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265.士気

 結局、レアナの勢いに押し切られる形で同行を許す事になったレウス達だったが、こうなって来るとかなり責任は重大と言える。

 幾ら操り人形とは言え、一国の女王陛下である彼女を同行させるのだから。

 サィードやサイカ、ソランジュの様な一般人が同行するのとは訳が違うし、もしレアナの身に何かあれば……とプレッシャーも大きい。

 それでも着いて行くと決められてしまった以上はもう引き返せないので、彼女の先導で表の世界のカシュラーゼの城下町エルヴァンの地下に……裏の世界に向かって再び下りる一行の目の前に、再び敵が現れるのはすぐの事だった。


「居たぞぉ、こっちだぁ!!」

「くっ、地下はやはりこっちにまで追っ手が回って来ていたか! レアナ様は俺達が敵を一掃するまでお下がり下さい!」

「は、はい!」


 地上に出る前と同じくレアナを後ろに下がらせて、一行は再び地下でのバトルを繰り広げる。

 レアナ曰く、一旦地上に出て再び地下に入ってしまえば後もう少しでその脱出口に辿り着くとの話だったのだが、敵の方もそれを見越しているらしい。

 その証拠に、地上に出る前の道で戦っていた敵達よりも明らかに数が多いのだ。

 しかも、それ以上に気になっている事がレウスにはあった。


(魔術師の割合が少ない気がする。俺達は恐らくあのディルクとか言う奴の影響で魔術を使えない。だが、向こうにも同じ事が起こっているのだとしたら魔術師の割合を減らして、近接戦闘を得意とする兵士達を多めに動員させているのかもな……)


 事実、向こう側の兵士達もロングソードや槍だけで無く、バトルアックスやハルバード、それから弓と言う様に攻撃のバリエーションが多彩になって来た。

 弓は狭い牢獄内の通路なので他の仲間に当たる可能性を考えると余り使えないらしいが、それ以外の兵士の士気はなかなか高く、気合いも士気も十分で突っ込んで来る。

 なので向かって来る連中が妙に強いのも納得出来ると言えば出来るが、レアナを取り戻す為だけにこんなに士気が高くなるものなのだろうか?


(カシュラーゼはその国の特徴から戦闘の際にも魔術師が中心で、騎士団員達は二の次と言う実力差だと聞いてはいたが……とんでもないな。兵士達も普通に強いぞ!)


 やはり正規の鍛錬を積んでいるからこそ、腐ってもかなり強いので油断が出来ないと言う事だろうか。ソランジュがそう思いつつ、向かって来た兵士の一人の胴をスパッと斬り裂く。

 他のメンバーもそれぞれの戦いを終わらせて先へ先へと進んで行くのだが、次から次へと敵が出て来る。

 これではキリが無いので適当にあしらって進むべきなのだろうが、敵の士気がやはり高くそうはさせてくれないのでフラストレーションが溜まる一方だ。


「はぁ、はぁ、はぁ……こっちの地下の方が敵の数も耐久力も高い気がするんだけど、気のせいかしら!?」

「いや……恐らく気のせいでは無いと思うわよ。何処かにこの集団を指揮しているリーダーが居ると思うんだけど、それを倒してしまえば敵の士気はガタ落ちになるかも……」


 アレットのぼやきにサイカがそう考察すると、それを横で聞いていたレアナが心当たりを口走った。


「もしかすると……こちら側を守っているのはライマンド様かも知れません」

「ライマンド?」

「ええ。まだ十九歳と若い方ですが腕は確かな方でして、王国騎士団の第一部隊長を務めていらっしゃるんです。カシュラーゼ王国騎士団には第一部隊から第二十部隊までで部隊が分けられているんですが、第一部隊はこの裏の世界を主に守っている秘密部隊でもあるんです」

「って事は、それなりにレベルが高いって話なんですか?」


 サィードの問いにレアナは頷き、更に細かく説明を続ける。


「そうですね。とは言ってもそれぞれの部隊ごとに役割が違うので一概には言えません。医療関係が専門の第九部隊があったり、物資の調達を専門としている第十四部隊があったり、事務作業が中心の第三部隊があったりしますので。しかし、あの若さで裏のカシュラーゼを守る第一部隊の隊長を務められるのは、彼の実力と人望があるからでしょう」

「人望……っすか?」


 実力は分かる。でも人望は?

 その点だけが引っ掛かるサィードだが、歩きながらレアナはしっかり説明を忘れない。


「ええ。人望があってこそ部隊は活躍出来ます。個人主義の傭兵とはまた別で、軍隊は集団行動が求められますから。この点は父王から私も教育を受けましたので身に染みていますわ。人望があってこそ、国は成り立つ。人が着いて来る。信頼されて良い国になると。それを第一部隊のライマンド様も分かっていらっしゃるのでしょうね」

「人望ねえ……で、そのライマンドってのはどんな身なりの人なんです?」

「身なりですか? ええと……貴方と同じく銀髪の男性ですね。十九歳で身長は高め。何時も腰に赤い布を巻いていて、二本の短剣を使って戦っています。騎士団の模擬演武でも良く姿をお見掛けしますので、自己鍛錬がお好きなのかと」

「えっ、それって……」


 その身なりの情報を聞いていたソランジュが、自分がこの場所に連れて来られる前の記憶と照らし合わせて心当たりのある男の姿を脳裏にフラッシュバックさせた時だった。

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