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321.男とジェラルドの動き

(くそっ、失敗した失敗した失敗した!)


 大誤算にも程がある。いや、想定外と言った方が正しいだろうか。

 ユフリーからの連絡によれば、確かあの茶髪の男はこのユディソスの一角でバーを開いている人間の筈だ。

 なのに何故あの屋敷に居たのだろうか?


(確かセバクター坊っちゃんとかって言っていたな。だったらあの男は屋敷の使用人だって事になるよな? でもあの屋敷に住んでいたジレイディール家はとっくに没落して誰も住んでいないって話だったが……何処で何がどうなったんだ!?)


 一時的な滞在拠点として利用するのは分かるが、使用人がまだ残っているのが不可解だ。可能性があるとすれば、ずっとあの屋敷に住んでいたと言うのがしっくり来るが……それ以上に不可解なのはあの男の異常な強さだ。

 ハンドガンの弾切れが起こりそうな所まで彼に銃弾を浴びせたつもりなのに、一瞬で魔術防壁を展開して全て防いでしまったのである。

 ディルクと言う男は稀代の魔術師として裏の世界では広く名前が知られている存在なのに、彼の魔術もまだまだ未完成な部分があると言う事なのだろうか?


(それとも……まさかあの男の魔術がハンドガンの銃弾の威力を上回る位の防壁魔術を生み出せるレベルにあるって事なのか?)


 何にせよ、アークトゥルスを陥れると言う作戦は失敗してしまった上に顔も格好も見られてしまったので、しばらく何処かに身を隠すべきだろう。

 予想外の出来事によってかなり面倒な展開になってしまったと後悔してももう遅い男は、身を隠す為に何処かの空き家とか廃墟が無いかを探して歩を進めた。



 ◇



「何だと? 俺に見せたい書類を持っている奴が現われただって?」

「はい。ですが……それがあのカシュラーゼに関する話でして。噂の新開発兵器の情報が載っていると」

「何だとっ!?」


 エスヴァリーク帝国の帝都ユディソスにあるフィランダー城の、皇帝のジェラルドが執務をする為にある執務室。

 そこでガタンと椅子から勢い良く立ち上がったジェラルドを見て、報告にやって来たフォンは苦笑いを浮かべた。

 確かに驚くのは分かるが、そこまでオーバーなリアクションをしなくても良いだろうと心の中で考えつつ報告を続ける。


「しかも話によれば、その情報を持って来たのは現在この武術大会に参加している例のアークトゥルスの生まれ変わりとされている、レウスと言う選手の仲間だそうです」

「まさかこんな間接的に俺に関わって来るなんて思ってもみなかったぜ。で……俺に対して何を見せたいって話なんだよ。その資料に書かれている兵器の話だよな?」

「ええ、そうなのですが……書類の内容をこちらで確認しました所、少々ややこしい事態になりそうでして」

「何だよ、回りくどい説明は抜きにスッパリ言ってくれ」


 そう言われたら仕方無いなとフォンは腹を括り、自分の主君に対してありのままを告げた。


「それでは申し上げます。その資料に書かれていた内容ですが、まずはカシュラーゼとそのアークトゥルスの生まれ変わりである男の繋がりが認められる内容でした。そして書類と一緒に差し出された物があるのですが、それは……新開発兵器として噂されている物の製造途中のパーツらしいです」

「新開発兵器……その書類の中に、どうやって使うのかって事とかも書いてたりしたのか?」

「はい。どうやら我がエスヴァリークが軍事大国だと言う事を知って大量に取り引きをするべく試作品をパーツ単位に分解して持って来たと言う所でしょうか」


 まだ憶測でしか無いのだが、その新開発兵器にはエスヴァリーク帝国の皇帝としてでは無く、武闘派の人間の一人として少なからず興味があるジェラルド。

 しかし、実際にその兵器の使い方をフォンから説明されて一つの疑問が浮かび上がる。


「そして使い方ですが、こちらにそのパーツがございます」

「これか」

「パーツの中に魔力を溜め、この引き金と呼ばれる湾曲した部分を引けばパーツの中の構造によってエネルギーボールが生み出されて、筒の先にあるこの穴から発射されるそうです。いわば場所を取らない弓の様な物であり、製造にもそこまで手間は掛からないと書かれておりました」

「おいちょっと待て、それってつまりこの前起こったって言う変死事件と何か関係があるんじゃねえだろうな?」


 あの変死事件の被害者達は全員が眉間や頭、それから胸と言った急所に小さな穴を開けられて絶命していた。そしてその事件に使われた凶器も見つかっていなければ、どうやって穴を開けられたのかも分かっていなかった。

 それがもし、この試作品によって起こされた事件だと言うのであれば全て辻褄が合う。


「これがもしユディソスの中に、いやエスヴァリークの中に広まったら各地で証拠が残らない殺人事件が後を絶たなくなっちまうぞ!」

「はい、それが怖い所です」

「だったらその書類を持って来た奴を捕まえろ!! 今そいつはどうしてんだ!?」

「はっ、既に一時勾留と言う事でまずは取り調べを受けております」

「良し……なら絶対にここから逃がすんじゃねえぞ。それから例のアークトゥルスの生まれ変わりとされている奴も、武術大会が終わったら勝ち負け問わずに捕まえるんだ!!」


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