277.思い掛けない再会
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やはり、そう簡単にはいかないらしい。
人生ってのは上手くいかないものだなとレウスは思いながら、セバクターの先導によってあの森の出口から見えたトルバスの町に辿り着いた一行。
この町はセバクターが何回か来た事のある町らしく、久し振りに来たらしいのだが町並みは前回最後に訪れた時と変わっていないと言う。
「とりあえず、この町で仕事を請け負おう」
「仕事?」
「ああ。冒険者ギルドもあるし、レアナ陛下から頂いた物資にも限りがあるだろうからな」
「それはまあ……確かにそうね」
セバクターから仕事について提案されたので、その前に町の出入り口付近の広場にて一度それぞれがレアナから分けて貰った物資を確認してみる。
武器、防具、それから食料に薬、そして魔道具とバランス良く揃ってはいるものの、悪い言い方をすればどれもこれも量が中途半端である。
色々と売り飛ばしてしまえば少しは金になるのは分かっているが、だからと言ってせっかく分けて貰った物を売り飛ばしてしまうのも何だか気が引ける。
なのでここはこの持ち物を引き続き携帯して持ち運ぶ事にして、各々は冒険者ギルドへと向かって仕事を請け負う手筈を取った。
それに冒険者ギルドであれば、カシュラーゼ方面の情報が何かしら手に入るかも知れないからだ。
「冒険者ギルドとか、かなり懐かしい様に感じるのは気のせいか?」
「そうねえ、旅に出た最初の頃はギルドで仕事を請け負っていたけど、気が付いてみたら何時の間にか仕事を自分達で請け負うよりもお願いされてそれをこなしていた感じだったからねえ……」
イーディクト帝国でシャロットからお願いされた魔物討伐がその代表的な例であり、こうして自分達から仕事を取りに行くのは新鮮な気がする。
なので、自分達が最終的にカシュラーゼ方面を目指すと言うのであればやはりそちら側に向かう仕事を優先的に取ろうと言う話で纏まった。
「ええと……ここが今の私達が居るトルバスの町だな」
「そうね。で……ここがエスヴァリーク帝国の帝都ユディソスね。丁度国の領土の真ん中にあるから、まずはユディソスを目指しましょう」
ソランジュとサイカの提案によって更に細かく仕事を請け負う地域が決まったので、冒険者ギルドで何か出来そうな仕事が無いかを各々で探してみる。
だが、そんな一行の元に一人の人物が歩み寄って来ていた。
「……セバクター坊っちゃん?」
「え?」
「やはり……セバクター坊っちゃんでは無いですか!! 何故ここに!?」
「お前……ペーテルか?」
ギルドの中でセバクターに気が付いて声を掛けて来たのは、このパーティーメンバーの誰よりも明らかに年上だと分かる中年の男だった。
やや明るめの茶髪を伸ばしており、白いワイシャツの上に赤い模様の入った黒いエプロンを身に着けているその出で立ちは冒険者には程遠い。
どちらかと言えば酒場のマスターと言う風貌だなー、とレウスは思った。
そんなレウスを始めとする他のメンバーの視線を受けているのも気にせず、感動の(?)再会を果たしたらしい中年の男はセバクターの右手を取って両手でブンブンと握手をする。
「そうです、使用人のペーテルですよ! いや、まさかこの国に戻ってらしたとは……一体何処にいらっしゃったのですか!?」
「……話せば長くなる。逆に聞くがお前は何故こんな所に居るんだ、ペーテル?」
「私はこのトルバスの町に酒を仕入れに来たのですよ。……あの、この方達はセバクター坊っちゃんのお知り合いですか?」
「ああ。ちょっとここだと迷惑になるから一旦外に出よう。入口の方に広場があったからそこに行って、そこで改めてお互いを紹介しよう」
困惑した様子のセバクターがそう提案し、冒険者ギルドから出た一行は改めてペーテルと言うこの茶髪の男の素性を聞く事になった。
「……と言う訳で、それぞれの簡単な自己紹介は済んだな。それじゃこの男だが、彼はペーテル。俺の屋敷で使用人をしていた人間だ」
「初めまして皆様、ペーテルと申します」
「ああどうも、初めまして。でもセバクター……今のやり取りからするとどう考えてもセバクターは貴族だって話になるよな?」
屋敷だの、使用人だのと言う単語は普通であれば貴族の地位にある様な人間や獣人との会話でしか出て来ない筈。
それについて聞いてみた所、セバクターはあっさりとその事実を認めた。
「ああ。貴族と言っても小さい所だが」
「何をおっしゃいますか坊っちゃん。小さくても貴族は貴族。子爵の地位にあったジレイディール家は立派な誇りですよ」
「……それ、褒めてるのか?」
「当然です」
微妙に会話が噛み合っていない様な気もするが、とりあえずそこは無視してペーテルは話を続ける。
彼によれば、元々セバクターは地方都市の貴族として富を築いていたらしい。
そしてある時、帝都のユディソスを拠点として領土を広げると言う話になってそのユディソスに移り住んだのだが、とある事件が切っ掛けになってジレイディール家は没落してしまったのだと言う。
そしてその没落した生家を顧みる事も無く、セバクターは自分の力だけを頼りに生きて行く事を決意してはるばるやって来たリーフォセリアのマウデル騎士学院に入学した。