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302.もうちょっとなんだよね

「……もうちょっとなんだ」

「ん?」

「もうちょっとで、マウデル騎士学院の爆破事件の真犯人が掴める所まで来ているんだ。俺達はその為に魔晶石を集めている」

「魔晶石ってもしかして、爆破事件に使われた結晶石の元になった物か?」

「そうだ。それを幾つも組み合わせ、爆発させられる位の結晶石を作るんだ」


 あの時、レウス達が立てた仮説はこうだった。

 マウデル騎士学院の爆破事件は、学院の全ての階層で満遍なく爆発が起こっている。

 その爆破に使われたのは、魔力エネルギーを限界ギリギリまで溜め込んで暴発一歩寸前までの状態になる様に作り上げた魔力の結晶石。

 それを学院の倉庫や裏庭、トイレ等の人気の無い場所に合計五十個もの数を配置しておく。

 それと同時に一際大きく作り上げた結晶石を、そのドラゴンの身体の欠片が保管されている部屋のドアを吹っ飛ばす為に使った形跡も見て取れた。



「こうやって幾つもの結晶石を使って、爆破させる為の仕掛けを作って学院中を爆破して学院の学生や教員達の目を逸らした後にあのドラゴンの身体の欠片を盗み出したんじゃないか……と言うのが俺達の仮説だった筈だが、違ったか?」

「いいや、当たっている。だが全体的に言えば途中までしか当たっていない」

「どう言う意味だ?」

「まだその先にも話がある。つまり、裏の裏をかかれたって事だ。俺達は最初から欺かれていたんだ」


 話が段々ややこしくなって来たので、ここから先は部下に作業を進めて貰いつつセバクターはレウスを店の奥に案内する。


「つまり、真犯人は別に居るって事だろう?」

「だが、お前の思っているあの赤毛のヴェラルとヨハンナの二人じゃあ無いんだ」

「えっ、違うのか?」

「ああ。俺があの時騎士学院に向かったのは、最近怪しい動きをしている人物が居るってのをドゥドゥカス陛下から聞いて、それを調査する為だ」


 怪しい動きをする人物。

 マウデル騎士学院に関係している人物となれば大体絞り込めるものの、まだその人物が多過ぎて特定までは出来そうに無い。


「お前の中では誰なのか見当はついているのか?」

「何人かまでは絞り込めた。だが、まだ証拠が足りない。その証拠を掴む為に忘れ物をしたと言って学院に忍び込み、ありとあらゆる場所を探し回ったんだが……足音が聞こえたんだ」

「足音?」

「そうだ。教室の一つを調べ終わって廊下に出たら、その突き当たりにある窓の外から足音が聞こえて来て、そこから下を覗いてみたらあのヴェラルとヨハンナの二人の姿が見えた。だから俺はその二人を追い掛ける為に外に出たんだが、そのすぐ後に爆発が起こった」


 やはりあの赤毛の二人が関与している。でも、その二人が真犯人じゃないとしたら……?

 レウスの頭の処理能力が限界に達しようとしていた。


「なら、爆発を起こす為に設置された魔力の結晶石を五十個も仕掛けたのはお前じゃないんだな?」

「違う。そもそもそんな時間も無ければ、そんなに多くの結晶石を持ち運んでいたら目をつけられてしまうだろう」

「それもそうか。じゃあ、そ結晶石を手に入れる事が出来て尚且つ結晶石を仕掛けられるだけの時間がある人物って事になるな」


 すると、この時点でレウスの中でもその爆発を起こす事が出来る人物が絞り込める。

 そのレウスの納得した表情を見て、先にセバクターが自分の意見を述べる。


「とりあえず学生は無理だ。学生寮に住んでいる学生も多く居るが、あそこには常時警備の兵士が見張っているからな。となれば普段から怪しまれずに学院に出入り出来る学院関係者が怪しい」

「俺もそう考えた。しかし、普通の学院関係者では入れない箇所にまで結晶石が仕掛けられた形跡があった。防火システムを停止させた形跡もあったらしい。そんな防火システムを停止させられる権限なんて、一般の警備兵とかには許可がされていないんじゃないのか?」

「だと思うが……そこまでは俺にも分からない。しかしそれが事実だとしたら、もっと上の人物による犯行だろうな」


 二人で腕を組んで考えてみる。

 それだけの結晶石を用意出来て、仕掛けられるだけの時間がある人物。そしてあの赤毛の二人をも協力させられる人物。

 全てひっくるめて考えてみて、先に結論に達したのはレウスだった。

 だが、その表情はかなり険しい。


「……まさか」

「目星はついたのか?」

「信じたくは無いが……これだけの結晶石を調達出来て、尚且つ警備上なかなか入り込めない程の場所に入れるだけの権限があって、結晶石を仕掛ける場所を分かっているだけの学院の地理も把握出来ていて……」

「そして、自分が疑われ難い場所に居る人物……捜査員達から目を逸らせられるだけの人物」

「結晶石の原料となる魔晶石を手に入れて、学院に怪しまれずに持ち込む事が出来るのは……」


 既に犯人は絞り込めた。しかし、それはレウスにとって余りにも残酷な現実でもある。

 だが、口に出さないで話は進展しそうに無かった。


「俺の……俺の父さんが、爆破事件の真犯人だってのか!?」

「それだけじゃない。様々なエネルギーの要となる魔晶石の調達には、国に重要な書類の提出が何枚も必要だ。それを偽造出来るのは?」

「か、母さん……!!」

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