表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

296/875

293.ギルド所属の冒険者姉妹

「そうだけど、君達は……?」

「私は知る人ぞ知る、ヒルトン姉妹の一人でドリスよ!」

「ティーナです。ドリスの姉です」


 オレンジの髪の女がドリスと名乗り、金髪のショートカットの女がティーナと名乗ったのを聞いて、何かを思い出したサィードがあっと声を上げた。


「もしかしてお前等、今ギルドの中で実力をつけて来ているって噂のドリス・エルシー・ヒルトンとティーナ・オリヴィア・ヒルトン姉妹か?」

「そうよ! 私と姉様もますます名前が売れて来たって感じね!」

「まあ、嬉しいですわ」

「え……サィードってこの二人と知り合いなの?」

「いや、知り合いって程じゃねえ。ただ、ギルドの傭兵仲間から聞いた話にあったのを思い出してさ。最近色々な場所で活躍しているコンビネーション抜群の姉妹の冒険者が居るって」


 元気一杯の印象のドリス、落ち着いた優雅な雰囲気のティーナと対照的な性格の姉妹だが、サィードはその二人のコンビネーションは抜群だと紹介する。

 妹のドリスはやや小さめのハルバード、姉のドリスが腰に下げているロングソードで戦うらしい。


「そうなんだ。実際、どんな活躍をしたの?」

「例えば……ああほら、あそこに貼り出している「ヴァロリアー地方の盗賊団を壊滅した姉妹現る!」って紙あるだろ? あれに書いてある姉妹ってのがこの二人だよ」

「う、うん……それは分かったけど、いまいち凄さが伝わらないわね」


 盗賊団と言ってもピンキリなので、例えばたった三人の盗賊団を壊滅してもその活躍はああやって貼り出されるんじゃないか? とサイカはリアクションに困ってしまう。

 それについてもサィードが説明する。


「凄いなんてもんじゃないぜ? ヴァロリアー地方の盗賊団っていやー、このエスヴァリーク帝国の騎士団でもなかなか捕まえられないって言う位に素早い動きをするって言われてた奴等なんだよ。それを倒したんだよ!」

「素早いってどんな感じで?」

「んー……とりあえず外に出ようぜ。ここでこうやって大勢で固まってたら邪魔になんだろーし、混んで来たからな」


 サィードの提案に従ってギルドの建物の外に出た一行は、改めてサィードを中心にヒルトン姉妹の活躍ぶりを聞かされた。

 ヴァロリアー地方の盗賊団は彼の言う通り素早い動きが特徴で、夜更けと共に村や町を襲ってはとにかくスピーディーに鍵を開けるテクニックと驚異的なチームプレイで家に侵入し、中の金目の物をゴッソリと馬車に乗せて夜が明ける前に闇の中に消え去って行く。

 それがヴァロリアー地方の盗賊団の手口であり騎士団や村人達、それから町の自警団もなるべく夜を中心にして警備体制を敷いていたのだが、それでもなかなか尻尾は掴めなかったのだと言う。


「しかも、どうしても夜は気が緩みやすくなってしまう人間達では無く獣人達を配備したんだけど、何故かその警備態勢を敷いている時は全然ヴァロリアー地方の盗賊団は現われなかったのよ」

「何か情報が漏れていたとか、そう言うのか?」

「ええ、そうなんです」


 エルザの推測はどうやら当たりだったらしい。

 盗賊団は偵察部隊も用意しており、次に襲う町や村の下見を昼間の内に入念にしてから夜を待って忍び込む手段を取っていた。

 昼間は旅人や商人のキャラバンに擬態して、商人として物品を販売する姿を装って忍び込む予定の家の家族構成や寝る時間を聞き出したり、旅人の姿で治安の状態等を宿屋の酒場等で聞き出していたのだ。

 そうした綿密な偵察の上に成り立つ襲撃でなかなか尻尾を掴めなかったのも仕方が無いのだが、自分達の活躍ぶりが表沙汰になって来ると一旦エスヴァリーク国外に出る。

 そしてほとぼりが冷めた頃を見計らって、メンバー達がまた国内に入って略奪を働く。

 それも、メンバー達は一斉に国内に戻って来るのでは無くて魔術通信で綿密に連絡を取り合い、バラバラのタイミングで入国して戻って来たのを悟られない様に、とにかく目立たない様にする。


「そこまで用意周到な盗賊団を捕まえられるってのは、その盗賊団以上の綿密な捕縛計画を練ったってのか?」

「そうです。正攻法では捕まえられませんから、逆転の発想で捕まえる事にしたんです」

「逆転の発想……?」


 それは一体何なんだ、とティーナに聞いたレウスに対して彼女は控えめに答える。


「噂を流したんですよ。その盗賊団がまだ襲撃していなかった町や村を中心に、警備を強化して待っていようって。でも、警備を強化しても夜は気が緩むって言う事を向こうは知っている訳ですから、その心理を利用したんです」

「心理……」

「ええ。町の出入り口で警備をしている獣人が寝ているのを見れば、きっとその盗賊団も油断するだろうって。ですから獣人の方に寝た振りをして貰って、その盗賊団が町の中に侵入した所で出入り口を封鎖して閉じ込めたんですよ」

「まさに袋のネズミって状態にしちゃったのよ。もっと言えば騎士団に協力して貰って、町の住人の何割かが騎士団員の変装した姿だったから、奴等が盗みを始めた所で大捕り物のスタートって訳よ」


 ティーナ考案のその作戦が見事に成功し、ヴァロリアー地方の盗賊団を一網打尽にしてヒルトン姉妹はエスヴァリーク帝国の中で一躍有名になった……のだが、話はまだ終わらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ