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281.動き出す新開発兵器

「ディルク様、レアナ様の身柄は北の塔に幽閉致しました」

「あーどうもご苦労。全く、危ない危ない……あの女王陛下にここを離れられちゃったら困るからねえ。あの女王陛下がエヴィル・ワンの復活の鍵を握っているんだってあのアークトゥルス達に連れ去られるギリギリになって分かったから良いものを、気が付かなかったらまんまと連れて行かれちゃってたよ……」


 ふうっと一息ついたディルクが研究室の椅子に腰を下ろし、ライマンドからの報告に安堵する。

 あのアークトゥルスの生まれ変わりが率いている一行に、レアナを連れて行かれなくて本当に良かったと思う彼の元に新たな来訪者が現われたのはその時だった。


「失礼致します。ディルク様、例の兵器の実験が終了致しました」

「あーあれ? ようやく出来たんだ……でもちょっと時間掛かり過ぎじゃない?」

「申し訳ございません、最終調整に時間が掛かっておりまして。しかしその分精度は格段に上がったとの実験データも出ておりますので」

「ふぅん……まぁ、あいつ等の脱走だの迎撃だので君達も大変だったろうからねえ。感謝するよ。これが世界に流通すれば、カシュラーゼが更に世界のトップに君臨する事は間違い無いね!」


 新兵器が開発完了したとの事で、これが徐々に流通して行けばやがては世界の「軍事」と言うものに対する意識と常識を根底からひっくり返す程の大発明である。

 それについては新たな来訪者である緑髪の魔術師ドミンゴも同じ考えらしく、興奮するディルクを見て思わず笑みが浮かんだ。


「そうですね。しかし、そうなると戦術と言う面に関しても根底から変えなければならなくなるかも知れません」

「そうだねえ。でもそこはほら、今までの武器の応用もあるだろうし臨機応変に対応して行けば良いでしょ。表の世界には騎士団が居るんだし、徐々に徐々に浸透させて行けばこの利権で世界が変わるよ、これは!」


 それに、これが完成すれば数万……いや数十万単位の人間や獣人が戦場で死ぬ事になる。

 ディルクは口にこそ出さなかったものの、大量破壊衝動によって身体がムズムズするのを抑えられなかった。

 特に人間が死ぬ所を見なければ興奮しない、色々な意味での変態である。

 そんな興奮する変態だったが、ふと我に返ってこの先の事を考えて真顔になった。


「……でもさー、開発が終わったのは良いんだけど実用化してみてどうかって所じゃないの? 実際に魔物とか、それこそ人間とか獣人とかに使ってみて一定の効果が出ないと量産体制は取れないよ、これは」


 これで開発が終わった訳では無い。

 表向きには開発が完了したし、実験で実際に試してみて問題が無かったのでこれからいざ量産体制……となるのだが、肝心の実戦での成果をディルクは懸念していた。

 しかし、それはライマンドの方で既に手配済みだったらしい。


「その点についてはお任せ下さい、ディルク様。俺とドミンゴの方で色々と考えております」

「色々と? じゃあ具体的に説明してくれないと僕だって納得出来ないよ。考えるのは馬鹿でも出来るからねえ」


 ダラダラとした前置きは要らないから、どんな事を考えているのかさっさと教えてくれと急かすディルクに向けて、ライマンドはその頭の中の考えを伝え始めた。


「まず実戦の話ですが、我がカシュラーゼと利害関係が一致しているソルイール帝国に協力を求めました。すると向こうからも是非協力させて欲しいとの返答が魔術通信でありましたので、使者がこちらに向かっているそうです」

「使者ねえ……その使者って言うのはまさか、あの龍の貴公子とか言う粗暴な皇帝本人だったりするんじゃないだろうね?」


 あの粗暴で好戦的な男であれば、自らが先陣を切る事に何の躊躇いも無いだろう。

 事実、その男はイーディクト方面に逃げていたアークトゥルスの生まれ変わり達を追撃して一戦を交えたまでは良かったものの、まさかの返り討ちに遭ってしまい崖の下に突き落とされて重傷を負ったとの報告があった。

 向こうもそれは把握しているのか、皇帝本人を使者として派遣する事は避けて別の人物に頼んだらしいのだ。


「いえいえ、それはございません。今回はかなりの危険がありますからね。ですからソルイール帝国とは何の関係も無いと思われる人物に使者を頼んだそうで」

「何の関係も無いの? それっておかしくない?」

「いいえ、関係が無いからこそですよディルク様」

「ん? どう言う事?」


 ライマンドの思考がいまいち理解出来ないディルクが聞き返せば、彼は更に噛み砕いた説明をしてくれた。


「ですから、一見関係が無いとなれば向こうも油断しますよね。そこで油断した所で攻撃をすれば、幾らあのアークトゥルスの生まれ変わりである向こうも一撃で仕留められますよ」

「そう……まあ、分かったよ。だったらその辺りの段取りはもうしてあるの?」

「勿論です。使者の方にも逐一連絡を入れて貰って、向こうにどうやって近づくかの算段は打ち合わせ済みです」

「ああそう、ならそっちは君達に任せるよ。だけどこれだけは覚えておいて。もし今回の実験が失敗したら君達もソルイール帝国も全て消し去っても良いんだからね?」


 真顔でとんでもない事を言い出すディルクに対し、ライマンドとドミンゴの二人は無言で頷いた。

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