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271.セバクターの立場

「あれか? あれは俺がレウスを助け出す為に薬を飲ませたんだ」

「薬?」

「そうだ。寝台にあんたの身体を固定する時に、耳元でこっそりとこう言ったのを覚えていないか? 助けてやるから少し我慢しててくれ……と」

「そう言えばそんな事を言われた様な気がする」


 レウスはその時の事を回想しつつも、ここで改めてセバクターの立場について考えてみる。


「なあ、セバクター……あんたは一体何を考えて、どんな立場で行動しているんだ?」

「立場だと?」

「そうだ。前に確かあんたはこう言っていたな。俺はリーフォセリア王国からの命を受けて、この世界全土を回ってこの世界で一体何が起こっているのかを調べているって。しかもそれはドゥドゥカス陛下からの命令らしいじゃないか? あのマウデル騎士学院の爆破事件が起きる前から、既にその命をドゥドゥカス陛下から受けて、旅をし始めたんだと。その話がまだ途中だったな」


 だからここでハッキリと話して貰わなければ気が済まない。

 そのレウスの要望に対し、セバクターは口数少なくではあるが走りながら答え始める。


「リーフォセリア王国内に裏切り者が居る」

「え?」

「今はそこまでしか掴めていない。その裏切り者が誰なのかまではまだまだこれから調べなければならない問題だ」

「裏切り者……それってもしかしてちょっと言っていたあの男って話の?」

「……ああ」

「エレベーターに乗っている中で、貴女は確かにこう言っていましたね。『あの男は確実に世界を破滅させようとしているんだって気が付いてしまったんだ』……と」


 レアナがその時の彼のセリフを繰り返せば、セバクターは頷いて続ける。


「その男の正体は掴めた。だが、まだ確証は持てない。それを知る為に俺は世界中を回っているんだ」

「正体ねえ……でも、私が現時点で一番怪しいって思っているのは貴方なのよ」

「俺が?」

「そうだ。私もアレットと同じだよ。あのマウデル騎士学院の中で爆発事件が起こる前に怪しい行動をしていた貴様以外に誰が居るんだ?」


 アレットとエルザが本人に直接そう言うものの、セバクターはみんなの後に続いて右に曲がりながら首を横に振って否定する。


「俺じゃない」

「何でそう言い切れるのよ?」

「仮に俺が裏切り者だとしたら、自分からこうやって世界中を見て回って裏切り者を探しています……なんて言うと思うか?」

「うーん、確かにそれもそうねえ……」


 セバクターの反論に納得しつつあったアレットだが、エルザは違った。


「いいや、それも貴様の作戦かも知れないだろう。あえて自分からそう言う事で、自分から疑いの目を逸らさせようとする……」

「なら勝手にそう思っていれば良いさ。今に分かる事だからな」


 もううんざりしてしまったのか、セバクターはそれ以上エルザと会話を続ける気は無い様で一方的に終わらせてしまった。

 そのやりとりをそばで聞いていたレウスが、もしかして……とセバクターにあの時の事を聞いてみる。


「ああ、そうやってあんたが行動しているのとようやく繋がったよ。あの新しい方のウェイスの町で、俺とギルベルト団長が見かけた仲間達とあんたが一緒に行動していたのは、その裏切り者を探す為だったんだな?」


 この広いエンヴィルーク・アンフェレイアの世界中を回るのであれば、自分一人だけでは到底回り切れないだろうから仲間を集めて手早く事を運ぼうとしていたのか、とレウスは勝手に納得する。

 だが、セバクターは短くそれを否定した。


「違う、そうじゃない」

「え?」

「あれはまたあれで別の問題なんだ。俺が裏切り者を探しているのは確かにそうなんだが、それ以外にも俺は山程やる事があってな。あの仲間達は俺のこれからの計画に必要な人員なんだ」

「これからの計画だって?」


 まさかマウデル騎士学院の容疑者として行動する中で、まだ何かを企んでいるのだろうかとレウスの表情が一気にこわばる。

 もしかしてリーフォセリア王国を乗っ取ろうとか、そうした事を考えているのでは無いのか?

 それだったら彼もここで止めなければならないぞと思うレウスだが、セバクター本人の回答は予想の斜め上を行くものだった。


「俺の住んでいた国を本来の姿に戻す為の戦いが待っている」

「え? それってもしかしてヴァーンイレス王国の話か? って事はサィードと同じ……」

「いいや、違う。良いから黙って最後まで聞け。確かにヴァーンイレス王国も大変なのだろうが、俺の住んでいた国はまた違う場所にあるんだ」

「……そう言えば誰かから聞いた覚えがあるが、お主の出自は不明だったな」


 記憶を思い起こしたソランジュがそう尋ねるものの、セバクターからの返答はシンプルだった。


「それもいずれ分かる事だ。それにこの件はお前達には関係無い話だ。俺自身の問題だからな」

「さっきからそればっかりよね、いずれ分かるいずれ分かるって。そんなに私達に隠し通しておきたい事ばかりなのかしら?」

「そうだ」


 サイカの嫌味交じりの問い掛けにも、表情一つ変えずにそう答えるセバクター。

 そのやりとりを終えた直後、先頭を走っていたレアナの足が止まった。


「皆さん、着きました。この先が魔法陣のある部屋です」

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