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260.聞こえて来る声

 レアナの先導で地下に続く階段を発見した一行は、その階段から地下の牢獄に向かって進んで行く。


「この先にあの二人が居るんだったら、手分けして捜した方が良くないか?」

「そうだな。かなり広いし、それだったら三人ずつに別れた方が……」

「いやちょっと待て」


 何時もの様に、この人数の多さを利用してソランジュとサイカを捜そうと提案しかけたエルザをレウスが止める。


「どうしたんだ?」

「今のエルザの話だとここはかなり広いんだろう? しかもここに来るまでに聞いた話だと、未だにその二人は見つかっていないんだろう? ならば固まって進んだ方が得策だろう。レアナ様もこうして先導して下さっているのに、道が分からない奴等のグループを作って別れて、それで迷ったりして敵に囲まれでもしたらまずいだろうからな。だから多少時間が掛かってでも、今回は固まって捜しに行く方が良いんじゃないかと俺は思う」

「確かにそれは言えているな」


 セバクターもレウスの意見に同意するものの、そこに待ったを掛けたのがサィードだった。


「いやいや、ちょっと待てよ。そんなのんきな事やってて、その間にあの女二人が殺されちまったらどうすんだよ?」

「ならお前の方はそれで良いって言う根拠を言えよ。レアナ様がここで襲われでもしたら俺達終わりなんだぞ!」

「んだとぉ……じゃあてめえは仲間を見殺しにするってのかよ!?」

「そんな事は言ってないだろう。時間は掛かるが見つけ出そうってそう言う話だろう!」

「止めろ、こんな時に言い争っている場合では無いだろう!!」


 レウスとサィードが突然意見をぶつけ合って言い争いを始めてしまったのを見かねて、エルザが二人の間に割って入った。


「こうやって言い争っているのが一番無駄だと何故分からないんだ!?こうしている間にも時間はどんどん過ぎて行くんだ。そうして時間を無駄にして助けられるのに助けられなかったと言うのが一番最悪のパターンだろう!!貴様等、私よりも戦場の経験があるのに全く情けないにも程があるぞ!!」

「ちっ……」

「けっ……」


 エルザの仲裁で何とか言い争いは終わったものの、せっかく話が纏まり掛けていたのにかなり気まずい空気が生まれてしまった。

 しかしそんな気まずい空気の中で、ふとセバクターの耳に妙な音が聞こえて来た。


「……何か聞こえる」

「え、何……何の音?」

「人の声だ。話し声が聞こえて来る」


 聞き返したアレットに対してそう答えたセバクターに続き、レアナもその声をキャッチする。


「確かに聞こえますわね。この地下牢獄は物音や声が響きやすいから良く聞こえます。これは……女性の声ですかね?」

「女性の声?」

「ええ。それも聞こえる限りでは二人分でしょうか」


 アレットの確認に頷きつつ、正確な人数を推測するレアナに対してサィードの表情が変わる。


「えっ、それってもしかしてソランジュとサイカじゃねーですか!?」

「その方達かどうかまでは断定出来ませんが、聞き慣れない方達の声なのは確かです」

「だ、だったらさっさと行ってみましょうぜレアナ様!!」


 だが、そこでセバクターがサィードに釘を刺した。


「待て。行くのは良いが、敵の兵士や魔術師、もしくは囚人の可能性もあるから油断するなよ」

「わーってら。慎重に慎重にだろ?」

(本当に分かっているのか、この男……)


 セバクターが溜め息を吐くのも意に介さず、サィードはハルバードを構えて小走りで先に見える曲がり角の方へと向かって進んで行く。

 足音が響き渡っているので隠密行動の欠片も無いんだよなぁとレウスも呆れながら、彼の後に続いてなるべく足音を立てない様に続く。

 だが次の瞬間、レウスの目の前で思い掛けない事故が起こった。


「……うおっ!?」

「……ぐへっ!?」


 目の前の曲がり角でぶつかったサィードが後ろにしりもちをつく形で倒れる。

 そしてレウス達の位置からでは曲がり角の先で見えないが、相手もそれはどうやら同じだったらしい。

 その様子をゆっくりと近づきながら目撃したアレットとセバクターは、先程のレウスと同じく呆れ顔になって呟いた。


「何してんのよ、あの男は……」

「偶然に偶然が重なって馬鹿として認識された様だな……」


 曲がり角からそっと先の様子を窺ったサィードだったが、それは曲がり角の先に居た相手もどうやら同じだったらしい。

 出会い頭にぶつかってしまうのはたまにある事だが、こんなに止まりそうなスピードなのに顔と顔がぶつかってしまうのは初めて見たレア中のレアケースである。

 その二人の内、先に復活して立ち上がったたサィードが、出会い頭にぶつかったその相手にハルバードを突き付ける。


「おいっ、てめえ何しやが……あれっ?」

「あてて……そ、それはこっちのセリ……ああっ、サィードぉ!?」


 絡み合う視線。懐かしい気がするその顔。

 お互いの視線の先に居たのは間違い無く、このカシュラーゼに一緒に密入国したパーティーメンバーだった。


「無事だったのか、サイカ!?」

「そ、そっちもどうやら無事だった様ねサィード! ほら、ソランジュも居るわよ」

「おー本当だ本当だ、無事で良かったぜソランジュ!」


 だが、感動の再会を喜ぶのは一旦ここまでだ。

 こんなに早く再会出来たのであれば、まずさっさとレアナに案内して貰ってここから脱出するべきだからである。

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