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242.とっておきを崩せ!

 再び二人のコラードが向かって来る。

 しかし戦力が増えたのは彼の方だけでは無く、自分の周りの敵を倒し終わって少し余裕が出来たエルザも駆けつけて途中から話を聞いていたのだ。


「とりあえず、まずはどちらかのコラードを潰せば良いんだな!」

「ああ。二人はそっちの奴を頼むぞ!!」

「分かったわ!」


 アレットとエルザのコンビで一人のコラードを相手にして、サィードがもう一人のコラードに向かう戦法を取ったのだが、どちらのコラードも戦闘能力は変わらない様である。

 ロングバトルアックスをこの散らかっている部屋で軽快に振り回すその戦い方は、彼が今まで幾多もの戦いを勝ち抜いて来た事を意味しているし、こう言うシチュエーションでも取り回しの利き難い武器を振り回すのに手馴れているのが分かる。


 一方、サィードはマウデル騎士学院卒業後にリーフォセリア王国騎士団で活動していて騎士としての実戦経験もそこそこあるし、騎士団を対談して傭兵として活動する中で我流の戦法も編み出したりする等、コラードに負けず劣らずで戦う為のノウハウを豊富に持っている。

 だが、アレットとエルザはこの旅に出てから実戦経験を積み始めたのでまだまだ経験が足りない。

 ソルイール帝国の騎士団長セレイザに勝てたのだって半分まぐれの様なものだし、あの時とはシチュエーションが違うので今回も勝てるかどうかは分からない。

 それでもやるしか無い二人は、コラードに対してエルザがメインで仕掛けて行きつつアレットが魔術で援護をする、今までと同じ戦略で戦いを繰り広げる。

 その中で、アレットは自分達が相手にしているコラードの方に何か違和感を覚えていた。


(やっぱり変……何かは分からないけど、かなり変!! 何なの? この違和感は……)


 自分の直感でしか無いが、アレットは自分とエルザが相手にしているこのコラードの方が偽物なのでは? と徐々に確信に変わりつつあった。

 こうして相手にしている限りでは、サィードと戦いを繰り広げているもう一人のコラードと何も変わりがないのが分かるし、強さだってリーチの長さだって全く同じ人間が二人居るとしか思えないレベルの分身である。

 だけど、何処かがおかしい。


(サィードと戦っているコラードの方からは何も違和感を覚えないのに……やっぱり戦闘能力が違う? ううん、それは無いと思うわ。どっちも見た目も戦い方もまるで同じの双子みたいな存在……なのに、何処かが違う……それは何処?)


 サィードもエルザも必死にコラードと戦いを繰り広げているので、この二人の努力を無駄にしない為にも臨機応変に回復魔術と攻撃魔術を駆使して援護をするアレットは、何としてもどちらかが偽物だと見破ってやると意気込んでいた。

 そして戦いを繰り広げているサィードとエルザの両名は、自分達が相手にしている方のコラードが何だか以前よりも強いんじゃないかと思い始めていた。


(何だこの男……私が階段から落とされた時よりも明らかに攻撃力が上がっているし、回避スピードも速くなっているぞ!?)

(この二枚舌野郎……あのイーディクト帝国で俺達を相手に実技試験に挑んで挑んで来た時よりも、実力がすげー上がっているんじゃねえか!)


 そしてここで二人とも気が付く。

 このコラードはやはりAランクの冒険者と言うだけあって、あの実技試験の時は適度に手を抜いていたのだと。

 つまり手加減してでもこちらの仲間として加入出来ると自信を持たれていた訳だし、自分達が舐められていたのだと確信した。

 そうと分かればますます負けられない、とサィードもエルザもそれぞれ武器を握る手に力が入るのだが、一方のアレットもどちらのコラードが偽物なのかを確信する出来事があった。


(……あ!?)


 エルザと戦っている方のコラードが、エルザのバトルアックスをジャンプで回避して近くのテーブルの上に飛び乗る。

 その時、アレットはコラードの足元を見ていてある事に気が付いたのだ。


(こっちのコラード……影が無い!!)


 本来であれば、テーブルの上に向かってジャンプして着地するまでの間に、テーブルの上にコラードの影が見える筈。

 しかし、今の一瞬をアレットは見逃さなかった。

 天井に取り付けられている魔力のライトが照らし出す部分があれば、その部分の影が必ず出来る筈なのだ。

 事実、サィードと戦っている方のコラードの足元ではきちんと影が動いているので違和感を覚えない。


(そうか……こっちのコラードに私が違和感を覚えていたのは、影が無かったからなんだ!!)


 日常生活の中で見慣れている光景だからこそ、パッと見た限りではなかなか気が付かない部分。

 しかし、何かしらの違和感を覚えるのはやはりそれだけの理由があるからこそだと言える。

 アレットがこうして偽物のコラードの方を見破った事によって、サィードと戦っている方のコラードが本物だと分かった以上、まずは偽物の方から一気に叩き潰してしまおうとアレットは動き出す。


「風よ、全てを吹き飛ばせ……サイクロン!!」


 水属性の魔術を得意とするアレットだが、それ以外の属性の魔術も使える。

 かつて葬ったアースドラゴンに使ったのと同じ、彼女の杖の先から放たれた中型風属性魔術の「サイクロン」が、偽物のコラードの方をメチャクチャに切り裂いて勝敗は決した。

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