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273.絶対に逃がさねえぞお!!

 鍛錬場での対人鍛錬の様に、敵味方が入り乱れての総力戦が幕を開けた。

 カシュラーゼでの戦いもこれで最後になるだろうと考えると、あのディルクを始めとしたこの敵を全員倒さなければならないのは明白だ。

 なのでレウス達も全員で向かって来る人間や獣人を手当たり次第に葬って行くが、その中で一際緊張感を高めて対峙している二人の人間の姿があった。


「今度こそここで終わりにするわよ、この裏切り者!!」

「裏切り者……それは誰の事を言っているのかな?」

「とぼけないでよ! 貴方の事に決まっているじゃない。私達の仲間に入りたいって言っておきながら、結局はこっちの仲間になって私達に襲い掛かって来ているくせに!」


 集団での乱戦状態になっている場所から少し離れた所で自分と向かい合うサイカに対し、コラードは先程のディルクと同じくフッと鼻で笑って答える。


「おいおい、それは君達が私を不合格にしたからだろう? それに君は傭兵と言うものを分かっていないよ」

「何ですって?」

「私達傭兵は、必要とあればすぐに雇い主を変えるなんて日常茶飯事だからな」

「そう言えばサィードがそんな事を言っていたわね。傭兵と言うのは金の切れ目が縁の切れ目だって」

「ああ。そして私は、この任務が成功すれば多額の報酬が貰えるんだよ!!」


 そう言い切ると共に、サイカに向かってコラードが愛用のロングバトルアックスを振るう。

 サイカはバックステップでそれを回避し、他に邪魔が入らないかと言う事に注意しながらシャムシールで立ち向かう。

 コラードと戦うのはウェイスの町での実技試験以来、そしてあの地下の兵士達の詰め所以来で二度目になるのだが、やはり実技試験の時と違ってパワーも強くスピードも速い。

 ギン、ギィンと何回か打ち合いをした後、ビリビリと痺れる腕を振ってその痺れと痛みを逃がしながらサイカはコラードに確認する。


「貴方……やっぱり実技試験の時は手を抜いていたのね!?」

「ああ。潜入して情報を集めるのに、余程特別な事情でも無い限りは自分の本来の実力は隠しておくものだろう。それより腕は大丈夫なのか? もう止めるか?」

「ふざけないでよ!!」


 完全に馬鹿にされているサイカは再びシャムシールを手にコラードに向かって行くが、コラードはサイカの動きを見切って彼女の腹にミドルキックを入れ、立て続けに顔面を蹴り飛ばした。


「ぐはっ!」

「ぬうううん!」


 立ち上がるのにも苦労しているサイカにゆっくりと歩み寄り、左手をロングバトルアックスから離して彼女の髪を掴んで引きずり起こしたコラードは、その左手で思いっ切り彼女の顔面を殴り飛ばした。


「がはっ!?」

「おりゃあ!」

「ぐえっ!」


 殴られたショックで後ろの壁に当たって跳ね返って来たサイカの腹に、今度は強烈な前蹴りをお見舞いする。

 そのまま地面にドサリと倒れ込み、シャムシールも手放してしまったサイカにとどめを刺すべく、コラードはロングバトルアックスを構えて振り下ろした。


「ぬううん!!」

「ぐっ……!」


 気配でやばいと察知したサイカは咄嗟に地面をゴロゴロと転がって、何とかその凶刃から逃れつつ立ち上がる。

 鼻血は出ているし口からも血が流れているが、だからと言ってここで諦める訳にはいかない。

 向こうの方では他のメンバーが乱戦を繰り広げているので、自分だけがここでへばっていられないからだ。


「貴方だけは絶対に逃がさないからね……!」

「ふん、私に一発も入れられていないのにまだそんな口が叩けるのか。だったら二度とその生意気な口を利けない様にしてやる!」


 再びロングバトルアックスを振るうコラードだが、ここまで相手の動きを見ていたサイカは徐々にそのスピードに目が慣れて来ていた。

 横薙ぎに振るわれる彼の得物に対して、柄の部分に向かって突っ込んで身体で止めたサイカは、懐に飛び込んだのを利用して膝蹴り。

 少したたらを踏んで後ろに下がった彼の側頭部目掛け、柔らかい股関節を利用したハイキックを叩き込む。


「ぐほっ!」

「これで入れたわよ!」

「……少しはやるじゃないか」


 頭を撫でて痛みを逃がすコラードは、サイカに入れられたと言う事実を認めつつ再び彼女に得物を振るう。

 しかし、スピードを見切ったサイカはそのロングバトルアックスをシャムシールで弾き、カウンター気味にミドルキックをコラードの腹に入れる。


「ごあっ!?」

「まだまだあ!」


 立て続けに追い打ちを掛けるべく、サイカはシャムシールを片手にコラードとの距離を詰めて、隙の出来ている彼との勝負を一気に決めてしまおうと意気込む。

 だが、やはりパワーの差もあるのかサイカが思っているよりもダメージを与えられていなかったらしく、向かって来るサイカの腹目掛けてロングバトルアックスでど突くコラード。


「ごはっ!?」

「ぬん!!」


 コラードは続けて彼女の身体を持ち上げ、背中から地面目掛けて投げ落とした。

 背中を強打した事で息が一瞬出来なくなったサイカだが、そんな彼女にコラードは容赦も躊躇もせず、再びロングバトルアックスを振り下ろした。

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