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252.エレベーターの中で

 やっと来たエレベーターに乗ってゆっくりと下りながら、セバクターと向かい合って一行は話を聞く。

 これまでの行ないを色々と話して、自分の立場を明らかにして貰わなければ納得出来ないからだ。


「お前は一体どう言う立場なんだ、セバクター? 今回ばかりは黙っていたら分からないぞ」

「そうよ。今まで色々と逃げ回っていたと思ったらいきなり目の前に現われたりして……何が目的でこんな事をしているのよ?」


 レウスとアレットに詰め寄られる形になったセバクターは、最初こそ黙っていたもののもう隠し切れないと思ったのか、ふーっと息を吐いてポツリポツリと話し始めた。


「……俺も最初は信用出来なかった。だが、あの男は確実に世界を破滅させようとしているんだって気が付いてしまったんだ」

「話が飛び過ぎてて分からない。最初からハッキリ説明しろ」


 自分の立場からキッチリと説明して欲しいレウス達一行にとっては、結論から話す事もせず、若干ズレている回答をし始めたセバクターにイライラが募る。

 その一行のリアクションを見たセバクターが、一つ頷いて今度こそレウス達の求めている答えを話し始めた。


「俺は……リーフォセリア王国からの命を受けて、この世界全土を回ってこの世界で一体何が起こっているのかを調べていたんだ」

「おい、それってもしかしてドゥドゥカス陛下からの命令か?」

「そうだ。あのマウデル騎士学院の爆破事件が起きる前から既にその命をドゥドゥカス陛下から受けて、俺は旅をし始めたんだ」


 話が少しずつややこしくなって来たものの、セバクターの立場をしっかりと知らなければならない一行は、何とか頭の中で話を整理しつつその続きを聞こうとする。

 しかし、それは突然の乱入者によって中断されてしまったのだ。


「……ん?」


 その乱入者は、エレベーターの中の何も無い筈の空中からいきなり現われた。

 ブオン……と不気味な音が聞こえたかと思うと、空中にライトグリーン色の魔法陣がツツーっと展開されて行く。

 一行は思わず謎の魔法陣に身構えて武器を構えるが、一行はの中で心当たりがあるのがレアナだった。


「ディルク様だわ……」

「えっ? ディルクってさっきの黒髪の魔術師の男ですか?」


 ポツリとそう呟いたレアナにエルザが訪ねれば、レアナも自分のレイピアを構えながらコクリと頷いた。

 しかしかなり緊張しているらしく、額に汗が浮いているのが見て取れる。


「そうです。あの方……以前この表の方のカシュラーゼで同じ事をしていたんです。城の中に賊が侵入して、その賊を退治するのと同時に新たな魔術を開発したからその実験だとか言って、城の中庭に賊をおびき寄せて、魔法陣から魔物を呼び出したんです!!」

「じゃ、じゃあこの魔法陣から出て来るのって……!!」


 アレットがそう言った瞬間、魔法陣の中からニューっと小さな魔物達が次々に現われ始めたのだ。

 しかもその魔法陣は一つだけでは無く、気が付けば四か所に出来ている!


「げげっ、やべえぞこれは!!」

「おい、潰せ潰せ!!」


 とにかくこのエレベーターの中に居る六人で役割分担をして、魔法陣から出て来る魔物を片っ端から潰しに掛かる。

 魔法陣の大きさからして大きな魔物は出せないらしく、それが不幸中の幸いと言えるだろう。

 しかし、小さい魔物しか出せないのであれば数でこのエレベーターの中に居る全員を抹殺してしまおうとディルクは企んでいるらしい。

 しかも、エレベーターのスピードも何となく遅くなっているのをここに居るレウス以外の全員が体感していた。


「くそっ、まだ下に辿り着かないのか!?」

「恐らくこれもディルク様の仕業かと思います」

「くっそーーーー、それってあいつのやりたい放題じゃないっすか!! どうにか出来ねーんですかこれ!?」


 魔物を潰しながらレアナに訴えるサィードだが、またしても彼女は首を横に振った。


「すみません……私にはどうにも出来ないんです。あの方はこの城の全ての魔術システムの操作権限を持っておられる方ですから、あの方が全てを操作しているんです……ふっ!!」


 レアナのレイピア使いは割と出来るらしく、魔物の急所を的確に狙って仕留めて行く。

 だが、その話を横で聞いていたエルザが疑問の声を上げた。


「え? ちょっと待って下さいレアナ様。それが本当だとしたら、あの男は何故この奇怪な設備を止めないのでしょう?」

「止める?」

「はい。この空間は……はあっ!! 今はこうして完全な密室の空間ですよ? それだったらあの魔術師にとっては絶好の機会だと思います。しかもあの魔術師が……ふっ!! この城の設備の全ての操作権限を持っているんだとしたら、この設備を……やあああっ!! 止めてしまえば済む事なんじゃないですか? だったら私達を全員この中に閉じ込めておいてなぶり殺しに出来る筈なのに……とうっ!」

「確かにそれはそうですね……」


 魔物を倒しながらそう説明するエルザに言われて、レアナもそう言えば……とハッとする。

 こうして魔物を生み出し続けて全員がジックリと殺される様子を見るのであれば、エレベーターを止めないままなのは不自然だからだ。

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