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29.知った理由(前編)

 お互いに武器を引き、鍛錬場の中の緊張感が幾らか和らいだ。

 ギルベルトはアークトゥルス、いやレウスと同じく回復魔術も使えるので、自分の身体を魔術で回復させてから立ち上がった。

 そして気になった事をレウスに聞いてみる。


「ところでお前、学院の魔術防壁をどうやってかい潜って来たんだよ? あそこって確か夜は開けて貰えないだろう。何か特別な事情があれば別だが、今回の俺達の手合わせは秘密裏のものだったから、俺はあの学院長のエドガーにすら言わず、セバクターにしか話をしていない筈だ。セバクターは確かあそこの卒業生だとは言え、学院のセキュリティシステムまでいじる事が出来る様な権限はねえ筈だからな」

「え……あ、だから魔術防壁が掛かっていたのか!」


 ギルベルトからの話に、レウスは自分が学院を抜け出す時の苦労を思い返していた。


「学院をスッポリ覆う様に囲っていたから、抜け出すのは苦労したんだよあれは。普通に防壁を通り抜けようと思っても壁にぶつかって身体が跳ね返されるだけだから、一旦槍を地面に置いて、防壁の魔力以上の魔力を両手に込めてそれで抉じ開けてやっと人一人が通れる位の穴を作ったんだぜ!!」

「うはー、良くやるねえ?」

「あんたのせいだろうが!! 大体、何でエドガーさんにすら話してなかったんだよ? エドガーさんに一言言っておいてくれれば、俺はあんなにエネルギーを使わなくて済んだのによお!」

「はは、すまんすまん。だが、それにはちゃんとした事情があっての話なんだ」

「どんな事情だよ!?」


 魔術防壁を抉じ開けるだけでも疲弊したのに、まさかここに来てギルベルトと戦う事になるなんて思ってもみなかったレウスは、その事情とやらを聞かなければ納得出来ない。


「実は……これはまだ本当にごく一部の者しか知らない事実なのだが、国王陛下が他国へ視察に向かった時に、アークトゥルスの墓を見つけたんだ」

「え、墓?」

「ああそうだ。そしてその墓の奥深くから、ほんの僅かに魔力の流れがある事が分かった。その魔力はずっとこっち側にまで流れて来ていて、そしてお前の住んでいる田舎町の方角まで流れていた。俺は極秘に調査部隊を派遣し、お前の家にその魔力の流れがある事を突き止めた」

「じゃ、じゃあ俺の家に何かがあるって事なのか?」


 今まで十七年間生活して来た田舎の自分の家に、物凄い秘密が隠されている事になるのでは?

 そう考えるレウスだが、ギルベルトの話にはまだ続きがあった。


「いいや、そうじゃねえ。お前の家じゃなくてお前自身に向かって魔力が流れているんだよ」

「はい?」

「アークトゥルスの墓から流れ出た魔力が、お前に向かって流れているって事はこれは普通じゃねえって事は分かる。そして、お前は何かに導かれる様にこの王都カルヴィスにある騎士学院に入学した。果たしてこれは偶然と言えるかな?」

「偶然でしょ」


 レウスはきっぱりと答える。


「だって、俺とアレットが出会ったのだって偶然だし、騎士学院に来てくれって言われたのだって偶然と思ってるし。入学したって言うかさせたのはあんたの差し金ってのが凄い引っ掛かるが、それ以前の流れについては真面目に偶然だと思うね」

「ふうむ……ま、確かに騎士学院に来たのは偶然だと思うが、その偶然が俺達にとってはチャンスだったんだ。俺と陛下はこの機会を逃すまいとして、お前を学院に入学させる様に仕向けたんだ」

「は? って事は国王陛下も俺の入学に絡んでいるのか?」

「絡んでいるって言うか、入学させるのを命じた張本人だよ」

「ええー……」


 もう何が何だかさっぱり分からなくなって来ているレウスだが、とりあえずこれだけは言えるのは分かった。


「と、とにかく……今回俺がここに呼ばれてあんたとの手合わせで実力を見せなければならなくなったって言うのは、もしかして俺にそのアークトゥルスの墓に行けって事なのか?」

「へー、察しが付くのが早えじゃねえかよ」

「何でだよ!? 何で俺が行かなきゃならないんだ? 俺は確かに前世ではアークトゥルスとして生きていたよ。でも今は見ての通りレウス・アーヴィンなんだ。あんなやばいドラゴンを討伐して、そして生まれ変わった今はもう普通の一般人として暮らしたいだけなのに……何でこんな事になるんだよ!?」


 悲痛とも思えるレウスの叫びが部屋の中に響き渡るが、それを見ていたギルベルトの顔が変わる。


「学院に、赤毛の男女が侵入した話は知っているだろう?」

「ああ。それと関係があるってのか?」

「そうだ。お前はそいつ等に負けたが、そいつ等の野望を食い止める事が出来た。だがそれも一時的なものにしか過ぎない。またいずれ奴らは動き出す。古のドラゴンを復活させる為にな」

「ドラゴンの復活って、まさかあの生贄の話か!?」

「それしか考えられねえよ。でなけりゃわざわざ騎士学院に侵入する必要がねえだろうしな」


 前にちょっとだけ予想した、ドラゴンの肉体を生贄に捧げてその魔力を使いドラゴンの魂を甦らせ、別の肉体に移植させる事も出来るあの話。

 もしかしたらそれが現実になるかも知れない。

 まさかの展開に、レウスは目の前がグニャリと歪むのを感じた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 作者が主人公を虐め続けているような作品ですね
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