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241.コラードのとっておきの技

 その向かって来るサィードを見て、コラードも当然応戦する。

 お互いに長さのある武器を扱う者同士、この物が散乱している兵士の詰め所では若干戦いにくいが、今はそんな事を言っていられない状況だ。

 二人の繰り出す斬撃や薙ぎ払いが恐ろしいスピードでかち合い、ギン、ギィンと金属音を立てて火花を散らす。

 時折り体術も繰り出すものの、物が散乱していて上手く相手に接近する事が出来ないので基本的には武器と武器がぶつかり合う。

 次第に周りの敵が少なくなっているので、サィードにとってはやりやすくて助かる。

 だが、このコラードもAランクの冒険者だけあってかなりの使い手であると分かった。


(くっそ、こいつもなかなかやるぜ……やっぱり二枚舌野郎でもAランクの冒険者なだけはある。隙がなかなか見えやしねーぜ!!)


 だからと言って引き下がる訳にはいかないサィードは、息を吐いて再びコラードに向かう。

 コラードも応戦して一気にサィードに接近し、一瞬の隙を見切った彼が繰り出した前蹴りがサィードの腹に入った。


「ぐおっ!?」


 的確に繰り出された前蹴りで後ろに向かって転がるサィードだが、まだまだ戦闘続行可能なのですぐに起き上がり、目の前に立っているコラードを見据えて走り出す。

 しかし次の瞬間、サィードは自分の目を疑うしか出来ない事態を目の当たりにして絶句した。


「ふっ!!」

「はっ……え、ええっ!?」


 横から誰かが突っ込んで来る気配がしたので、邪魔をするなとばかりにその向かって来た敵のロングバトルアックスを受け止めたサィードだったが、受け止めた相手の姿を見て息が止まった。

 何と、その振るって来た相手は……いや、相手もコラードだったのだ!!

 反射的にバックステップで大きく離れたサィードは、目の前に立っている「二人の」コラードを交互に見比べて目を丸くする。


「おいおい、どうなってんだよこりゃあ……てめぇは双子だったのか!?」

「いや、私には妹しか居ないが」

「だったら何なんだよこりゃあよ!?」


 事態がまるで飲み込めていないサィードだが、そこに横から声が掛かった。


「そうか……これって魔術ね?」

「あ、アレット?」

「でもこんな魔術、私は見た事無いわよ。まさか人間の身体が増えるなんて見た事も聞いた事も無いわ。一体何がどうなっているのかしら?」

「そ……そうだぞ二枚舌野郎。キッチリ説明しやがれってんだ!!」


 何時の間にか自分の横に来ていたアレットの説明を聞いたサィードは、確かに魔術だったらこの不可解な現象も納得出来ると頷きつつ、コラードに対して説明を求める。

 すると、意外にもコラードは素直にその質問に答え始めた。


「この国の筆頭魔術師から教わりたての魔術だ。さて、どちらが本物の私か見破れるかな?」

「見破れたら大したものだ。だがその前に君達が死ぬ方が先だがな!!」


 二人のコラードはそう言ってロングバトルアックスを構えるが、アレットは直感でその二人のコラードに違和感を覚えていた。


(あれ……何だろう、この違和感。二人の姿は全く同じだし、二人の声もまるで一緒……だけど何かが違うわよねえ?)


 その違和感の正体を探し始めたアレットの横では、サィードがハルバードを構えながら吼える。


「何が大したものだ、だよ……敵の方についておいて良く言うぜ!!」

「それは君も傭兵だから分かるだろう、サィード君。私達傭兵はより自分に有利な雇い主を選んで稼ぐのが常識だろうが。ダメだと思ったらすぐに見限る。これが傭兵の世界で生き抜く為の賢い知恵さ」

「確かにな。だけど……一度や二度駄目だと思っただけですぐに見限る様な男が、良くAランクの冒険者になれたもんだと俺は思うぜ。そう言う所の噂は傭兵達の間で有名だ……ん?」


 まさか……とここでサィードはピンと来た。


「そうか……だからか。だからお前、その見限りの速さで俺達を見限ってこっち側についたんだな?」

「なるほどね、そう考えると納得が行くわ。私達の実技試験に不合格だったからさっさと次の雇い主を見つける……そのフットワークの軽さは凄いと思うわよ」


 アレットが皮肉を込めてそう言ったのだが、二人のコラードは首を横に振った。


「いいや……それは少し違う。私は元々こっち側の人間だったんだよ」

「そうそう。私はカシュラーゼの上層部から命を受けて、お前達の仲間になって内部事情を探る為に潜入する様に言われたんだ」

「だから私はお前達の仲間に取り入れるべく近づいた。しかし時間が無かったのでな。少々強引な方法を取らせて貰ったよ」

「それがあの実技試験と言う訳さ。でもまさか、手を抜いていたとは言えこの私が不合格になるとはな……」


 二人のコラードが交互に喋るのを見て、サィードとアレットは妙な気持ちになる。


「……同じ人物が二人で別々に喋るって言うのは気持ち悪いけど、言い分は良く分かったわ」

「そうだな。最初から俺達の仲間になる気なんて実はさらさら無くて、もし試験に合格して仲間になれたら俺達の動向を逐一カシュラーゼに伝える予定だったんだろうが……残念だったな。不合格の二枚舌さんよぉ!!」

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