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328.本戦日の朝

 朝日の光が、明かり取りの窓から差し込んで来ている。

 いよいよ決勝トーナメント……それも戦う相手が全く分からないトーナメントがこれから始まるのだ、とレウスはベッドから起き上がりながらふあーと伸びをする。


(良い天気になったなー……)


 こんなに良い天気だからきっと何か良い事があるかも知れない。それでも何かが起こるかも知れない。

 だからこそ油断してはいけない。

 レウスはそう心の中で唱えつつ、配膳される朝食を待ちながら身体を温めておく事にする。

 体調面は万全。心の準備も申し分無い。相手がどんな武器を持っていようと、どんな体格だろうと絶対に逃げない。


(地元に居て、戦う事に疲れたって言っていた頃の俺と比べたらもう別人だよな)


 日数的にはそこまで遠い昔の話でも無い筈なのに、既に何か月も経過している様に思えてしまうのは気のせいであろうか?

 多分気のせいだ。

 今まで色々な国を渡り歩いて来た、と言うよりも渡り歩かざるを得なかったと言う方が正しい自分の旅路は、様々なトラブルを巻き起こした事もあったし巻き込まれた事もあった。

 だからかなり時間が経っている様に思えてしまうレウスの元に、騎士団員からの声が掛けられて朝食と本戦日の競技についてのルールが書かれている紙が運び込まれて来た。


(予選を通過出来るのは八人で、その内の何人がドラゴン討伐に向かえるのか分からないってのも不思議だよな)


 昨日も疑問に思っていた事を、朝食のパンを頬張りながら考えてみるレウスだがやっぱり答えは出そうに無かった。エスヴァリーク帝国の思惑があってこその話なのだろうが、それと同時に妙な胸騒ぎを覚えてしまうのは何故だろうか?

 きっとこれも気のせいだろうと思いながら朝食を終えたレウスは、朝食と一緒に運び込まれた本戦のルールの規定書に目を通しておく。

 どうやら最初にコロシアムで仕切りを作られていた時とは違い、石舞台の上で戦うルールなのが事前に伝えられる様だ。


(武術大会にはきちんとルールがあるんだなー……。まず、故意にしろそうで無いにしろ相手を殺したら殺してしまった相手……つまり加害者が負けになるのか)


 次に相手を石舞台から落としたらそこで試合終了で、落とした選手の勝ち。逆に自分で誤って落ちてしまった場合は勿論落ちた方の負けになる。

 それから武器を落としてもまた拾えば問題無いし、相手の武器を破壊しても素手で決着がつくまで勝負は続けられる。

 ただし大会の日程の都合上で制限時間があり、一試合十分と定められている。その場合は判定による勝ち負けは決められずに引き分けとなるのだが、引き分けの場合はその両者共に敗退。トーナメントの次戦の相手は不戦勝となる。


(また、失神等で意識を失くした場合も負けになるのか。まあ……これは戦場だと死んだと見なされる様なもんだから納得が行くよな)


 他には審判役の騎士団員が、競技者の負傷等によりこれ以上の続行が危険と判断した場合にはストップが掛かって強制的に試合終了。

 ストップの原因となった、負傷した方の選手の負けとなって相手がトーナメントの次の対戦に勝ち進める。

 それ以外のルールについては書かれていないので、要は石舞台からの落下と気絶や失神等に注意しつつ、武器が無くなろうが防具が壊されようが決着をつけるまで終われないらしい。


(大丈夫だ。勝てば良い……勝てば良いんだ!!)


 戦場ではルールなんて存在しない。そう、勝てば良い。

 このエスヴァリーク帝国が徹底的に戦場をイメージしたルールで武術大会をやっているのであれば、こっちもその戦場ルールに則って徹底的にやってやるだけである。

 そう決意したレウスの居る控え室のドアがコンコンとノックされ、来客が現われた。


「失礼する。レウス・アーヴィン……お前は最初のトーナメントの出場者になる。十五分後に試合を開始するから用意をしておけ」

「ああ、分かったよ……それよりもあんたは確か、俺達の身体検査をやっていた白髪の男だな?」

「そうだ。それでは失礼するぞ」


 口数少なく認めたその男の案内によって、自分がトーナメントの最初の選手として戦う事になったのが判明しただけでも緊張感が高まる原因になる。

 だが、本当に緊張感が高まる原因なのはフィールドの大まかな特徴が分かっているだけで実際にどの様な石舞台なのかは初めて見る事。それから相手が誰なのか全く分からない事の二つである。

 朝食の食器類も片付けられて場所がクリーンになった控え室で、再び黙々とウォーミングアップを繰り返すレウス。槍を振り回せるだけの広さが無いのが惜しい所だが、突きの練習なら広さ的に出来るのでやれるだけやっておく。


(それから体術を使っても大丈夫なら、相手が体術を使える場合についてもイメージしておかなきゃな。相手が分からないって言うのは本当に怖いが、俺の出来るだけのテクニックで反撃するしか無えんだ!!)


 キックがやって来たらそのキックをブロックして反撃、パンチが繰り出されればそれを避けてカウンターパンチ。

 ブロックする事も大切だが、何より少しでも多くの手を繰り出す事が戦場で生き残るには重要な要素になるのだ……。

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