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263.通過儀礼

 本当は止めを刺したかったのだが、レウス達の戦いも丁度終わったのでこれ以上構っていられなかったアレットとエルザはお互いの武器をそれぞれ回収して、レアナの先導で再び秘密の出入り口を目指す。


「この上です、この先に地上がありますが、またすぐに地下に潜ります!」

「分かりました!」


 レアナによって案内された階段の先には、確かに地上の世界があった。

 ずっと地下に潜っていたので昼なのか夜なのかすらも分からなかったが、こうして外に出てみるとまだまだ朝の時間帯だったのが分かった。


(ずっと夜の中で戦っていたと思ったのに……やっぱり暗い場所に居ると時間間隔狂うんだなー……)


 ソランジュがそんな事を考えながら一行の後に着いて行くが、その彼女を含めて地上に出たチームにもまた追っ手達が迫る。

 ……筈だったのだが、何故かパッタリと追っ手達の気配が途絶えてしまった。


「あれっ? 敵が追って来ないぞ?」

「……本当だ。どうしたんだ?」


 レウスやサィードを始めとするパーティーメンバー達は、不気味な程にパッタリと途絶えてしまった追っ手の気配を疑問に思う。

 その疑問について回答してくれたのは、やはりと言うかこの国の内部事情についてこのメンバーの中で誰よりも詳しいレアナだった。


「我がカシュラーゼでは、地下世界の事は表の世界には決して明かしてはならないと言う決まりがあるんです」

「そうなんですか?」

「はい。表の世界のカシュラーゼの技術だけならまだしも、他国の数倍は先を行っている裏の世界の魔術技術をむやみに渡したくないと言うディルク様の意向なんです。ですのでこちら側に地下の騎士団や魔術師達を追って来させないのも、徹底的に情報を隠したいその気持ちが関係しているかと思います。これについて、貴方達が捕まる前に何処かで聞いたりしませんでしたか?」


 そう聞かれ、真っ先に心当たりを思い出したのがソランジュとサイカだった。


「あ……そう言えば思い出しました! 確か私達、そんな話を地下の世界で聞いた記憶があります!」

「そうですね、サイカの言っている通り地下の住人の方達から教えて貰いました。確か監視がどうのこうのと」


 言いながら、ソランジュとサイカはその時の会話の内容を頭の中で思い返してみる。


『もしかすると、地上にもカシュラーゼの王都エルヴァンがあると今聞いたのだが、それってもしかして表向きのカシュラーゼの姿だと言いたいんですか?』

『そうよ。このカシュラーゼの住民ならみんな知っていて当然よ。表向きのカシュラーゼから来たんなら何かのツテがあるみたいだけど、裏の世界の事は口外してはいけない決まりになっているのよ』

『えっ、そりゃまた何で?』

『このカシュラーゼって国は色々と他国に対してやばい事をしているからな。ドラゴンの開発をしたりとかさ。そんな研究が世界に向けて流れたりしたらとんでもない事になるし、この国に攻め込まれたって文句は言えねえ。だから裏の世界の住民達は行動を厳しく監視されているんだよ』


 裏のカシュラーゼに住んでいる人々が余計な事を口走らない様に、地下の世界の至る所で王国騎士団が見張っている。

 しかも魔道具として開発された、監視カメラなる物がその見張りの精度を更に高めているのも聞いた記憶はまだ新しい。

 そして、二人の証言を聞いたレアナは神妙な顔つきで頷いた。


「はい。ドラゴンの生物兵器の話はその筆頭格です。あれは魔竜エヴィル・ワンを復活させる為の通過儀礼と言った所でしょう」

「通過儀礼……ですか」

「そうです。全部で十匹のドラゴンの生物兵器を生み出して、世界中に解き放ちました。各国から寄せられている目撃証言によれば、その生物兵器の出所が我が国であると既にバレています。しかしシラを切り通している人達が居るのも事実です」

「シラを切ってるって……そんなの今更切れる様なもんでもねーと思いますけど」


 呆れた様に呟くサィードに対し、更にレアナは頷いた。


「そうですね。しかし表の世界……こちらのカシュラーゼにはそんな研究の跡を残さない様に巧妙に隠しているんです」

「巧妙って言えるんですかこれ? ちょっと調べればバレちゃいそうな気がするんですけど」

「そこはディルク様が色々と手を尽くしていると聞いています。私はそこまでの内部事情に関わっていないので何とも言えませんが……」


 とにかく、まだまだ問題は山積みである。

 まずはここから脱出して、それからどうするかはまだ未定だがひとまず残りのドラゴンの生物兵器を倒さなければならないだろう。

 それをレウス達がレアナに伝えると、彼女は弱々しく笑みを浮かべながら頷いた。


「申し訳ございません、私のカシュラーゼのせいで、貴方達にまでお手数をお掛けします」

「全くですよ。でも、本当に悪いのはレアナ様では無くて実権を握っているあのディルクって男ですから。だからあいつとその周りに居る連中を倒して、そこからようやくカシュラーゼが正しい道を歩いて行ける筈です」


 そう予想したレウスに対し、次の瞬間レアナから思い掛けない話が出て来た。


「あの……それで今考えていたのですが、私も一緒に連れて行って貰えないでしょうか?」

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