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266.グダグダうじうじしていたそっちが悪い

「人望があってこそ、国は成り立つ。人が着いて来る。信頼されて良い国になる……か。良い言葉ですね、レアナ女王陛下」

「……お主はっ!?」


 先の曲がり角から、非常にゆったりとした歩き方で現われた声の主。その姿を見た瞬間、今のフラッシュバックは正しかったのだとソランジュは確信した。

 それと同時に、その声の主もソランジュに気が付いて声を上げる。


「へぇ、お前は逃げ出したって訳か。せっかく俺達がわざわざここまで運んで来たって言うのに、全く手間を掛けさせてくれる女だぜ」

「お主に運んでくれと頼んだ覚えなんか無い。……そうか、お主がライマンドか」

「あれ、俺の名前知ってんのかよ。こりゃー驚いたねえ?」


 自分の名前を言い当てられた銀髪の男……あの時、自分に謎の乗り物で体当たりをして来たライマンドはニヤリと笑う。

 だが、目は全く笑っていない。

 そんなライマンドに向けて、レアナは率直な疑問をぶつける。


「ライマンド様、貴方は何故ディルク様に加担しているのですか?」

「俺っすか? 俺は単純に、そっちの方が自分の利益になると思っているからですよ。人望は確かに大事でしょうねえ。ただし、その人望って奴だけじゃあ国は成り立たないんですよ。領土があって、従える人民が居て、そして金がある。それと武力もね。それは国のトップである貴女が一番分かってんじゃないっすか? レアナ陛下」

「だからと言って、あの魔術師の言いなりになって他国に攻め入るのがてめえ等のやり方かよ?」


 同じ銀髪のサィードが青筋を額に浮かべながらそう聞くが、ライマンドはハッと鼻で笑った。


「そうだな。領土を拡大して、俺達が世界のトップになる。そうすれば自然と国も潤うんだ。何よりも大切なのは経済力だからよ。だから他国に魔術技術を高く売りつけてやって、そしてまた国が潤う。他国は魔術の技術で助かる。それで何が問題あんだよ?」

「問題は無いだろーな、表向きはよ。だが……俺の国を滅ぼしたのだけはぜってーに許さねえからなぁ!!」


 しかし、それでもライマンドは手に持っている短剣をグルグルともてあそびながら笑う。


「あれは領土問題で揉めてたからだぜえ? そっちが大人しくこっちの属国になってりゃー、俺達だってあんな真似はしなかったんだぞ?」

「属国だあ?」

「あーそうさ。お前等の国にある資源を大人しく寄こせば揉めずに済んだんだぜ。それをそっちがグダグダうじうじしてっから、実力行使に出たのさ。なのに見せしめに何人かぶち殺してやっても商談に応じようともしなかったから、お前等が悪いのさ」


 余りにも身勝手な言い分である。

 そして、こんな男達のせいで自分の国が滅ぼされたのかと思うと情けなくなったサィードは、ハルバードを構えて無言でライマンドの方に向かって歩き出した。

 しかし、ライマンドは曲がり角の先に向かって手招きをする。


「おいお前等、さっさとこいつ等やっちまえ。レアナ様だけはなるべく傷つけんじゃねえぞ!!」


 その一言を切っ掛けにして、曲がり角の先から大勢の男女の兵士と魔術師達が現われた。


「……っ!!」

「お、多いわねえ!?」

「いや、さっきよりもちょっと多いだけだ。一気に片付けるぞ!」


 ライマンドに向かって歩いていたサィードが驚いて、クルリとUターンしてメンバー達の元に引き返すのと、サイカが相手の人数に驚くのはほぼ同時だった。

 それに対してレウスは冷静に相手の人数を把握して、ドミンゴ達と対峙した時の事を思い出しつつ同じ様に対処すれば良いと判断し、全力で立ち向かい始める。

 再び多数入り乱れての通路での戦いが幕を開けたのだが、その一方でライマンドはここを部下達に任せてレアナを混戦状態の中から連れ出そうと考えていた。


「さぁ、レアナ様は俺と一緒に来るんですよ!」

「えっ……きゃああっ!?」


 レイピアを武器にしてライマンドから最も遠い位置で戦っていた筈のレアナだったが、何時の間にかそのライマンドが自分のそばに寄って来ていたのには気が付くのが遅れてしまった。

 そのレアナの隙を突いて彼女の手のレイピアを手から叩き落とし、ライマンドは彼女を軽々と片手で抱え上げると、乱戦状態を上手く回避しながら戦場とは逆方向の奥へと進む。


「ちょ、ちょっと止めて下さいライマンド様っ!!」

「なりませんね。これはディルク様のご命令なのです。貴女を無事に連れ戻してくれってね。さぁ、帰りますよレアナ様」


 ニヤニヤ笑いながらレアナを抱え上げて進むライマンドは、先の曲がり角を右に曲がって地下のラウンジへと出る。

 そこは兵士達の憩いの場でもあり、囚人達が逃げ出さない様に見張りを何人か座らせておく場所でもあった。

 しかしその見張り達も、今は先程の戦いに加勢しているので無人の広場になっている。

 そこに差し掛かった時、後ろから軽めの足音がタタタッと近付いて来るのがライマンドの耳に聞こえた。


「……?」

「待てっ! このままお主にレアナ様を連れて行かせはしないからな!!」

「何だよ、お前もしつっけーなー。またホバーボードでぶっ飛ばしてやっか?」


 ニヤニヤ笑いはそのままに、乱戦状態を抜け出して自分に追い付いて来たソランジュにライマンドはそう言い放った。

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