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249.Jailbreak

感想、ブックマーク、評価ありがとうございます。

700ポイント突破、1日6000PV突破、総PV30万突破、ユニーク2万人突破しました。

ブックマークも後少しで300件。感謝感謝でございます。

まだまだこのまま突っ走りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 サィード達三人がレアナから色々話を聞きながら歩いている頃、コラードを追い掛けていたソランジュとサイカはついに彼に追い詰められていた。

 そう、追い詰めたのでは無く逆に追い詰められてしまっていたのだ。

 それもこれも、このだだっ広い地下牢獄内に突然響き渡った声が全ての原因だったのである。


「はぁ、はぁ……どうなってんのよ、一体!!」

「私に聞かれても困る! だが、聞いた事の無い声だったな……」


 今までの人生の中で出会った声の主の誰にも当てはまらない声が響き渡ったので、最初は戸惑っていたソランジュとサイカだったが、ご丁寧に事情まで説明してくれたその声からこの修羅場が始まった。



 ◇



『苦戦しているみたいだね、コラード君?』

「っ!?」

「えっ、何なのこの声?」

「誰、誰なの!? 何処に居るの!?」


 地下で追いかけっこを繰り広げていたこの三人の耳に、突然響いて来た声。若干深みのある声だが、声の質からするとどうやらまだまだ若そうな男のものらしい。

 その声に三人とも動きを止めて、ハアハアと息を切らしながら辺りを見渡して声の主を探す……が、何処にも自分達以外の気配は感じられない。


「魔術の類を使ってこうやって広範囲に声を響かせているみたいだな。牢獄全体に響き渡っているみたいだし……」

「それよりも貴方、もう逃げられないわよ。ここで潔く諦めて観念しなさいよ!!」

「くっ、そんな訳にはいかない!」


 睨み合って対峙する三人の元に、再び謎の男の声が声が響いて来る。


『何を揉めているのかな? こちらからは君達の様子は全て見えているんだよ』

「も、申し訳ございません! すぐにこの二人を片付けます!」


 このコラードの応対の仕方からすると、どうやらやり取りを交わしているのは彼の雇い主らしい。

 しかしその雇い主らしき男の声は余りにも無慈悲だった。


『すぐに片付けるだって? 何を言っているんだ君は。これだけの醜態を僕の目の前で晒しておいて、今更そんな言い草が通用すると思っているのか?』

「で、ですが……!」

『君には失望させられたよ、二枚舌のコラード君。やはり君を雇い入れたのはどうやら間違いだったらしい。魔術の使い所も考えられない上に、無様に負けて逃げ出す様な傭兵に報酬が払えるとでも思うのかい?』

「お、お待ち下さい! 私は……私は必ずこの任務をやり遂げて見せます!! なのでもう一度チャンスを下さいうおっ!?」

「隙あり!!」


 会話に集中していたコラードに対して不意打ちを仕掛けたサイカだったが、コラードもベテラン傭兵だけにそのシャムシールの一撃を受け止めて逆にサイカを蹴り飛ばして距離を取る。

 その一連の流れを何処かで見ていたらしい声の主は、何処か興味無さげな口調で声を響かせる。


『ふぅん、そうやって人の会話を邪魔するんだぁ~、全く無粋だねえ君達も』

「何が無粋なのよ! そもそもこうして戦ってるのは誰のせいなのよ……この人のせいじゃないの!?」

『ははっ、そうかもね。でもコラード君、悪いけど今までの君の戦いぶりを見る限り、これ以上契約を続けるのは無理だと判断させて貰ったよ』

「お、お待ち下さい! もう一度だけ私にチャンスを下さい!」

『へー、そんなに僕達に協力したい訳?』

「勿論でございます! 必ず……必ず今度はやり遂げます!!」


 値踏みをするかの様な口調に対して食い下がるコラードを見て、声の主はそれだったら……ともう一度だけ彼にチャンスを与える事にした。


『もう……しょうがないなあ。それだったらこれっきりだからね。これで失敗したら真面目に契約は打ち切り。報酬のお金も無し。それで良いね?』

「は、はい! ありがとうございます!!」

『じゃあこれが僕から出来る最後のサポートだよ。今からこの監獄の囚人達を全員解き放つから、それでしっかり仕留めてよね』

「え……?」


 今、自分達は何を聞いたんだ?

 自分の耳を疑うソランジュとサイカに向かって、声の主は繰り返し宣言する。


『だから、この監獄の囚人達を全て脱走させて君達を殺して貰うんだよ。例え腕が立つ君達でも、数の暴力には敵わないだろうね』

「な、何ですってえ!? どう言う意味よ!」

『そのままの意味さ。言っておくけど、この監獄に捕らわれている囚人達はさっきの騎士団員や魔術師達よりも多い人数が居るんだよ。人間も獣人もここから出られるとなったら容赦無く君達を襲う筈さ』

「おい、お主は正気か!?」

『さあねえ、僕はもう既に頭がおかしくなっているのかも知れないね? でも君達も哀れだよ。そんな頭のおかしい奴の作戦にはまって命を落とす破目になるんだ』


 そこで一旦言葉を切り、声の主は楽しそうな口調で監獄内に居る囚人達に向かって声を響かせる。


『みんな、そう言う訳だから今からここの牢屋のカギを全部開け放つよ!! そして女二人を倒したらこの監獄から全員逃がしてあげる!! 釈放だよ釈放!! それじゃあ存分に暴れ回ってね! 戦闘開始……!!』


 その声がブツッと途切れると同時に、ガチャ、ガチャッとそこかしこから牢屋の鍵が開く音が聞こえて来た。

 この瞬間、大勢の囚人達が闊歩する地獄絵図の中にソランジュとサイカは放り込まれたのである……。

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