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236.救出その1

「ねえ……何だか騒がしくない?」

「そう言えばそうだな。何かが壊れる音とか、怒声とか色々と聞こえて来るけど……一体何が起こっているんだ?」


 結局あの後に脱獄する為の手立ても見つからず、誰かが来て牢屋を開けた時に隙を突いて逃げ出そうと言う事で意見が一致していたアレットとエルザの耳に、ガシャーン、ドカーン等の衝撃音や叫び声、怒声と言った騒がしい音が聞こえて来た。

 何か只ならぬ事が起こっているのは間違い無いので、二人はベッドに横になっていた身を起こして鉄格子の内側ギリギリ一杯から外の様子を把握しようとする。

 するとそれから五秒程経って騒がしい音が止み、自分達の投獄されている牢屋の方向に向かって誰かが走って来る音が、地下牢獄の中にタタタタタッと反響する。


「だ、誰だ……?」

「えっ……ちょっとあれって……サィードじゃないの!?」


 その走って来る人間のシルエットが段々と鮮明になって来て、最初にその正体に気が付いたのがアレットだった。

 まさかここまで助けに来てくれたのがサィードだとは思いもしていなかった二人の目の前で、サィードは二人が入れられている牢屋の見張りをしている人間の男を素早くドロップキックでノックアウトし、彼からカギを奪って牢屋の施錠を解いた。


「おいっ、無事か二人共!?」

「ああー良かった、助けに来てくれたのね!!」

「私は大丈夫だ、感謝する。貴様の方は問題無いのか?」

「俺も何とか大丈夫だよ。それより感動の再会を喜ぶのは後だ。まずはとにかくここを脱出したいんだが……他の三人は何処行ったか知らねえか?」

「ううん、分からないわ……捕まったのか、それとも街の中に居るのかすら分からないのよ」


 ここに入れられてしまったのが二人だけだと言う事実を突きつけられたまま、今までこうして牢屋の中で過ごしていたので他の三人がどうなったのかまでは分からないアレットとエルザ。

 その彼女達を見ていたサィードは、そう言えば……と自分が牢屋から脱出しようとした時に倒した見張りから聞き出した情報を思い出した。



「……そうだ、俺が倒した見張りから聞き出したんだけどさ。そいつがこんな事を言っていたんだよ。お前の仲間の女達はこの牢獄の何処かに居る筈だ、ってな!!」

「えっ、それって私達の事?」

「だと思うぜ……だけどそいつは場所は知らねえって言ってた。ここの何処かに居る筈だって話だったから、そいつも詳しい場所は知らされていないんだろうよ」


 それを聞き、アレットとエルザは顔を見合わせて頷いた。


「ならここの何処に、ソランジュとサイカの二人が居るかも知れないんじゃないかって話だな?」

「その可能性は確かにあるだろうよ。女達ってのがお前達の事じゃなくて、ソランジュとサイカの事を言っているんだとしたらの話だけどよ。それと俺の武器のハルバードとか、お前達の武器も取り上げたって話も聞き出したぜ」

「ええっ、そうなの!? 何処にあるのかってのは聞き出した?」

「ああ、バッチリだ。ここの兵士の詰め所にあるって言ってたけど、それが何処にあるのかまでは分からねえ」


 しかし、自分達の武器を取り戻せると分かっただけでも大きな収穫である。


「とにかくソランジュとサイカの二人を探しつつ、武器も取り戻しに行こう。だが、その見張りから聞き出したのは私達の事と武器の話だけか?」

「いや……あの赤毛の奴等とセバクターの居場所についても聞き出したぜ」

「本当? ど……何処に居るの?」

「この上……魔術研究所の最重要研究室って言ってたぜ!!」


 となれば、自分達が取る行動は決まったので早速このだだっ広い牢獄の中を調べて回る事にする。

 もしかしたらソランジュとサイカがこの牢獄の中に居ない可能性もあるのだが、武器も探さなければならないので結局この牢獄の中を歩き回らなければならないのは一緒だ。

 しかし、その歩き出した三人の中でアレットから一つの疑問がサィードにぶつけられる。


「ねぇサィード、そう言えばさ……」

「ん? 何だ?」

「レウスの居場所って聞き出した?」

「あっ……」


 しまった、と言う顔つきになって一気に青ざめるサィードの様子を見て、エルザがやれやれと首を横に振った。


「……その様子だと、どうやらレウスの居場所は分からないらしいな」

「す、すまねぇ……」

「でもさ、さっきほらサィードが言ってたじゃない。上の方にある魔術なんたらの何処かにセバクターとあの赤毛の二人組が居るって!」

「そこにレウスも一緒に居るんじゃないかと思うのか? 貴様は」

「確証は無いけど……多分、私達がこうして捕まった事って何か意味があって捕まったんじゃないかって思ってるの。だからソランジュとサイカの二人もこの牢獄に居る可能性が高いだろうし、レウスだって私達と一緒に捕まっちゃったかも知れないわよ!!」


 それが当たっているのが良い事なのか悪い事なのかと聞かれれば、どちらかと言えば悪い方になるだろう。

 しかしそのアレットの推測が当たっているとしたら、レウスも助け出してここから逃げ出さなければならないので、もう一つやるべき事が増えるのだ……。

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