになった二人の距離。

 今までの防戦一方の鬱憤を晴らすかの様に、ガラ空きのティーナのボディ目掛けてロングソードのラッシュを叩き込む。

 それからティーナの首の後ろに腕を回して抱え込み、膝蹴りを連続で繰り出してダメージを与える。また、頭突きもティーナの顔面に叩き込んでからローキックでティーナの膝の関節を蹴り付け、体勢を崩させる。


「ふんっ!!」


 ソランジュはとどめと言わんばかりに、ティーナの顔面目掛けて飛び膝蹴りを繰り出したが、何とティーナはそこで上体を咄嗟に後ろに反らしてその飛び膝蹴りを回避。

 それと同時に繰り出されたソランジュの膝を腕でグイっと下に押し込み、攻撃を強引に回避。


「甘いですよ」

「えっ……うおわっ!?」


 ポツリと呟かれたティーナのそんなセリフに。ソランジュの動きが一瞬止まる。その動きが止まった所に、ティーナが右腕でソランジュの膝を抱え込んでグイっと投げ飛ばした。

 確かに格闘戦に野蛮なイメージは持っているのだが、ティーナも体術を「全くやらない」訳では無い。

 投げられたソランジュは何とか舞台の上から落ちずに済んだものの、起き上がろうとした所にティーナの前蹴りが入って更にぶっ飛ばされる。


「ぐえあ!?」

「これで終わりです!」


 ソランジュはもう一度立ち上がったものの、とどめにティーナからの右ハイキックが側頭部に入って舞台の上にまた倒れ込んでしまう。


「ぐっ……ぐぐ……うっ、うう……」


 何とか起き上がろうとしたがソランジュは身体に力が入らず、審判役の騎士団員がこれ以上は危険だと言う事でストップを掛けた。


「そこまで! 勝者、ティーナ・オリヴィア・ヒルトン!!」

「ちょっとやり過ぎたかしら……? でも、勝負は勝負。この勝負は私の勝ちです」

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