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237.恐ろしい計画

 その一方で、再び歩き出した三人の中で今度はエルザが声を上げる。


「そうだ……アレットは私と一緒に聞いていたから知っているだろうが、貴様にはまだ教えていなかった事があるんだ、サィード」

「へっ? 教えていなかった事って?」


 唐突にエルザから真剣な顔つきでそう言われ、思わず自分の表情まで引き締まるのを感じたサィードに対し、エルザが恐ろしい話を始めた。


「私達がここに入れられてから、見張りの連中が二人一組で時々ここを通っていたんだが、その連中がこんな事を話していたんだ。人間や獣人の命を使って、何か壮大な実験をするって……」

「人間の命って……おい、まさかそれって!?」

「何だ、知っているのか?」

「知っているって言うか、ここに来る途中で張り紙を見ただけだから何とも言えねえんだけどよぉ、実はさっきの作業場みたいな所にな……」


 最初に殴り込みを掛けたあの作業場に貼ってあった張り紙の、人間のエネルギーだとかノルマと言う良く分からない単語がもしかしたら関係があるんじゃないか、とサィードがアレットとエルザに伝えると、二人とも神妙な顔つきになる。


「となれば……そのエネルギーの張り紙と兵士達が話していた内容に接点がある可能性は大きいわね」

「やっぱり貴様もそう思うか。何をするかは分からないが、恐らくエヴィル・ワンの復活絡みだろうな」

「ああ、それしか考えられねえだろうな。人間のエネルギーって書いてあんのを見た時、俺すっげー嫌な予感がしてあいつ等にキレちまったんだよ。人間の命を何だと思ってんだーってな。だからあいつ等がこれ以上何かをしでかす前に、さっさと他の奴等と武器を見つけねえとな」


 そう言いつつ進んでいた三人の目の前に『第五収容区画』と書かれた看板が現われた。

 どうやらこの地下牢獄はそれなりの広さがあり、区画によって収容者が分けられたりしているのかも知れない。

 事実、見張りの兵士達や魔術師達の持っている鍵が何だか頑丈な様な気がしてならないが、それよりも気にしなければならないのは武器と仲間の事だ。

 第五区画に入ってから兵士達の武器を奪い取り、更に魔術師から杖を奪い取ってアレットが使用しているのだが、やはり自分の使い慣れている武器の方が戦いやすい。


「ふう……それなりに敵の数が多くなって来てねえか?」

「ええ、それは感じるわね、でもさっき倒した兵士から詰め所の場所も分かったんだし、さっさとそこに向かって武器を回収しましょう」

「そうだな。グズグズしてると私達が倒した連中が他の見張りに見つかるだろうし、貴様が大暴れしたと言うその作業場の惨状もそのままって事にはならないだろうからな」


 第五区画で倒した兵士達の一人から詰め所の場所を聞き出した三人は、その詰め所へと向かって敵を倒しながら進む。

 狭い通路である事を逆に活かし、前衛としてエルザとサィードが対抗しつつアレットが後衛で攻撃魔術や回復魔術で援護をする。

 そしてソランジュとサイカが捕まっている区画である第三区画までやって来た三人は、ここでようやくその二人と再会する事が出来た。


「ソランジュ、サイカ!!」

「あっ、みんな!?」

「良かった……無事だったんだな!!」

「何とかな。だが牢屋の中では魔術が使えない様に細工がしてあるらしいから早く出してくれ」

「言われなくても俺達もそのつもりさ。ちょっと待ってろよ……ああ、これだこれだ」


 サィードが第五区画の兵士から奪った鍵でようやく五人が揃ったものの、まだ後一人のメンバーが合流出来ていない。


「よっしゃ、後はレウスだけだが……オメー等はあいつが何処に捕らわれているのか知らねえか?」

「ううん、知らないわね」

「私とサイカは緑髪の男にここに入れられてから、ずっと一緒に居たからな。お主達の方こそ何か聞いていないのか?」

「それが……どうやらサィードの話だと、レウスだけ別の場所に連れて行かれちゃったらしいのよ」

「ああ。上の研究所にあるって言う研究室が怪しいらしいから、そこに乗り込むしか無いだろうな」


 レウスだけが自分達と違う場所に連れて行かれたのであれば、どうやら彼が常人の十倍の魔力を持っているとか、五百年前の勇者アークトゥルスの生まれ変わりだとか言う話も既にこのカシュラーゼで共有されていると見て良いだろう。

 つまり、最初からレウスだけを利用するつもりで全員をここに閉じ込め、仮にレウスが逃げ出そうとしたら自分達が人質になっている事を出して脅迫するつもりでいたのだろうと予想出来た一行。

 だが、こうして自分達が逃げ出したのがまだ伝わっていないのであれば、まだ逆転のチャンスはあるかも知れない。


「とにかく急ごう。私達が逃げたのがその連中にバレるのも時間の問題だろうからな!」

「うん……あ、その前にほら、武器が置いてあるって話があった兵士達の詰め所が見えて来たわよ!」


 先頭を走るエルザにアレットがそう告げ、自分達がようやくその武器が置いてある詰め所に到着したのだと理解する残りのメンバー。

 しかし詰め所だけあって中に兵士達が居るのは容易に想像出来るので、まずは攻撃力の高いサィードとエルザがドアの両側に張り付いて中の様子を伺う。

 それと同時にアレットが探査魔術を併用し、より正確な中の様子を探り始めた。

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