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323.予選通過者発表(その1)

「くそっ……」


 それ以降、全く聞こえて来なくなってしまったディルクの声がまだ自分の頭から離れないのに気が付いたレウスは、槍を乱暴に立て掛けてから再び食事に手を付けて行く。

 暇潰しの為に連絡して来たのだろうか? いや、君とは戦っている暇なんか無い位に忙しいと言っていたのでそれは無いだろう。

 だとしたらこちらの旅の様子を知る為に魔術通信を飛ばして来たとしか考えられないのだが、こんなにピンポイントで通話が出来るものなのだろうか?


(あの魔術師なら俺の知らない魔術を幾つも知っていても不思議では無いが……魔術の事に関してはアレットが居ないとどうにも出来ないからどうしようも無いな)


 そう言えば付き添いで来ていた筈のアレットとペーテルの行方についても、あの予選前の大部屋で別れてしまってから何も知らされていない。

 せめて付き添いの人物とは連絡を取らせて貰っても良いんじゃないかと考えるが、外の騎士団員に頼んだ所で「公平を期する為に不可能です」と言われてしまうのが目に見えているので、ここは黙って控え室で過ごしておこうとレウスは体力温存の為に眠る事にした。

 部屋の隅には排泄用の溝も用意されているのが救いだ……と思いながら。



 ◇



「ジェラルド陛下、武術大会の予選が終了しまして八名の予選突破者が決定致しましたので、ご報告に参りました」

「あー、どーもごくろーさん。そんで……あいつはきちんと通過したのか?」

「はっ、今の所は陛下の予想を裏切らない戦いでございます」


 フォンとニーヴァスが報告にやって来たのを見て、書類整理を終わらせたジェラルドが夕暮れの執務室に差し込む夕日を背中側にある窓から浴びながら、満足そうに頷いた。


「じゃあそいつを含めて、予選突破した奴等のエントリー時の書類を見せながら報告してくれ」

「かしこまりました。これがまず一人目……エルザ・ミネルバ・テューダーですが、彼女はマウデル騎士学院の三年生。学院首席の十八歳の生徒です。メインの武器はバトルアックスですが、他にも様々な武器、そして魔術もそれなりに使用が可能です」

「騎士学院爆破事件との関係はあるのか?」

「それは不明ですが……リーフォセリアの騎士団長であるギルベルト様の情報によれば、マウデル騎士学院の学院長であるエドガー・グルーバーの親戚なのは間違い無いので、何かしらの関係があってもおかしくはないかと」


 もし爆破事件に関わっていたとしたらこのエスヴァリーク帝国内で事件を起こされないとも限らないので、ジェラルドはフォンとニーヴァスに彼女の事をもっと調べる様にと言っておく。


「じゃ、次の奴は?」

「はい、二人目はソランジュ・ジョージ・グラン。イーディクト帝国の商家出身で十六歳の女です。元々冒険者の経験がありまして、冒険者ランクもBランクとこの若さにしてはなかなかのものです」

「へーっ、十六歳でBランクかよ。なかなかやるじゃねえか」

「はい。更に近々Aランクへの昇格試験の予定もあった様ですが、あのアークトゥルスの生まれ変わりとされている男と共に行動する様になってからは昇格試験もまだ受けるかどうかの連絡は入っていないらしいです。戦いではロングソードを使用。小柄な身体の素早い動きで相手を翻弄していました」


 ソランジュの戦いを見ていた審判役の騎士団員からの報告でそう聞いているニーヴァスが戦いの特徴を伝え、話は三人目のサイカへと移る。


「次はサイカ・エステル・エリクソンと言いまして、ソルイール帝国の宿屋で働いていた女ですね。年齢は二十一歳。しかし現在は国家反逆罪によってソルイール帝国に戻る事が出来ないまま、あの男と共に行動をしていると」

「国家反逆罪?」

「はい。皇帝のバスティアン様や騎士団長のセレイザ様に反乱を起こした罪によって指名手配を受けております」

「それって確か、ギルドのトップのヤローも三人纏めて崖下に落とされたって事件だったよーな気がすっけど……その話、もうちょっと調べてねえのか?」


 フォンのその報告を聞いて興味が湧いたジェラルドは更に追加の報告を求める。

 それに対して、皇帝のバスティアンがレウス一行に対して無茶な要求を突き付けたとか、因縁を吹っかけてレウス一行が殺されそうになった等の話がソルイール帝国の中で出ている……と、エスヴァリーク帝国で雇っている密偵ネットワークからの情報によってもたらされている事を話した。

 それを聞き、あー……と苦笑いを浮かべながらジェラルドは納得する。


「確かにあの皇帝ならやりかねねーだろーな。あいつは横暴で傲慢で暴力的で自分以外の人間や獣人をクズ扱いしているって有名だから、俺だってあんまり関わりたくねーって思っちまうもん」

「でしょうね……」

「やっぱフォンもニーヴァスもそう思うか?」

「はい、私もフォン隊長と同意見です。好戦的な国民が多いと言うのは似ていますが、少なくとも我が国には横暴な国民や暴力的な国民は少ないと自負しておりますので」

「俺もだよ。でも……もし俺達がソルイールと全面戦争になる時が来たら、その時は俺達に二度と手出し出来ない様に徹底的にぶっ潰してやろうとは思ってる。あ……勘違いすんじゃねえぞ。俺達は利害関係無しにむやみに喧嘩売ったりしねーだろ? 前にちょっと隣のヴァーンイレスに攻めたいって考えた事はあるけど、結局それも検討していた段階であいつ等が先にやっちまったからよ」

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