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326.動けない者、動き出す者

 一方、その三人が見ている資料を届けたペーテルは一時勾留と言う事でまずは取り調べを受け、その後に重要参考人として騎士団員の監視下に置かれた状態でフィランダー城の一室まで連れて来られていた。


(闘技場でそのまま待っていられるのかと思いきや、まさかこうして城に連れて来られてしまうとは……)


 ある程度は予想していたものの、可能性としては低いだろうと思っていたのでペーテルも驚きである。

 それでもこのままここに居れば、あの青髪の男に狙われる様な事も無いだろうと考えていた。

 それに、彼にはそんな事よりももっと考えなければならない話がある。


(ところであのレウスとか言う男を始めとして、セバクター坊っちゃんや他の選手は無事に予選を突破したのか……?)


 ペーテルも予選の様子は全く見せて貰えない上に、決勝の様子も同じく見せて貰えないまま控え室で待機と言う話だったので、自分がここに居る事によってアレットが一人でコロシアムに居る状態なのだ。

 ちなみにカギは玄関の前に落として行ってしまったらしく、すぐに見つかったのでそれはもう安堵するペーテル。

 後は彼女がレウスやセバクター達の試合の結果を真っ先に伝えられる事になるのだろうが、その彼女はまた別の意味で修羅場だった。



 ◇



「ええっ!? ペーテルさんがフィランダー城に連れて行かれたんですか!?」


 ペーテルがなかなか戻って来ないのを心配していたアレットが、係員の騎士団員に彼の行方を聞いたらそう答えが返って来たので驚くのも無理は無い。

 カギを落としたと言ってそれを探しに向かった筈のペーテルが戻って来ないばかりか、何をしでかしたらそうやって城に連れて行かれてしまうのだろうか?

 それについては、確認して来た騎士団員も詳しく教えて貰えなかったのでアレットの頭の中には疑問符ばかりが浮かぶのだが、自分まで同じ様にここから離れる訳には行かないので困ってしまった。

 闘技場の警備は帝国騎士団員達によって守られているのでセキュリティの面では安心出来ると思うのだが、他のメンバーがどうなっているのか分からない不安が常に付き纏っている中で、提供された食事を腹の中に収めながら考えるアレット。


(とりあえず、私の所にまだ何も連絡が来ていないって事はレウス達が予選を突破したって事で良いのかしら?)


 もしかしたら、チーム全員が負けるまで自分も今居るこのコロシアムの中から出して貰えないのかも知れないが、まだ誰の荷物も返却されていないのを見る限りでは誰も負けていない可能性が高い。

 そうだとしたらあの六人が上手くやってくれたんだわ、となるべくポジティブに考える様にしたアレットは、もう夕暮れ時も過ぎて夜になりそうな部屋の窓から外を見て明日の本戦日を楽しみに待つ事に決めた。



 ◇



 身動きが取れないアレットが提供された夕食を摂っているその頃、エスヴァリーク帝国の南側に向かう為に越えなければならないルートの一つである、ルシード山の中を進んでいる二人の男女の姿があった。


「この辺りで通信が受信出来る筈だが……どうだ?」

「ん~、そうですねえ……あっ、来た来た……来ましたよヴェラル師匠!!」


 カシュラーゼでエヴィル・ワン復活の為に手伝いをしていた赤毛の二人である、ヴェラルとヨハンナの子弟傭兵コンビは現在ここに居た。

 残りのドラゴンの欠片の情報を集める様に、とカシュラーゼの筆頭魔術師であるディルクから指示された二人は、カシュラーゼとの国境近くにある小さな村の近くに転送して貰ったのだ。

 そして傭兵として村で色々と情報を集めた二人は、南の方にあるアークトゥルスの森に向かうべく南に向かってひたすら進んでいる途中である。


「しかし、あの筆頭魔術師も何だか中途半端だと思わないか?」

「そうですねえ……あのアークトゥルスの生まれ変わりだって言う人を筆頭にしているパーティー達を南の方に向かって飛ばしたんだから、私達もついでにあの場所にあった魔法陣と同じ文様を作って南の方まで飛ばしてくれたら、こんなに苦労してなかったのに……」


 ブツブツと二人は文句を言うものの、ディルクにも二つの理由があって国境近くの町にまでしか飛ばして貰えなかったのである。

 一つは、遠くまで飛ばす為に必要な複雑な文様を形成して飛ばすとなればそれだけ魔力を使う事になってしまうのだが、大人数のレウス達をほぼ無理矢理に転送させてしまったので魔力の消費が激しく、国境近くの村の近くまで飛ばすのが精一杯だったのだ。

 そしてもう一つは身体の欠片の情報を集めるのと同時に、あのカシュラーゼで作り出した生物兵器のドラゴンがきちんと動いているかのチェックをして欲しい、との要望をディルクから受けたのでその活躍ぶりをレポートにして送らなければいけなかったのだ。


「とりあえずその生物兵器は大活躍しているって村で聞いたから良かったが、南まで行くなら凄く時間が掛かるぞこれは」

「そうですね。しかもまだ他にお仲間が居るならそっちのお仲間を使えば良いのに……」


 そしてそのお仲間が現在、この山の麓から繋がっている帝都のユディソスに潜入して新兵器の開発テストを行なっているらしいので、それに関しての情報共有もして欲しいと言われてしまった。

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