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259.地下に急げ!!

「くそっ、いきなり魔術が使えなくなっちまったぞ!!」

「私もだ! あの男か!? あの男がやったんだな!?」

「恐らくそうね。もう……これじゃ私の出番が無いじゃない!」


 魔術が突然使えなくなってしまった。

 さっきまで槍の他に魔術も駆使しつつ順調に敵を倒しながら進んでいたレウスだが、突然力が抜ける様な違和感を身体全体に覚えた後、再度魔術を放とうとした結果がこれである。

 まず、自分のパーティー全体に張ってあった魔術防壁がシューンと消え去ってしまったのだ。

 おかしいなと思いつつ張り直そうとしたのだが、魔術防壁を張る為に手を振っても手が風を切る音だけで防壁が出て来ないのである。


「お、おいどうしたレウス?」

「分からん……魔術が使えない!!」

「は?」


 そんな馬鹿な話があるか! とエルザも魔術を発動するべく手を自分の前にかざしてみたのだが、何時もなら魔力の光が出る筈なのに全く出ない。

 アレットもその後ろで魔術を発動出来ないのを確認してみて、絶望感に打ちひしがれた表情になる。

 妙な身体の感覚と共に魔術が使えなくなってしまったのは、どうやらレウスだけでは無くてパーティー全員らしいのだ。

 そして魔術が使えないと悪態をつき始めるレウスだが、誰がこんな事をやらかしたのかはもう既に分かっていた。


「何故だ、一体どうして!?」

「筆頭魔術師のディルク様しか考えられません。あの方にとってはこれ位の事は造作もありませんから、私達は一気に不利になってしまったと考えるのが普通でしょう」

「冷静に分析している場合じゃねーっすよ女王様!! どーすんですかこの状況!?」

「まずは地下に行って、皆さんの仲間の方と合流するべきです。それだけです」


 冷静にそう告げるレアナに対して、確かにそうだと思い直したサィードはハルバードを構え直した。

 しかしサィードとレアナとセバクターにとってはこんな状況は初めてでも、残りの三人は実は初めてでは無い。

 そう、自分達が旅に出る切っ掛けになったあの事件の経験が今またここで活かされようとしているのだ。


「でもさ、これって俺達が誘拐されてあの薬を使われた時と同じシチュエーションじゃないか?」

「そう言えばそうよね。私はあの時も魔術が使えなくてどうしようかと思ったけど、そうか……あの時の要領で戦えば良いのか!」

「そうだな。貴様の言う通り、私達はこれが初めてでは無いからな。しかし、だからと言って油断は禁物だぞ。私達が魔術を使えないと言う事は圧倒的に不利な状況なのは間違い無いからな」


 そこまでエルザが言った時、足音を察知したセバクターがボソッと呟く。


「……来るぞ」

「良し、一気に片付けて地下に急ぐぞ!!」


 もう少しで地下への階段に辿り着くのに、やたら敵の数が多い。

 恐らく先程の二回の声が原因で、研究員達も兵士達もそれから魔術師達も囚人達も、その誰もかれもが血眼になって自分達を探しているのだろう。

 だが、その新たにやって来た敵達と刃を交えてみた時にもう一つの違和感を覚える一行。


「……おい、何でこの魔術師達は魔術を使わなかったんだ?」

「それは私も不思議だなーって思ったわ。何でなのかしらね?」


 さっさと倒してしまったので問題は無いのだが、魔術師達はさっきまでずっと魔術を使っていたのにいきなり使って来なくなってしまったのだ。

 こっちが魔術を使えないと言うのは身体に覚えた先程の違和感で分かったのだが、まさか相手は魔術を使わずに正々堂々と戦う様にしたのか? と疑問を抱くレウスとアレット。

 その一方で、セバクターは冷静に突っ込みを入れる。


「単純に、相手も魔術を使えなくなっているんじゃないのか?」

「え~? そんな単純な話だと思うか? 相手もわざわざ魔術を使えなくさせるなんて、それって相手も不利になると言う事だぞ?」

「そうかも知れないが、それ以外に相手が急に魔術を使わなくなった理由は説明出来るか?」

「うーん、そう考えるとそれが一番自然かも知れねえなあ」


 エルザはセバクターの考察に疑問を入れ、サィードは釈然としないながらも納得は出来るらしい。

 そんな一行を見て、先導しているレアナが提案する。


「しかし、そうだとしたら今がチャンスなのではないですか?」

「はい?」

「ですから、相手もこちらも魔術を使えないとなれば魔術師の戦力は無いに等しいと思います。ですから今の内に急いで地下を目指してしまった方がよろしいかと」

「そ、そうですね!」


 そう、こちらの戦力が落ちているのは問題だが相手の戦力も落ちているとなれば条件は五分。

 しかも、レウスとエルザとアレットの三人は薬を使われて自分達だけ魔術が使えなくなっていた過去があるので、その時と比べれば遥かに条件面では有利である。

 あの黒髪の魔術師が何を考えてこんな事をしたのかは分からないが、こちらの魔術を使えなくさせる事によって戦力ダウンを目論んだのだろうか?


(だが残念だったな、俺達は素手でも戦えるんだ。お前の目論見が全て上手く行くと思うなよ!!)


 レウスは心の中であの黒髪の魔術師にそう言い、ここからの形勢逆転を狙うべくレアナの後に着いて行った。

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