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267.不届き者

 ホバーボードと言うのが何なのかは聞いただけでは分からなかったが、吹っ飛ばしてやると言うセリフを聞いてピンと来たソランジュは、更にライマンドを睨み付ける。


「お主が乗っていたあの乗り物の事か?」

「おー、そうさ。馬に代わる新発明の乗り物。魔力を使って進めるから楽だぜ。今はあいにく持ち合わせちゃいねえけどよ。で、俺を逃がさない為に追って来たってか?」

「それ以外に何がある?」

「はっ……何も無えだろうなあ。けどよぉ……俺とやり合って本気で勝てるとでも思ってるのか?」


 レアナを抱えたまま自信たっぷりにそう問うライマンドだが、彼に対してここで引き下がる訳にはいかないのがソランジュだ。


「それはやってみないと分からんが、少なくとも私はお主に負けるつもりがあってここに居るのでは無いぞ」

「へ~~、面白いじゃねえか。だったら力尽くでレアナ様を俺から取り返してみろよ。俺とお前でタイマン勝負と行こうぜえ?」


 ライマンドはそう言うと、ラウンジの少し奥の方にある牢屋の中にレアナを突き飛ばして入れ、素早く鍵を掛けて閉じ込めてしまった。


「ちょ、ちょっとライマンド様!?」

「お下がり下さいレアナ様。この私が必ず、この不届き者をここで倒して貴女をお守りしますよ」


 わざとらしく左胸に右手を当ててそう言うライマンド。

 シチュエーションがシチュエーションならおとぎ話の一場面になりそうな展開だが、この場合は色々な意味で不届き者の立場が異なる。

 ソランジュから見ればレアナをそのまま連れて行こうとしているライマンドの方が不届き者であるし、ライマンドから見れば牢屋を脱獄してまでレアナを連れて行こうとしているソランジュの方が不届き者だ。

 更に言えば、カシュラーゼ側から見た不届き者はソランジュの方である。

 なのでカシュラーゼの王国騎士団員として、ここでソランジュを倒さなければならないライマンドは愛用の短剣を構える。


「あの魔術師のせいで、魔術関係の物が使えない今だからビームサーベルとかが使えねーのは不便だけどよぉ、表のカシュラーゼのこれだけでお前なんか十分さ」

「その短剣二本でか?」

「ああそうだ。それに言っておくけどよぉ、この俺に真っ向勝負を挑もうってその姿勢は褒めてやらあ。けど、俺を相手にした以上はどーなっても知らねえぜええええっ!!」


 雄叫びと共に突っ込んで来るライマンドを見て、ソランジュも自分のロングソードを構えて迎え撃つ。

 二人の距離が一気に縮まり、刃と刃がぶつかり合って火花を散らした。


「ぬぐううっ!」

「おらっ!」


 一瞬つばぜり合いになるものの、ソランジュの腹を左足の前蹴りで蹴り飛ばして一度大きく距離を取るライマンド。

 余り近付き過ぎるとそのロングソードの攻撃範囲に入ってしまって、蹴り飛ばした時に彼女が横薙ぎにロングソードを振るって胴を斬られてしまう可能性があったので、その危険性を見越した上でのバックステップだ。

 対するソランジュはその攻撃で行こうとしたものの、ロングソードがギリギリライマンドを掠っただけで届かない。


「へー、それなりに武器は使えるみてえだな。じゃあこっちも遠慮なく行かせて貰うぜえっ!」


 ロングソードの使い方はちゃんと分かってるんだと感心したライマンドは、短剣による素早い攻撃を繰り出すだけで無く、的確に回し蹴りを中心とした足技も併用する。

 例えばソランジュがロングソードを横に振るものの、それをバックステップで回避してからその反動で飛び後ろ回し蹴りを繰り出し、彼女の胸を蹴り飛ばした。


「ふん、どうした……その程度かよ?」

「まだまだあ!!」


 再び向かって来るソランジュの斜め斬りを回避し、続けて振るわれる横薙ぎを両手で受け止めつつ彼女の胸に頭突き。

 よろけた彼女に追い打ちで、両足を揃えてドロップキックでぶっ飛ばす。


「ぐほっへ!?」

「おらおらおらあ!!」


 後ろに転がって衝撃を和らげながら立ち上がったソランジュに、左後ろ回し蹴り、右回し蹴り、また左後ろ回し蹴りのコンビネーションを繋げ、怯んだ彼女に短剣の猛攻をお見舞いする。

 それを彼女が何とかしのぎ切っても、ソランジュのロングソードを両手で弾いて顔面に右の肘を入れ、後ろの石の壁に左手を使って彼女の頭を叩き付ける。


「がはっ!?」

「おりゃあああ!!」


 間髪入れずにソランジュに接近したライマンドは、彼女の腹に再び左足で前蹴り。

 よろけた所に右の下段回し蹴りを入れ、足払いを掛けて彼女を床に倒した。


「ぐは、あ……ああ……」

「けっ、最初はちょっとやるじゃんって思ったけど、何だよ全然弱えーじゃんよお。あーあ、期待外れも良い所だぜ」


 こんな弱っちいの相手にしててもしょうがねーよとぼやきながらも、それでも何とか立ち上がろうとするソランジュを腕組みをして余裕で見下ろしつつ待ち構えるライマンド。


「まだやる気なのかよ? そんなボロボロなのに」

「まだまだこれからだと言っただろう……」

「へっ、面白れぇじゃん。そーかいそーかい、だったら今度こそ二度とその二本足で立ち上がれねえ様にしてやっからよおおおっ!!」

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