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282.エスヴァリーク帝国の軍事力

 遠く離れたカシュラーゼで物騒な話が展開されていたその数日後、そのアークトゥルスの生まれ変わりであるレウス率いる一行は、エスヴァリーク帝国の帝都ユディソスの近くまで辿り着いていた。


「やっぱりさー、何処でもそうだと思うけど都って言うのは洗練されているわよねえ」

「そうそう。でも一番栄えているから都って訳じゃないのよ、アレット」

「えっ、そうなの?」

「ええ。このユディソスはエスヴァリークの中で栄えているけど、別に栄えている都市が幾つもあるのよ」


 冒険者の先輩であるサイカから気になる話を聞くアレットは、興味が出て来てその話に食い入る。


「例えばこのユディソスには皇帝が住んでいるけど、東の方にある大きな都市には貿易関係の総本山がある。それから南の方に向かえば魔術師達が集団で生活している魔術都市があるし、最南端の砂漠の中にはその砂漠の中に町を作って、地下にも都市を作ってひんやりとした気候の中で作物を育てたりしている。こうやって拠点を国中に分散させる方式を取っているのよ」

「へ~、リーフォセリアはどれもこれも全て王都のカルヴィスに集まっているから全然大違いね」

「そうね。正反対のやり方をしているから他国が攻めて来てもそれなりに安心なのよ。例えば魔術の拠点が潰されても食料の拠点があれば人命が助かる確率がアップするし、反対に食料の拠点が潰されても貿易関係の拠点で他国と食料の取り引きをして、それで賄っている間に立て直しが出来るじゃない?」

「あー、確かにそうね」


 重要な拠点を帝国内の至る箇所に分散させる事によって、敵の侵攻によって拠点が一気に潰されてしまう事を防ぐ役割と、他の拠点が潰された時の代替拠点としての活動が可能になる算段だ。

 それからこのユディソスに辿り着くまでにレウス達が思った事、それは道中で魔物の数が明らかに少ない状況だった。

 ソルイール帝国は好戦的な国民が多いだけあって魔物の数が少なめであったが、それ以上にこのエスヴァリークでは魔物が駆除されているのだとソランジュは語る。


「このユディソスを始めとするエスヴァリークでは、前にセバクターからの説明があった通りで二十以上の大小国家を支配下に置いているからな。だからこそ軍事力もそれに比例して上がっているし、有事の際にはその国家もエスヴァリーク帝国軍に加勢して戦うと言う条約を結んでいるんだ」

「だから他の国に軍事拠点が多くあるって事?」

「そうだ。例えそれがカシュラーゼの領土内の一部でもだ。そしてトータルの軍事力の面で見れば、カシュラーゼよりもこちらのエスヴァリークの方が強いと聞いているからな。流石にあのカシュラーゼでも逆らう事は出来なかったんだろう」


 そして魔物の討伐が進んでいる理由としては、各拠点を潰しに来ようと考えているのは他国の人間や獣人だけで無く、魔物達も同じだかららしい。

 特に狂暴化した魔物が多くなればそれだけ被害が多くなってしまうので、各軍事拠点で綿密に連絡を取り合って何処の国の何処の地方で魔物が出現したかがすぐさま通話魔術で本部に報告される。

 報告内容を聞き、そこに居る通信担当のオペレーターが部隊の出動をすぐさま許可して討伐に当たらせる。

 これによって被害を最小限に抑える事が出来、効率の良い治安維持が可能になるのだと言う。


「勿論、小さい魔物とかの場合であれば現場の独断で動く事も多いらしいぞ」

「へえーっ、それじゃ軍事拠点の本部は何処にあるの?」

「それは帝都のユディソスだ」


 横からサィードが話に入って来た。


「武術大会が毎年四回行なわれている事もあって、その審判とか競技委員を派遣するのには丁度良いからな。帝都にある闘技場の運営にもこの本部が関わっているって聞いた事があるんだよ」

「そうなんだ。闘技場は大きいのかしら?」

「そりゃーでっけえさ。確か一万人は余裕で入る事が出来るコロシアムだって。俺も実際に見てみたけど、このユディソスにある城よりも遥かにでっかかったぞ」


 やや興奮気味に話すサィード。武術大会に参加して上位入賞した者には帝国騎士団への入団資格が与えられるらしいのだ。

 ただしそれ以外にも帝国騎士団に入団する方法はある。まずは自分で帝国騎士団の各地の拠点施設へと出向いて入団の申し込みをし、筆記試験と実技試験と面接を受けて合格する方法。

 それから武術大会以外で、国内外問わず様々な活躍をしている傭兵や冒険者がスカウトを受ける方法。

 後は貴族のコネや親戚のツテで入団する事も出来るが、この場合は実績を認められてはいる訳では無いので雑務等の後方部隊に回されるのが殆んどであるし、一年間の見習い期間で独自の評価基準があってそれをクリアしなければ退団処分を受けるのだと言う。


「実際に俺もスカウトされた経験があったんだけどよぉ、ほら……前も話した通り俺はもう騎士団なんてこりごりだから断ったんだ」

「ああ、そう言えば私達のリーフォセリアの王国騎士団を辞めたんだったわね……」

「そうそう。……あ、そろそろユディソスの出入り口だから入国審査を受けなきゃな。こう言う所もこの国は厳しいから」

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